第146話 ごめんて!
「小さなレディ、君はなんてことをしてくれたんだい?」
ティティは、領主ブルコワとの会談後、弟を早めに休める為、すぐにヒースの屋敷に引き上げて来た。
出迎えてくれた執事さんに、弟が体調が悪いので、詳しい事情と許可は帰宅後必ずヒースさんに取るので、ティティに当てられた部屋で休ませて欲しいと願った。
事情が分からないながらも、ここ数日お世話になっていたおかげか、すんなりと受け入れられた。
そしてヒースとブリアの帰宅を玄関ホールで待ち構え、ティティの客間へと2人を連れ込んで事情を話したところである。今はソファで膝を突き合わせてるところである。
そして冒頭のヒースの台詞である。
「申し訳ありません。勝手に弟も含めて、お屋敷にお世話になることになってしまって」
「それは一向に構ないよ。滞在してもらう期間が長ければ、それだけ聖力の訓練の手助けをしてもらえるからね。だろう?」
「それは、はい! もちろんです!」
「だったら、いくらでもいてもらって構わないよ」
なんていい人なんだ、ヒースよ。
「問題はそこじゃない。小さなレディもわかっているだろう?」
うっ。わかってます。
「今日帰って来る前に、ブルコワ様から直々に君から教わった情報はちゃんと報告するようにと言われた僕たちの困惑がわかるかい? 君が望んだんだよ。聖力の事を小さなレディから聞いたというのを秘密にして欲しいと」
その通りである。申し訳ありません。
「もし私たちが聖力を制御でき、循環できるようになったら、小さなレディは他の魔法士たちにも教えていいと言ってくれた。情報源は伏せてね。ブルコワ様やルミエール様、それにギルド長のカシミール様は君の存在を知っている。君が旅立った後に、情報を公開するにしても、情報源は小さなレディと疑われる可能性が大きいのに、その確率を自ら上げてどうするんだい?」
「返す言葉もございません」
ティティはうなだれた。
「あまり、責めないで。咄嗟の言い訳としてはそれしかなかったのは、ヒースもわかるでしょ?」
そこにブリアが助け舟を出した。
「しかし」
「いえ、いいんです。もっと責めてもらって構いません! ブリアさん、ヒースさんの言う通りなんですから! ただ、どうしてもお城に泊まりたくなかったので」
そうなんだよ。今も昔も、ジオルもティティも、庶民なんだよ。お城でなんてゆっくりできる訳がない。
<城もここも、それほど変わらないだろう>
スヴァがソファに座ったティティの足元、後ろ足で耳を掻いた。
<変わるわ!>
魔王城の元主なら、そうかもしれないけどなっ。
カレドニアのお屋敷でも、広すぎて居心地が悪いのだ。
「すまない。ただ、今日は聞かれなかったが、後日小さなレディからどのような事を聞いたのかと詳しく尋ねられるかと思うと気が重くて、つい責めてしまった」
「ヒースは嘘は苦手だからね」
ブリアが突っ込む。
「苦手ではない! なぜかすぐに嘘だとバレるだけだ!」
人はそれを苦手というのですよ。ヒースさん。
「だが、そうだな。ブルコワ様は小さなレディが御使い様の愛し子だと知っているからな。一般に知られていない情報があるのではないかと、詳しく聞きたがるだろう」
「そうね」
「我らは聖力のことを隠し通せるか?」
「「うーん」」
2人は腕を組んで唸った。
「本当、すいません!」
ティティは勢いよく頭を下げた。
ティティはこの地を出た後も、2人はずっとここにいるのだ。
まだ何かか言い残しはないかと聞かれ続けたら、苦しいに違いない。
ちゃんと聖力以外の話も提供しなきゃ!
<スヴァ! 頼んだぞ!>
<お主、人任せか>
うん! 私、難しい事わかんないからね!
ここまでおよみいただきありがとうございます。
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