第136話 そうか。言ってなかったね。
「ヒースさん! ブリアさん!」
撤収のための片づけをしている間を縫って、ティティはヒースとブリアに近づいた。
「やあやあ。小さなレディ! 私の活躍を見てくれていたかな?」
ヒースが疲れも見せずに、大仰な手ぶりを付けて、出迎えてくれる。
「はい! よく見てました! お疲れさまでした!」
2人は魔法陣に魔力を注ぐ重要な役割をしたのだ。
その後も、騎士たちに交じって、植物スライムの身体を運ぶ作業を手伝っていた。
文句なしの大活躍である。
「ブリアさんもお疲れさまでした。めまいなど大丈夫ですか?」
魔力は使いすぎるとめまいや吐き気など体調に不調をきたすようだ。ティティ自体も腹の空きが早まるなど体験済みである。魔力はやはり身体には負担になるのだろう。
「大丈夫よ」
「そうですか。これから皆さんとお城へ帰還するのですか?」
「ああ、馬車で運ばれた甕を含め、護衛の騎士たち、それに切り取った植物スライムのかけらに魔力を当てる魔法士が戻ってくるのに、時間がかかるからね。今日はこれで終わりだ。明日に備えて、休まないとね」
「そうなんですね」
それなら、誘ってみても大丈夫かな?
「なんだい? 何か用事があるのかな? ああ、デートのお誘いかな?」
ヒースがいたずらっぽい笑顔で尋ねてくる。
「違うます! ただここから少し行くと、森もあるし、例のやつを練習するのもいいのではないかと」
誰が聞いているかわからないので、言葉を濁して置く。
「ああ」
ブリアが合点がいったというように頷いた。
「お2人がお疲れであれば、無理にとは言いません。明日もありますしね。ただ、私がお手伝いできるのも、この街にいる間だけですし」
そう、できるなら2人に長生きしてもらいたいのだ。
その為にはなんとか聖力の感触から大気中にある聖素を見つけて欲しいのである。
実際それで寿命が延びるかは、経過を見なければ何とも言えないが、可能性は十分あると思う。
「小さなレディはこの街を出て行く予定があるのかい?」
ヒースが驚いたように尋ねた。
そういえば、2人には街を出る事を言ってなかったか。
「はい、植物スライムの件が一段落したら、西の辺境に行ってみようと思ってます」
行き先が決まったのはさっきだけどね。
まあ、西の辺境へ行く前に国守さまのところへ行かないとだけどね。
「そうか。そうなのか。小さなレディは冒険者だものな。自由を謳歌しないとな」
「ティティはまだ小さいわ。道中、盗賊や魔物がでるぞ。もう少し大きくなってからのほうがよくないか?」
ブリアが心配そうにティティを見る。
「はは。私も少しは鍛えてますし、何より私には強い味方がいますから」
そう言って、自分の横にちょこりと座るスヴァを示した。
「ああ」
「うん」
2人は余計に心配そうな顔をした。
<無礼な! 我は強いぞ!>
スヴァは憤慨したようにそこで地団太を踏んだ。
うん。可愛いね。
「立派なナイトがいるけれど、やはり心配がある。私も小さなレディが旅立つ時に、安全に一役立てられるような何かができないか考えてみよう」
「あ、ありがとうございます。でも本当に大丈夫ですよ?」
自分の身を守るのは冒険者の最低限のルールである。
そんなやりとりの横で、ブリアがじっと何か考え込んでいた。
いったいどうした? 心配事か?
ここまでおよみいただき、ありがとうございますv
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