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第121話 ぐわっ 説明って難しいっ

「私が聞いたのは、聖力を身体に循環させて、身体を浄化する方法です」

「聖力? それはなんだい?」

 そうか。聖力自体が聞いた事ない言葉か。やっぱりスヴァの造語だったか。さて、どう説明するか。

<人間に怪我を治す人間がいるだろう。確か聖なる乙女、聖女とも呼ばれている人間だ。その人間を例にあげて説明してみろ。おそらくお主にある聖力と同じような力を他人に使ってるのだと推測する>

 いつの間にかお座りしていたスヴァが助言をくれた。

<ああ、そんな女の子がいるって聞いたな。あった事ねえけど>

 魔王討伐の時に同行はしなかったよな。勇者不在の魔王討伐では同行してくれなかったよな。聖女を失う訳には行かないって事で。俺たちは死んでもいいのかって思ったもんだ。

<へっ!? 私、聖女と同じような力があんの?!>

 なんだよそれ! 聞いてないよ!

「ティティ大丈夫?」

 驚きでおそらく顔色が変わったのだろう。ブリアが心配そうに声をかけて来る。

「あ、はい。大丈夫だと思います」

 くそっ。スヴァの首を絞めたい。

<早く説明を進めろ>

 こいつ。後で絶対首を絞める。

 ティティは深呼吸すると、話を続けた。

「あの、人の怪我や病気を癒す事ができる聖なる乙女がいるって聞いた事があるんですけど、ヒースさんたちは聞いた事がありますか?」

「ああ、王都にいらっしゃるらしい」

「こちらにはいらっしゃらないのですか?」

「ああ、癒しを使える聖なる乙女は本当に数人しかいらっしゃらないからね。こちらにはいらっしゃらないのよ」

 ええ!? なんでだよ。こんな隣国との国境を守っている場所にこそいるべきだろうが。

 王都なんか戦争になった時に最後に攻められるとこだろ。

 んなとこに、おいといたらもったいないだろう。

 それがありありと顔にでたのか、ヒースとブリアが困ったような顔をする。

 彼らを責めても仕方ない。

 話しを先に進めよう。

「その聖なる乙女が使っている力を知っていますか?」

「いや。ただ、私たち魔法士が使う魔力とは質の違う力を使っていると聞いている。詳しくはわからない。そこら辺は公表されていないんだ」

「公表されていない? 解明はされてるんでしょうか?」

「わからない。なにせ聖なる乙女は数が少ない。そして王都にいらっしゃるから、詳しい事はこちらに伝わってこないんだよ」

「そうなのですね」

 そうか。となると、

「その聖女はヒースさんやブリアさんのような魔法は使えないんですか?」

「使えないらしいわ。あくまでも人を癒す力だけのようよ」

<そうか。うむ。魔力と聖力両方使える人間はいないか、あるいは使える人間が申告してないか。興味深いな>

 何、探究してんだよ。スヴァめ。

「そうなんですね。多分なんですけど、私が聞いた聖力とは、その聖なる乙女が使っている力と似ているものだと思います。聖力とは大気や大地のエナジー、自然が生み出す陽のエネルギー、うーん、なんか長いので、聖素って呼ぼうかな、その聖素を体内に取り入れて練ったものです」

<それで合ってるんだよな、スヴァ?>

<うむ>

 いいらしい。けれど、ティティの話を聞いた2人の反応はいま一つだ。

 そうだよな。全く触れた事がない力を理解するのは難しいだろう。

「陽のエネルギーも違う言い方があるかもしれません。陽のエネルギーは目に見えないだけで、魔素と同じく私たちの周りにあります。森や山など海などには特に満ちているようです。その陽のエネルギーを身体に取り込み聖力に変えて、循環させることで、魔力で傷んだ身体を癒し、浄化するんです」

「そうすると、長く生きられるというのかい?」

「おそらくです。通常魔法を使って痛んだ身体、溜まっていく毒の残滓を聖力を使って癒し、取り除いていけば、普通の人と同じように生きて行けると思います」

「理屈は通っているか」

「ええ、そうね」

 2人はティティの話を聞き、考え込んだ。

 全然喜んでいるようには見えない。

 話の内容が信じてよいのか。また果たして可能かどうか。そちらの方に頭が向いている。

 そりゃそうだ。長生きできる方法がわかっても実行できなければ、それは絵に描いた餅に過ぎない。

 未知のエネルギー、それを聖力なるものに転換して身体を癒す。

 端的に言えばそういう事だ。聖力を短くまとめると、本当に聖女と同じような力かもしれない。

<なあ、スヴァ、魔素と陽のエネルギーって違いはあれど、やる事は魔力を練って循環するのとかわらなくないか?>

<変わらぬな>

<じゃさ、スヴァも聖力頑張れば使えるんじゃね?>

<無理だろうな。我は魔物、魔に属するものぞ。使えぬだろう>

<そっか。残念だな>

<なに。今の我はお主と魂を共有するものぞ。其方が死なねば、我も死なぬ>

<そっか。じゃ、いっか>

<うむ>

 そんなやりとりをスヴァとしている間も、2人はまだ考え込んでいる。

<魔法士で長生きしている者がいないか聞いてみろ>

 そっか。スヴァが前に言ってたな。聞いてみよう。わかりやすくなるかもしれない。

「あ、あの、魔法士の方で、長生きしている人は全くいらっしゃらないんですか?」

「いらっしゃるよ。王城にいる魔法士を統括している長は60歳を超えてまだお元気らしい」

 ヒースが腕を組みつつ、答える。

「その他にも、何人かいらっしゃるわ」

 ブリアもヒースの言葉に頷く。

「皆、その方たちにあやかりたいと思っているのだよ」

 そうでしょうね。皆、誰も早く死にたくはないでしょうから。

「多分ですけど、その方たちは、魔力とともに聖力を使えるのではないかと思います」

「そうなのか! ならば、我らにも聖力を使える可能性があるってことだね!」

 ヒースが初めて嬉しそう声を上げる。

「そうね!」

 ブリアも顔を明るくする。

「あ、でもきっとその人たちは魔力を使う器官があるように、聖力を使う器官があるんだと思います。それを無意識に使って長生きできてるんだと思います」

「小さなレディ、それじゃあ、僕たちは聖力を使うことができないって事かい?」

「ティティ‥」

 ヒースとブリアが愕然とし、顔を絶望に染めた。

「あ!」

 ちょっと待って。まだ説明の途中だから!

<お主は残酷よな>

 スヴァ! お前は黙ってろ!

説明続きます。頑張れティティ。

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