第124話 ちくしょー! 覚悟を決めてやんよ!
「あの、お2人は、魔素以外のエネルギーは感じた事はないんですか?」
ティティは恐る恐る聞いてみる。
「ないな」
「ないわね」
「そうですか」
あ、2人またすごいがっかりしてる。
そもそも聖素がわかる奴が近くにいないと話にならないじゃんか。
<なんだよ、スヴァ、この話、最初からむりくりだったのかよ。2人にぬか喜びさせてしまったじゃねえか>
<なぜだ?>
<なぜって、聞いてただろう? 2人はそもそも聖素自体わかんないし、聖素がわかんなけりゃ、聖力は練れないだろうが! わかんないものどうやって練ればいいんだよ!>
<お主が教えればよかろう?>
<は?>
<お主は聖素はわからなくても、聖力がどのようなものか知っている。これは推測だが、聖力は元々人の体内に存在すると思うぞ。怪我をした時に傷が治る力は聖力だと思うぞ。ただ、微量の聖力だから自覚するのはかなり難しいだろうな。だが、お主が2人の身体に聖力を送り込んでやれば、知覚するのは易いだろう。魔素を感じ取り、魔力を練れる2人だからな>
<そうなのか>
<おそらくな。ただ、そこからが問題だ。聖力から、聖素、大気中にある陽のエネルギーを見つけ出し、取り込ん聖力に練り上げなくてはならない。それも魔力を練る器官でだ>
<げえ! 超難しそうじゃんか! できるのかよ!>
<さてな。それはわからぬ。ただやってみる価値はあるだろう>
確かに。ダメで元々、やらないで可能性を潰すより、やってみたほうがはるかにいい。
<ただ、ここで問題が一つ>
<なんだよ? まだ問題があるのかよ>
勘弁してくれよ。これ以上は無理だって。
<お主が聖力を練れることを話す覚悟があるかどうか>
<それは構わないって。最初に言ったろ?>
<うむ。本当にわかっておるか? 聖力は聖女が使う癒しの力の元になるものと同じものぞ。それをお主が使えるとなれば、お主は間違いなく聖女候補となるであろうな>
<げげっ!>
そうか。スヴァの仮説を実践するには、聖力を使える者の協力が必要で。聖力は聖女が使う癒しの力の元でー。
<なんだよ! それを先に言ってくれよ!!>
<少し考えればわかろう>
<わっかんねえよっ!>
くそっ! スヴァの奴! 先に言っといてくれれば。
私はどうした? 話さなかったか?
いや、どちらにしろ話していたか。
「ティティ話してくれてありがとう。今後この課題の参考になったわ」
「ああ、斬新な考えだった。今度長に会う機会があったら、色々尋ねてみるよ」
「あ、あの、聖女さまをこちらにお呼びして、聖なる力を使ってもらうことはできないですか?」
そ、そうだよ! 聖女さまに協力してもらえば、俺が出張らなくてもすむ!
「うーん。それは無理だな」
「そうね」
2人は困ったようにこちらを見つめる。
だよな。王都にいる聖女さまは大事に囲われちまってるもんな。子供から聞いた仮説を実証する為に、来てなんかくれないよな。
くっ。この期に及んで、腰が引けてしまう、自分が情けない。
でもだって、しょうがないだろう。俺は聖女として、王都に縛り付けられるなんて御免だ。
自由に面白おかしく暮らしたいんだ!
だけど。
こんな中途半端な仮説を話して、希望を持たせただけのティティを2人は責めない。
きっと内心では穏やかではないだろうに、それでも2人は笑ってくれる。
くそっ!
そんな2人にここで黙って引き下がれるものか!!
「ヒースさん、ブリアさん、聖素は無理ですけど、聖力だけでも感じれれば、道は開けますか?」
「もちろんだ! 聖素、聖力両方知覚できれば、一番だが、どちらかだけでも助けになるさ!」
「ええ、魔素から魔力、魔法へと習得してるから、途中の聖力から聖素を知覚するのも訓練すれば可能性はあると思うわ」
2人は頷く。
「そうですか。それなら」
そこで、ティティは一旦呼吸を止めて、覚悟を決める。
「試してみましょう」
「試す?」
「どうやって?」
「私が聖力を2人に送り込みます!!」
ちきしょー。やってやんよ!
すべてを語らず、考えさせるスヴァ(笑)