第127話 報酬はクッキー!!
「お待たせ。どうぞ」
ブリアが丁度戻ってきて、皿を置いた。
「おお!」
美味しそうなクッキーである。
「いいんですか?!」
「ええ。どうぞ」
「では遠慮なく」
わーい! 甘味だ! 甘味だ! クッキーを1枚とると、屈みこんで、スヴァの口元に持って行く。
「ほらよ」
スヴァはすんすんと匂いを嗅いでから、ぱくりと食べた。
続いて2枚目を採ると、今度は自らの口に運ぶ。
「んん~! 美味し~!」
ほんのりした甘さ。たまらない。いくらでも食べられそうだ。
ティティはもう1枚手に取り。さくり。
ああ、幸せだ。
お腹いっぱいにはならないけど、力でた。
よし。
「ヒースさん、もう一度挑戦してみていいですか?」
「もちろん!構わないとも! 小さなレディ!」
おっ。ヒースもいつもの調子になってきたかな。
「では」
ティティは、再び彼の手を取る。
<イメージしろ。身体の外に出すというより、つながった指先を通して、奴の中へと力を押し込むようにしろ>
スヴァが具体的なアドバイスをくれる。クッキー効果か。にしても、クッキーのかけらがひげについてるゾ。
<わかった>
ティティはそれに従って、もう一度聖力を操作する。体内に流れる白い力を指先に集中。そしてその先にー。ヒースの指先に、身体に押し込む。
最初抵抗された感じがしたが、構わず押し込む。
するとするりと力が入って行く。
指から手、腕を通って、身体の中心部へ。一度入ってしまえば、後は道があるようで、するりと入っていく。
そしてお腹まで到達したところでふっと力を止める。
そこで目をあけて、ヒースを見る。
「どうですか?」
「ああ、気持ちがいいな」
「ひょ?」
「変態」
ブリアからの冷たい一言。
「違う! そういった意味じゃなくて! そういったってなんだ!?」
ヒース言葉が乱れております。
そこではっと気づいて咳払い。
「ブリアもやってもらえばわかるよ!」
どう弁解してもわかってもらえないと思ったのか、ヒースはそう叫んだ。
という事で、交代してブリアにも。ふう。結構しんどいぞ。
「‥‥‥確かに気持ちいいわね」
「だろう!」
ヒースは誤解がとけてほっとしているようだ。
「気持ちいいんですか?」
クッキーをまた1枚食べる。うまい。足を突かれ、スヴァにも1枚と。
でもそうなのか。聖力って気持ちいいのか。あったかいかもとは思ったけどね。
<癒しの力に転換されてなくても、お主の聖力で多少身体が修復されたのだろうよ>
<や、それは言わないよ。それ言ったら墓穴ほるよ>
聖力が癒しの元だって確定しちゃうからね。私が癒しの力を使える事になっちゃうからね。
今回はあくまで自浄できる力を感じてもらうのが目的だからね!
「わかってもらえてよかったです。そうですね一日に一度、寝る前にでも聖力を練って身体に巡らせれば、身体が浄化修復されると思います。その時には、必ず魔力は封印してくださいね。魔力があると聖力は回りませんから」
「なぜだい?」
「えーっとヒースさんたちは元々聖力を回す道がないので、魔力が通る道で代用するんです。だから、魔力は身体のどこか、もしくは魔石?か何かに魔力を移動させてからでないと、聖力は練れないし、身体に循環されないと思います」
道が一つしかないのに、渋滞しちゃうよ。もしくは打ち消されちゃうかな。
「なるほど、やっと理解したわ。魔力の通り道を代用する訳ね」
「そうです」
はあ。わかってくれた。や、疲れたから、クッキーをもう1枚っと。
ああ、残り少なくなってきた。私らだけで食べつくしてしまうかも。怒られるかな。
いや、これはれっきとした報酬だろう。うん。だから怒らないでね、ブリア?
難しい話に甘味は必需品。