第123話 ちょっ それいい話じゃないから!
「私たちには、小さなレディの言う聖素がどういったものかわからない」
「あっ!」
ティティはそこで初めて話の欠点に気づいた。
「そう、感じ取ったことがないものは取り込めないし、聖力に練ることもできないのよ」
そうか。そうだよね。魔法が使える魔法士は魔素、魔力はわかっても、聖素、聖力はわからない。一度も触れた事がないものなんだから。
ティティはなぜだか、身体にすでに2つの力、魔力や聖力があったから、わかったけど、なかったら絶対わかるまい。未だに魔素や、聖素自体はわかんないし。
<なあ、なんで私は魔素を取り込んでないのに、魔力が身体にあったんだ?>
<我と魂が融合しているせいだろう>
そっか。それは納得だな。
<なら、聖力は?>
<さてな。ティティに転生する時に、能力が追加されたのかもしれぬな>
<そんなことあるのか?>
<知らぬ。我は万能ではないぞ>
<そっか。ごめん>
スヴァがあまりに何でも答えてくれるから、つい色々聞いてしまった。スヴァでも知らないことがあって当然だ。うーんそれにしてもどうしよう。
<2人に魔素や魔力をどうやって会得したかきいてみろ。それがヒントになるはずだ>
<あ、そうだな。そうかも。やっぱ、スヴァすげえ! 先が見えてんな!わかった、聞いてみる!>
「お2人は魔素や魔力はどうやって知覚したんですか?」
そこにヒントがあるはずだ。
「ああ、それは王立学院に入学すると魔法士の適性があるか最初に調べられる」
「そうなんですね」
学校かあ。行ったことねえな。当たり前だけど。
「そう。適正があれば、魔法士教養課程にうむを言わさず行く事になる」
うむを言わさず? なにそれ。
「怖いですね」
「ああ、その適正を調べる方法も少し乱暴でね。学院の魔法士の教員が、僕たちの身体に魔素を流し込むんだ」
「ええ!?」
なにそれ、なにそれ! 怖すぎるでしょ!?
「あれは気持ち悪かったなあ。吐くかと思ったよ」
ヒース、何懐かしそうに話してんの!?
「魔法士の適性がない人は気持ち悪くなるだけで、魔素はすぐに身体から出てしまうの。けれど、適性がある人はお腹に魔素がたまったままになるわ」
ブリアは平然と話してる。それも怖い。
「魔素を取り込めるようになるまで、それを魔力に練れるようになるまで、結構悲惨だったよな」
「ええ。私たち、がんばったわね」
「それがあったから、俺たち魔法士になれたんだよなあ」
「ええ」
なんかいい話に纏めてるけど、スパルタすぎるから。
でも突っ込んじゃいけない気がする。
「じゃ、最初に魔法を使った人はどうやって習得したんですか?」
「そうね。最初に魔法を使かった魔法士、魔法士の始祖エラクレスさまは、魔物に遭遇した時、身の危険を感じて、咄嗟に防御する為に使用したらしいわ」
「えええ。それって偶然ってこと?」
「力の発現はそうらしいわ。それと仮説なんだけど、御使い様の導きがあったとの説もあるの」
「ええ?! そうなんですか?!」
「あくまでも仮説よ。まあそれは一旦置いておいて、簡単に言えば、その始祖エラクレス様は生涯をかけて魔法を研究し、魔法士を増やしていった。そして現在魔法士を育てるまでに至ってるって訳ね」
「はあ。そうなんですね」
大分端折られた話だけど、今はそこは重要じゃないからいい。
えっと。始祖さまは置いておいて、王立学院とやらのやり方を踏襲すればいいのかな。
って無理じゃん!俺、聖素わかんねえし!
どうすんだよ!
ヒースとブリア訓練は意外と好きなのかもv