第126話 ないしょ希望!
「すいません。上手くできませんでした。力加減が難しくて、外に飛び出しちゃいました。もう一度やってみますね」
ちくしょー。再チャレンジだ!
「いや、大丈夫だ。」
「えっ?」
やんなくていいの?
「ブリア、わかったかい?」
ヒースがブリアに視線を向ける。
「ええ。私も感じた。魔力とは違う」
ブリアも同意するように頷いた。
「えーと」
なに? なんか2人でわかり合ってますが、私にも教えて欲しい。
それが通じたのか、ヒースはティティに顔を向けた。
「ティティ、君が今使った力は魔力ではない。聖なる乙女、聖女様が使う癒しの力だ」
「えっ!」
「私は一度聖女様の治療を受けた事があるんだ。聖力はその力にそっくりだ」
「あー‥、では聖力は癒しの力の元ってことですか?」
やっぱ、そうなの。私的には残念なお知らせです。
「わからないわ。私たちは専門家ではないから。でも私も魔力とは違う力だとわかった。貴女は聖なる乙女になれる可能性があるわ」
「あー‥。そうですか」
そうっすか。
いやだ。なりたくない。私は自由にスヴァと2人気楽に楽しく暮らすのだ。聖女として縛られたくない。
「あの! 2人にお願いです。どうか私が聖力が使えることは内緒にしてください! お願いします!」
頼むよ!本当!
「どうしてだい? 聖なる乙女になれるなんて名誉なことだろう?」
「私、そういうのに縛られたくないんです! 自由に生きたいので!」
本当、縛られるのは沢山だ。前世でこりごりである。魔王討伐に強制参加させられて、死んじまったんだからな。マジ勘弁。
「それに、少し聖力が放出できるくらいで、なれるものでもないでしょ?」
「それはそうだ。魔法士も少し魔力操作ができるだけで、魔法士になれるわけではないからな。日常での厳しい訓練が必要だ。それでもなれるかはわからない」
「ですよね! 私なんて、少しだけしか使えないんです!」
だと思う! そうだと希望する!
それまで黙って聞いていたブリアが口添えをしてくれる。
「ヒース、ティティは私たちの身体を心配してこうして打ち明けてくれたのよ。彼女の望むように黙っているべきだと私は思うわ」
おっ! ブリアさん、話がわかるね。
「それに似てるってだけで違う力かもしれないし」
「それは王都で調べてもらえば、わかるだろう」
「そうかもしれないですけど!」
ヒース意外と頭固いな。いやだって言ってんのに!
「それにほら、今のだけで、もうすでに息切れしてるくらいです。私に聖女さまは無理です!」
無理だから!! 精神的に!!
「そうね。少し顔色が悪いわ。休む?」
ブリアが心配そうに声をかけてくれる。
「いえ! ただ、申し訳ないのですが、何か食べ物をもらえれば」
そう、聖力放出したからか、余計腹が減ってしまったのだ。空きすぎてつらい。
「わかったわ、待ってて」
ブリアは部屋の奥へと取りに行く。
その間もヒースを説得だ。
「お願いします! 黙っててください!」
<お主は詰めが甘いな。先に口止めしておくべきだったぞ>
スヴァが今更な事を言う。
<わかってるなら、言ってくれよ!>
<すまん。我も人間世界に疎いからな。聖力がそれほど重大な力とは思わなんだ>
そうか。そりゃそうか。
<ごめん。わるかったよ。責めたりして>
<うむ。お相子だな。さて、その男はどうする? 殺すか?>
<しねえよ!! 物騒な事を言うな!>
全く魔王様はすぐに暴力に訴えようとするんだから。油断も隙もない。徐々に平和的頭にしていかないとな。
そうスヴァと心話でやりとりしている間に、色々と考えたのかヒースが口を開いた。
「わかった。君の望む通りにしよう」
おお。折れてくれたぞ。
「ありがとうございます!」
よかった。納得してくれたよ。ふう。危なかった。
「いや、こちらこそ。すまない。私たちの為に、隠していた力を見せてくれたのに。つい自領の益を考えてしまった」
そっか。ヒースは宮仕えだもんな。報告義務があるのかも。それになぜ長生きの魔法士が自身にある癒しの力を言わないかわかった。面倒だからだ。きっとそうに違いない。魔法士と縛られ、聖女として縛られたらいやだもんな。まあ、魔法士は自身で選んだ仕事だから構わないんだろうけど。
ぐう。腹の音が身体に響く。
安心したせいか。更に腹が減った。
<我もだ。お主の立場を心配してたから腹が減ったぞ>
スヴァが便乗して、重々しく頷く。
嘘つけ! 全然心配なんてしてなかったろう!
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