第125話 聖力操作 むずっ
「私が聖力の感触をお教えします!」
ヒースとブリアは顔を見合わせてから、戸惑ったようにティティを見つめる。
「小さなレディ、どういう事かな?」
「あー、えっと、私の身体にあるみたいな?」
「小さなレディ?!」
「ティティ! 貴女、聖力を使えるの?!」
2人は今度こそティティの言った事を完全に理解し、叫んだ。
「いやあ、使えるのかというと、微妙です。ただ、なんとなく、身体に聖力が巡ってて、リフレッシュできるなあって」
「それは、気のせいではなく?」
「魔力ではないのかい?」
わーい。質問攻めだあ。なんて答えればいい?
<なんとかしてくれよ、スヴァ>
<知らんな>
スヴァはちらりとこちらをみて、また目を閉じて伏せてしまった。
なんだよ、冷たい奴め。
「ま、まあ、私の中にある力が魔力かそれ以外か、触れてみればわかるかと」
「そうか。わかった。やってみよう」
ヒースがこちらを真剣な顔で頷く。恐い。遊びがないよヒースさん。
「どうすればいい?」
「うーん。まずはヒースさんの魔力をどこか身体の一か所に集めて、停止してください。あ、魔力を練る場所とは違う場所にお願いします」
「わかった」
ヒースは一度目を瞑る。それからすぐに目を開いた。
「できたよ。それから?」
「は、早いですね」
びっくりだ。
そんなティティに対して、ヒースは苦笑する。
「それはそうだよ。私は魔法士を生業としているのだからね」
「そ、そうですね。失礼しました。では」
そこで、はたっと気づいた。どうすればいいんだ?
「えーと」
<おい! スヴァ! どうすればいいんだよ!>
そこまで考えてなかった。
<まったく。少しは自分で考えろ>
<私は魔力や聖力については素人だぞ! 無茶いうな!>
<やれやれだ。そうだな。奴の手から聖力をそうだな、腹の中心まで流してやればいいじゃないか?>
<そっか。えっ! 私聖力、外に出したことないぞ!>
<難しく考えるな。魔力と同じ扱いでいい。魔力を外に出す時と同じ要領でやってみればいい>
<あ、そっか。なるほどね。確かに力の種類は違うけど、力は力か>
うん。それならできそうだ。
ぶっつけ本番だけど、それならできそうだ。
<‥‥‥単純素直すぎる>
<えっなんだ?>
<なんでもない。さっさとやれ。腹が減って来たぞ>
<わかったよ。確かにな。これが終わったら、食い物もらおうぜ>
<おう>
「えっと失礼します」
ヒースの座っているところに椅子を近づけると、彼の右手を自分の両手で軽く握る。
そして目を瞑り、自分の中にある聖力をさぐる。
聖力なんて、正直わからない。亜空間を使う為に、魔力を探って、自身の身体に意識を集中して、なんか力が2つあるなと感じとっただけだ。それ以来何もしてない。果たしてわかるだろうか。
魔力と間違えないようにしないとな。
えーと。聖力、聖力はと。意識を集中だ。
しばらく探っていると、下腹部にぽわっと2つの力が交わることなく、それぞれが喧嘩せずに、存在しているのが感じられた。
こうして改めて、感じてみると。
魔力はあまり、身体を巡っていない。
いつも腹にある感じだ。
対して聖力はいつも身体を巡ってる感じだな。
うむうむ。これが聖力、イメージ的にぼんやりと白く光ってほのかに暖かいような。けれど、濃度がうっすいような。でもこれにくるまって寝たら、よく眠れそうだ。
まるでゆりかごのような力。
さてこれを手の指先に持って行ってと。
流れに乗って細くゆっくりと。
むむ。結構難しい。
ゆっくりって言うのがなあ。
「レディ大丈夫かい?」
ヒースの心配そうな声が聞こえる。
「うう。すいません。ちょっと加減が難しくて」
「ああ、うん。私に聖力を送り込もうとしてるのかな? 思いっきりぶつけてくれてもかまわないよ。多少の衝撃は平気さ」
なんか魔法士の訓練のブラックさが垣間見えるな。
「ありがとうございます」
とはいっても、初めての聖力を動かして、身体の外に出すのだ。怪我をさせてはまずい。
いや、聖力自体人を傷つける力なのか?
聖なる乙女が使う癒しの力に類似してるなら、大丈夫じゃないか?
身体を浄化してくれる力みたいだし。
よし。ならば、もう少し出力をあげてみればっと。
そしてむんと力をいれた途端、ぶわっと指先から聖力が出た。
「わっ!」
けれど、ヒースの中に送り込むことが出来ず、聖力はヒースの胸に当たって霧散する。
はあ。難しいよ。どうやったら、他人の身体に力を送れるんだ?
誰か代わってくんないかなあ。
皆さま、誤字報告ありがとうございます!
気を付けていても、やはり出るものですね。助かりました!