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第135話 話途中で、わあ!

 不意に浮かんだのはあの子の顔。

「どうした?」

 俯いてしまったティティを心配してブルコワが尋ねる。

「えっ! あ! えと!」

「言ってみなさい。何か他に心配事があるのか」

 ティティは一旦唇を噛んで、逡巡した後、重たい口を開いた。

「実は私には弟がいるんです。その弟はとても可愛くて、私によく懐いていました」

 1人食い扶持が減ったのだから、弟を無下にはしないとは思う。

「いきなり姉がいなくなって、どうしているのか。少し心配で」

 元気にしているだろうか。兄たちは全然心配ない。特に可愛がってもらったということはないしな。

「様子を見に行きたいですが、そういう訳にもいかないかなと」

 くそ親父に自分が生きているとわかったら、面倒だ。

 ティティが冒険者として稼いでるとわかって、金を無心されたら、いやだ。

「そうか」

 母親はくそ親父に逆らえないけど、まだまともだから大丈夫だとは思うが。

「す、すいません! なんか暗くなっちゃって。それにこんな話をしてしまって」

「いや、かまわない。その弟御は」

 と、ブルコワが続けようとしたところで、スヴァが異変気づいた。

<ティティ!! スライムから退避だ!>

 スヴァの叫びに、ティティは咄嗟に立ち上がって叫んだ。

「スライムから離れて! 退避してください!」

 それはある程度小さくなった植物スライムの核を騎士が破壊しようとしたまさにその時。

 ティティの声が響いた。

 刹那。

 植物スライムの下に展開された魔法陣に気づいた魔法士が、防壁を展開。

 剣を振り上げていた騎士も咄嗟に後ろに飛び伏せた。

 ボンッという鈍い音とともに、植物スライムが自爆。

 核が粉砕し、その破片が鋭く飛び散る。

 幸い、魔導士の防壁が功を奏して、大事には至らなかった。

 騎士の素早い退避も大きかった。

 が、一歩間違えば大惨事だった。

 ブルコワは咄嗟にティティを引き寄せて、自分の身体でティティを守ってくれた。

 そのブルコワを護衛騎士が素早く前に出て盾で守りを固めていた。

 流石である。

「ティティルナ! 大丈夫か?」

「大丈夫です。ありがとうございます」

「うむ」

 ティティの様子を確認すると、ブルコワはすぐに立ち上がった。

「状況を報告せよ!」

 その声に応えて、ルミエールが、駆け寄ってきた。

「報告致します! 植物スライムが通常のスライムほどの大きさになったところで、核を破壊しようとしたところ、自爆しました! ティティルナの叫びと魔法士がいち早く気づいて障壁を展開して大事には至っておりません! けが人はかすり傷程度が数名です!」

<スヴァ。なんで植物スライムが自爆なんてすんだよ! ほとんど植物だから、攻撃なんてないって言ってたよな?!>

<うむ。我が知っている植物スライムにそんな能力はなかった。最後の核もたやすく潰せた筈だ。魔法陣が展開されていた事から考えられるに、植物スライムを仕掛けた犯人が、自分の計画がばれた時に、最後のあがきとして、仕掛けていたのかもしれない。殺気を向けられた時に、自爆するようにと>

<そこまでする?! 領地をとろうとするのに、騎士を一人二人殺したところで、それが何になるんだ!>

 スヴァの心話に、ティティは不平を鳴らす。

<うまくすれば、魔法士を殺せる。戦力をそぐことができる。それが騎士でも同じだろうが>

<はあ、そうなの、そこまでかあ>

 ティティにはその思考がわからない。

 なんて執念深い。

 そこまで、この地が欲しいのか。

「ブルコワ様、今記憶を辿ってみたのですが、植物スライムが最後に自爆するなんて聞いてなかったです。申し訳ありません」

「いや、すべてわかろう筈はない。気にするな」

 うう。領主さま、最初はすごい嫌な人だったけど、今はとってもいい人である。

 それからティティは、スヴァに今聞いた話をブルコワに話した。

「なるほど、やはり故意的に仕掛けられたと」

 ブルコワ様、怖い顔がさらに怖い。

「この地を狙っている人、国があるのですね」

「当たり前です。この国は気候穏やかな豊かな土地です。況してこの地は隣国との国境の要の土地です。隙あらばと狙っているでしょう」

 別嬪ルミエールがこちらを睨みながら、口を挟んだ。

 やっぱ嫌われてる? 別嬪さんに嫌われると辛いなあ。あ、ブルコワ様に無礼な口をきいたからかな。そうだったら仕方ないか。にしても、やっぱり隣国とは仲が悪いんかな。

「それじゃ、犯人はこの国の民ではないのですね?」

 ブルコワ様に顔を向けて尋ねる。嫌われている人には話しかけませんよ。

「それもわからぬな。内からじわじわ弱らせて、実質支配権を乗っ取るというやり方も貴族間ではあるからな」

「そうなのですね」

 なんか、どろどろだ。近づきたくない。

「まあ、今はそれらの考察は後にする。まずはこの地の回復が先である」

 そこで、ブルコワは皆に向けて叫んだ。

「今日は一匹目の植物スライムの処理が終わった。皆の働きに感謝する! 明日明後日と湖にいるすべての植物スライムの処理も引き続き、迅速に行うぞ!」

「「「「おう!」」」」

 はあ、やれやれ。後残り無事に処理が完了しますようにだ。

 あ、これフラグか?

平和に暮らしたいですね。

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