第133話 居場所をゲッド!
ブルコワが驚いたようにこちらに顔を向けた。
「は、はい。そのつもりです」
な、なんだ。そんなに驚くことか?
「まだ幼いから、しばらくはこの地におるかと思っていた」
「ああ、そうですね。でも、ほら、親と街で鉢合わせしたくないですし」
この街まで足を伸ばすことはないと思うが、やっぱり近いと落ち着かない。
「そうか」
およ。なんか領主さま、落ち込んでいる。なんでだ?
「どこへ向かうのだ?」
「そうですね‥‥」
まずは国守さまのところかな。それと後もう一人会いたい人間がいる。どこにいるのかなあ。
「まだ決まっておらぬのか?」
「いえ! 行きたい場所はわからないですが、会いたいというか見たいお方がおりまして」
「見たい人?」
「はい。直接は無理でしょうが、一目でも見れればいいなと」
「誰なのだ」
うん。聞いてみるか。ゴルデバさまなら知ってるかもしれない。えらい人だもんね。
ジオルが死ぬ間際まで、気にかけていた人物。
「実はこれも人づてに聞いたのですが、私が生まれる前、今から7年前、魔王討伐があったとか。その時は異例の魔王討伐で、勇者が不在だったと」
「よく知っておるな。どこでその話を?」
「この前ご飯食べたお店に、古い絵がかかっていて。カッコいい少年の絵でした。それでお店の人に聞いたんです。魔王の討伐したお話を。勇者がいない為に、色々な国の強い人が集まって魔王を倒した。すごいなあって思って」
カミラと食べた店の壁に絵が飾ってあった。ジオルの記憶そのままの少年の姿。その絵をガン見しちゃったよ。するとカミオがジオルが死んだ後の事を話してくれた。
ティティは目をキラキラさせて、続けた。さも興味があるぞと見せないとね。
「特に活躍したのは、その絵の少年、この国の公爵様のご子息さまとか。その方は魔王討伐後も王都での在留をよしとせず、今も国を守るために、危険な地域へと自ら赴いているとか」
ティティはその話をカミオから聞いて、生きて戻ったんだと、ほっとした反面、公爵の息子が何やってんだよ。まだ11歳だったんだぞ。大仕事を済ませたんだ、大人しく王都にいろよと怒鳴りたくなった。考えるとまた腹が立ってくるが、それを押し殺して更に言い募る。
「私、その英雄様を一目見たいって思うのです。特に行く当ても決めていなかったので、どうせなら、その方を一目でも見られたらと。でも、現在その方がどこにおられるのかわからないのですよね」
なんか騒がれたくないようで、居場所は秘密なのだとか。
「それでも、王都にいけば、何か手がかりはあるかなと。なので、王都にまずは行こうかと考えています」
その前に国守さまのところだけどね。
それにうまい具合に居場所がわかったとしても、自分は平民。あちらは大貴族のご子息さまで、英雄様だ。もう会って話すこと、挨拶する事さえ難しいだろう。況してや今は姿かたちも違うのだ。だからせめて、本当に元気にやっているのかだけでも確認したい。
ずっと気になっていたのだ。7年前。短い間だったが、懇意にしていた少年のことを。目の前でジオルが死んでしまったことを、変に気にしていないか。
「ああ、ライアン様か」
ゴルデバが呟く。
「はい。この地へもいらしたとか」
「ああ。寡黙な方でな。顔は恐ろしく整っているが、感情を表に出す方ではないので、子供には少し怖いと感じるやもしれぬ」
「へ? そうなのですか? でも英雄さまでしょ。それも高い志を今も持って働いていらっしゃるし、すごい方ですよね」
ブルコワの言に、驚いて変な声が出てしまった。
確かに7年前も生真面目すぎるところはあったが、無表情ではなかった筈だ。
少し堅苦しいところもあったが、慣れればよく笑う少年だった。
より真面目になったのだろうか。
「そうだな。そうなんだが。遠目で見る分にはいいだろう。うむ」
ブルコワは顎に指で掴み、難しい顔をしている。なんか含みがあるな。それに何気に彼を落としてるぞ。いいのか?
ともあれ、騎士として働いているのであれば、元気なのだろう。
「ライアン様は、今は魔王領に隣接している西の辺境伯のところにいらっしゃる」
「ふわ! 所在を知ってらしたのですか?!」
ラッキー! 遠回りしなくていいね。
「うむ。まあ、わしも一応国境を守っているのでな。英雄に助けを求める場合もあるかもしれぬということでな」
「そうだったのですね。そんな重要な情報、私に伝えてもよかったのですか?」
「ティティルナは言いふらしたりしないだろう?」
「もちろんです!」
言わないよ!それで何か影響があったほうが怖い。
「ならばよい」
この信頼が怖い。まあ、私というより、国守さまへの信頼なんだろうけどね。
でも、少年の居場所がわかったぜ! よっしゃ!
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