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第11話 たかが7年、されど7年。

 グロシルバ王国東部、西の領プルシコバと並ぶ大きな領地、ガンデール領。

 その領主が住む都、城塞都市ゴルデバ。辺境とはいえ人が多い。夕暮れ時とはいえ、ぼさっとしていたら、交通の邪魔になってしまうだろう。

「さてと、まずは冒険者ギルドだな。金を作らないと」

 ジオル時代、ゴルデバは一度訪れた事があった。

 冒険者ギルドの場所はわかる。

 石造りの大きな建物だった。早々場所は変わらないだろう。

 ティティは迷いなく道を進む。

 ティティが入った門は、北門。この街は楕円形をしており、半径が長いほうの端が北門で、その北門を含む楕円の半分が主に、平民が暮らすエリアである。もう片方の楕円の半分は領主をはじめ貴族が騎士などが住む地域になっている。

 ティティは傍らを歩くスヴァに語り掛けた.

「スヴァ。今がいつかわかったぞ。ガルマニア歴2345年だ」

 首から下げた仮入門証に書かれた日付を見てわかった。

「俺が、ジオルが死んで7年だ」

<ティティは7歳だったな。では死んですぐに生まれ変わったということか>

 すぐに頭に答えが響く。

「だな」

 日ごろの行いがよかったからか。それとも、現世でとっとと修行を続けろということか。

 何にしても、7年ならば、ジオルの知り合いもまだ生きているってことで。

「じゃあ、あいつも生きてるだろうな。無事魔王城から逃げられてたかなあ」

 ジオルが死を覚悟した時、ちらりと過った幼い子供。

 まだ11歳なのに。魔王討伐軍の旗印にされて。

 なんでもこの国、グロシルバ建国をしたのは勇者らしい。その血を受け継いでいる男子として駆り出された少年。なんで、王家からでねえんだよってきいたら、討伐隊に出せる男子がいないらしい。なんだよそれと思ったもんだ。

 だからってまだ成人もしてないガキを出すかね。死んで来いって言われたようなものだと憤ったものだ。当の本人は、重大な使命を託されたと、それを果たそうとギンギンに気を張り詰めていたっけ。クソ真面目すぎて、隊に馴染めず、孤立していた。つい放っておけなくて、嫌がるあいつについつい構い倒していた。

 最後の頃は少しは懐いてくれたかなって感じだったなあ。

 あの子供がいたから、身体を張ったともいえる。

 自分よりも6歳も年下の子供。

 今はティティになってしまったから、会ったところで誰だお前と言われるのがオチだろう。ましてや片や公爵家の嫡男、片や親に捨てられた平民。

 でもこそっと見に行くことはできるのではないか。

 生きていて欲しい。なんとか生き延びていて欲しい。11歳。死ぬには早すぎる。

「生きてたら、きっと立派になってんだろうなあ」

 ティティは額に手の甲を当て、空を見上げた。

<おい。あまり独り言が多いと、変に思われるぞ>

「ん。それじゃ、少し走りますか。急がんと日が暮れちまう」

 ティティは思い出を振り切るように首を振ると、走り出した。

急げ、急げ。

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