第114話 ちょっ 私早く帰りたいんですけどっ
「ありがとうございます。それで、話の続きなのですが、その植物スライムの身体はエネルギーを多く含んでいます。その為、切り取った身体を畑や田んぼ、牧場など必要なところに撒くと大地の力が戻ると思います」
「何!」
「なんだと!」
「なんですって!?」
「ひい!」
目の前の領主、両隣のカシミール、イリオーネの三点からぎらりとガンを飛ばされ、悲鳴が漏れる。圧、半端ない。腰が引ける。
「すまぬ。怖がらせたか」
「はい、い、いえ」
どっちなんだという返事をしながら、かなりビビッている。
3人以外からも注視されて、居心地が悪いったらない。ちびっちゃうからやめて。
「ティティ! 聞いてないぞ! なぜ黙っていた」
カシミールがすごんでくる。
「だって、その前の段階で大事になってたから、これ以上話を拗らせたくなかったんですよ」
「だからって、私にだけは言っといてもらわないと、庇えるものもかばえないだろうが」
「そうよ。まったく、私にまで黙っているなんて、ふふふ、どうしてくれようかしら」
イリオーネが怖い笑顔を向けてくる。
な、なに? 私、間違ったか?
<いや、タイミングは今で大丈夫だ>
足元に座ったスヴァが助言してくれる。
<よかった。だよな>
スヴァ頼りになるぜ。
「カシミール、イリオーネ。そうティティルナ殿を責めるな。言えない理由もわかるだろう。おそらく先程のようになるのを恐れたのだ」
そこで、またずんと領主さんが落ち込んだ。
やっぱ、基本いい人ぽいな。
「あ、あの話を続けますね。ただ、注意点があります。植物スライムの身体は、本体から離れると急速にエネルギーが抜けて行ってしまうので、なるべく早くに畑や田んぼにまく必要があります。そして撒いた後に、魔力を当ててやると、エネルギーが浸透しやすいかと」
「魔力ですか?」
麗しの君がブルコワが座るソファの後ろに立ったままで、考え込む。
なんだ、私またなんかまずいこと言ったか?
<人間は魔力を魔法に変換して、対外に出す。純粋な力だけの魔力を体外に出すのはあまり慣れてないのかもしれぬ>
そうなの? 元魔王のスヴァが言うんだから、間違いないのか。
ならば。
「あ、もしくは魔法で起こした風を当ててやってもいいようです」
「わかりました、そうであれば」
なにやら、また麗しの君が考え出したぞ。
面倒なお人のようだ。私も詳しくは知らないよ。
聞かれたら、そう聞いたで押し通そう。私が魔力を扱えるのを知ってるのは、この場ではイリオーネさんしか知らないんだからね。
「となると、ただ退治するだけでなく、植物スライムを最大限有効活用できるよう計画を練って動かないとならないか」
領主さまが顎に手を当てて呟く。
「ルミエール頼めるか」
領主さまが麗しの君を仰ぎ見て、言う。
あ、計画するのは、麗しの君こと、ルミエール様なんだね。
頭良さそうだし。天は二物も三物も与えるのね。ちくしょうめ。
「ここまで植物スライムの性質を知っているのは、やはり御使いさまから知識ですか」
違います。元魔王さま知識です。
なんて言えないよ!
「あ、あの」
「いや! すまない! 追及はしない。もうティティルナの言葉を疑う事はしない」
「ありがとうございます。ただ、嘘ではないですから」
な、そうだよな。スヴァ。
<当然だ。疑り深い奴にそれを知らせるのは癪だがな>
まあ、仕方ないよな。
しかし疑わないというなら、もう一つ助言をしてもいいかもしれない。
「あの」
「なにかな?」
「植物スライムは、自然発生しないんです」
「なんだと!」
「なんですって!」
「ひいいい!」
またこのパターンかよ!3人ともこわいよ!
さっきよりも目がマジだ。殺気がすごすぎるよ!
「これ以上は言えないのですが、お役に立てる情報かと思って」
「なるなってもんじゃねえ! 重要な情報だろうが!」
カシミールが吠えた。
「その通りだ。自然発生しないなら、植物スライムは意図的に持ち込まれたものだと確定できる」
ギンと眼光鋭く、口調鋭く、それをつくブルコワ。
「つまりは、この地の衰退を狙った者がいるということですね」
最後の締めくくりは、ルミエールだった。
「その辺は、私、わかりません」
私はこれ以上かかわらないよ!
「ああ、そうだろう。わしの領分だ! カシミールお主にも手伝ってもらうぞ!」
「はっ! もちろんです!」
よかったよかった。最後はうまく収まったようだ。
「私から話せる内容は以上です」
もう、帰っていいかな。いいよね。疲れたし。
「ティティ殿、感謝する。これでこの地の不作は解消される見込みが出て来た」
「お役に立てたなら嬉しいです」
「それでティティルナ殿、この後、何か予定はあるか?」
「いえ、特にはないはずですわ」
ティティが答える前に、イリオーネが答えてしまう。どういうつもりか。
確かに予定はないけども! そう答えると絶対その後何らかの誘いがあるでしょうが!
「おお! それならば、もしよろしければ、我が城を見学していかないか? 城は初めてだろう?」
うん。この城は初めてだね。でもね。疲れたし、権力者とは極力関わらないようにしたいからね。お断りするよ。そう思って、口を開こうとした矢先。
「それならば、私が案内するよ! 小さな姫君! 私の魔法の研究室もぜひ見て欲しい!」
ヒースが華麗な足取りと手ぶりで、前に出て来た。
魔法士の研究室かあ。今後自分が魔法を使うのに参考になるかも。元魔王様も教えてくれるけど、人間が使うところを見るのも参考になりそうだ。
それが顔に出たのか、ブルコワが畳みかける。
「それはいい! そうしてくれ! そしてその後にでも、植物スライムの退治計画を助言をくれれば、なお嬉しいぞ!」
ええっ?! そこまで要求する?! いやだよ! 面倒じゃないか!
「もちろんでございます! ティティいいわね?」
「はい」
イリオーネの眼圧に頷くしかない。
なんだよう。そこまで子供に請求するかあ。
はあ。乗りかかった船かあ。褒賞金のアップを期待するぞ!
イリオーネさんなぜに、私にそこまでさせるかなあ。
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