第132話 もくもく作業は誰のため? 酒のため? 違う!?
ティティが魔法陣へのあこがれを語っている間に、騎士たちは作業を黙々と続けていた。
ナイフを持った騎士たちが植物スライムにわらわらと近づいては、その身体を切り取って、甕に詰めていく。切り取られた植物スライムの身体は水分を含み結構な重さだと思うが、それを感じさせることも、甕に入れていく。
何十人もの騎士たちで作業に当たっているが、それでも1日はかかりそうなほどに植物スライムは巨大だ。それはつまりはそれだけたらふくエネルギーを吸い取っていたという証拠でもある。
植物スライムの身体が入った甕は馬車へと運ばれ、荷台がいっぱいになると、馬に鞭をいれて、運ばれる。水田や、果樹園へと撒く為だ。
すっごいスムーズな連携である。きっと、普段の訓練のたまものだろう。
しかし切り取って甕に入れる騎士、大きな甕を運ぶ騎士たちも、体力半端ない。
その100分の1でもいいから、ティティにその体力を分けて欲しいものである。
「それにしても、よく短時間でこれだけの大きな甕を沢山揃えられたなあ」
酒屋や酒蔵が多いと言っても、こんなにあるものだろうか。
その呟きを隣に座るブルコワは拾った。
「この地は冬の寒さが非常に厳しい。その為、酒の消費量が非常に多いのだ。特に城に務めている騎士のな。国境は特に寒い。身体を温める意味でも、騎士は酒を消費する。普通の酒瓶では間に合わない。だから、大きな甕で保管しているのだ」
「そうなんですね」
はあ。どんだけ飲むんだ君たちは。
「甕は捨てないんですか?」
「うむ。空の甕は酒蔵に戻す。そして綺麗に洗浄したのちに再度使用する」
無駄がない。良い事である。
「この地は米で作った酒が主流だ。さらりとした飲み心地の割に、度数は高いので、身体が温まっていいぞ。ティティルナも大きくなったら、ぜひ味わってくれ」
「はは。そうですね」
この国の成人が13歳とはいえ、まだまだ先である。
「ここのところ米が不作だったなら、騎士たちもお酒が高くなって大変だったのでは?」
「はは。そうだな。だから、今回の任務に張り切って当たっているだろう」
なるほど。また米がたくさんとれるようになれば、お酒が安くなるってか。
「やる気があると、作業が早くなりますね。よいですね」
「ああ、順調に進んでいる。これもティティルナのお陰だ」
「いえ、私は情報を伝えただけです」
「その情報が吉報だったのだ。これで、この秋の収穫が少しでも伸びてくれればよい。間に合わずとも、この地の大地の力が戻り、来春に新芽が吹いて、湖の魚や動物が戻ってくれれば」
植物スライムの身体で大地の力が戻せるのも田畑や牧場を中心だ。それもどのくらい戻せるか。しかし、元凶がなくなれば、大地は己の力で徐々に戻ってくるだろう。
「よかったです。ここを旅立つ前に、解決できて」
おかげで、懐も潤った。
「ティティルナはここを出て行くのか!?」
ぎゃ!! いきなりこっち顔向けるなよ!!
おっさん、顔こええよ!!
騎士様たちがんばってます(笑)