第118話 助けられるなら
だからってこのまま黙っているなんてできない。
<何とかして使えるようにならないのかな!? そうだよ。私だけじゃなくて、ヒースやブリア、その仲間みんながそのスヴァがいう聖力っつーのを使えるようになればいいじゃないか? そうすれば、みんなも助かるし、私も実験材料にならないだろ!>
<2つの性質が相反する力を使うというのは非常に難しいだろう。お主が使えているのも奇跡に近い。国守の守護か、魂の特典か。お主が感じる2つの力は混じり合ってはいなかっただろう?>
<うん>
<ならば、魔力使う道と聖力を使う道、2つルートがあるのだろう。子供ならともかく、成長しきった体にもう一つ道を作るのは難しいだろう>
<だめか>
ヒースもブレアも二十歳を過ぎていそうだ。
死へのカウントダウンが始まるのはもうすぐだ。
なんとか助けられないか。
顔が歪む。
「小さなレディ、そんなに考えすぎないで」
「そうよ。明日明後日の話じゃないんだから」
それでも割り切れない納得できない。
なにより、自分たちが一番つらいはずなのに、ティティをこうして気遣ってくれる。
そんな2人が数年でいなくなるなんて納得なんてできる訳ない。
<1つ方法がないわけではない>
<スヴァ?!>
<あくまでも仮説であり、できるかは不明だ。そもそも聖力自体、こやつらに感じ取れるかがまず問題だからな>
<それでも! 可能性が低くても、道があるなら試してみるべきだろう! やり方を教えてくれ!>
<わかった>
スヴァが力強く頷いた。
「ティティ、大丈夫? 私の研究室で休む?」
また黙り込んでしまったティティを心配してブリアが問いかける。
「大丈夫です!」
顔を上げたティティは目に力を込めた。
そうもなる。だって、これから2人に話すことは2人の人生を大きく左右することだからだ。
ぬか喜びさせておわるかもしれない。
それでも試してみる価値はあるだろう。
しかしスヴァから教わって話す内容は、どうしても触れなくてはならない事がある。
それは、ティティが魔法を使えるということだ。いや、実際はまだ使えないけどね。
人族の魔法士は希少な存在だとイリオーネに聞いた。
確かにジオル時代でも冒険者ギルドで見かけたのは、皆エルフだった。
その為、魔法士とばれれば囲われる可能性が非常に高い。
なぜならエルフが国に仕えることは滅多にない。
エルフ自体も滅多に人里ではみられない種族だからだ。
だから、イリオーネはできるだけばれないようにしなさいと、ティティに忠告してくれた。
この2人は城に仕えるいわば公僕である。
そんな2人に話してもいいのか。
<そんなに心配なら、話さなければよかろう。なぜ話さなければならない? 別に黙っていても問題あるまい?>
<え?>
<お主がこれから話す内容に、お主が魔力を扱えることを話さなくても問題ないだろう>
<そっか?そうだな>
<ただ、聖力が扱えるのは伝えねばならんかもしれぬ>
<それは別にいいんじゃないかな? 魔法じゃないし>
スヴァが下からじっとティティを見つめる。
<なんだよ?>
<いや。お主がいいならいい>
<なんだよー。私変に気をまわしすぎただけかー>
少し気が楽になった。
それならさっさと話してしまおう。
あくまで仮説だし。
成功したら、めっけもんって事で。
ティティはスヴァの助言を告げるべく、口を開いた。
「あのもしかしたら、魔法士の体質を改善できるかもしれません」
それにしても今日は濃い一日だな。
それもまだ終わりそうにない。はあ。誰か代わってくんねえかな。
またシリアス展開かもですね。