前編
「他の人からしたら、何もしてないしょうもない人間にみえますよね、」
週1回の決まり事。
もう最近は自分が一方的に思っていることを話すだけ。正直これがいい方向に向かっているのかどうかはわからないが、一応続ける価値はあるんじゃないかと思う。価値ってなんだろ、、まあいいか、頭の中がぐちゃぐちゃになることも減ってきたし。
昔のように薬を服用することもなく、苦しみから希死念慮で堪らなく不安定な日々を過ごすこともなくなり、今はなんかカラッポな僕だけが残った感じ。。。うまく言えないが望みも希望がないが生きている感覚。望みと希望って同じ意味か?
まぁどうでもいいか、調べるのも面倒。
だがたまに楽しいと思うときもあり、まー長続きはしないけど。多分ふつーに生活はできてる。
この気持ち悪い文章を読めば嫌というほど伝わってくるが、うだうだうだうだあーだこーだ自分のことしか考えてない。自分のことしか考えられない。結局自分が好きなんだろうな。
今気づいたが、19年間生きてきて他人のことなんて強く考えたことあったか?
まず前提に人を好きになる以前に嫌いにもならない。人に怒ることもなければ、人の話を聞いて悲しむこともない。
自分の身におきる苦しみや痛み、不安や恐怖では泣いたりした事はたくさんあった。今もある。だが、映画や本はたくさん観て読んできたが、1回も泣くことができなかった。
みんなそう思ったよなぁ これ発達じゃねーかマジで、、、、、、、、、、、、マジか。。。
(5/11)
不快すぎるよなーこの音、、、これがねーと起きれないししょうがないですけど。。
いつもの道、高い鳴き声のする自転車で映画館まで行くけど、雨の日は最悪なんだよなぁ 車羨ましい。
更衣室で、触ると小銭の臭いがつくロッカーにバックを置き、制服に着替えた後、タイムカードをピッピする。
もう最近は、さほど緊張することもなく、人の目を見て話せるようになった。コミュ力も学生時代と比べると上がってはいた。
今日は特に客がいっせいに死んだんじゃないかと錯覚するくらい人がいない。はい大袈裟に言い過ぎです。わかってます。
「浜ちゃん、誕生日らしいよ」
ドリンクカップの補充をしている時に喋りかけられた。
「浜ちゃん?」
坂井さんは補充をしないといけない所がないか、首を動かしていた。
「ダウンタウンの、、」
「今日っすか?、、、へーそうなんすね、なんかーえー、、、そんな話すことないですか?」
「いや、たまたまTwitterで流れてきたから」
「そうなんすね、坂井さん以外とTwitter見てるんですね」
「中学の頃からつかってるし、毎日見るよ! スマホ触ると、必ず見てるから親の顔よりみてるわ正直」
こっちをむいて笑って答える。
坂井さんは僕の一個上の先輩で年が多分20?、今年21になる年だと思う。 大学3年生なのは確か。
妬ましいくらいの根っからの社会適合者。歳の離れたパートのおばちゃんから同世代、性別の違う支配人のおじさん、マネージャーさんまで、そつなく颯爽に軽やかに楽しくコミュニケーションをとっている姿を見ると心から羨ましく感じることがしばしある。
イライラしたり、疲れた顔でいたり、不機嫌な態度をとったりも一切しない。もうこれ人間は産まれながらにして平等ですなんて言えねーなって思ったね。いや、もしや努力の賜物なのか?そうであってもじゃない、、なんだそれ。
これから始まる就活説明会、インターンもイージーモード。就活も難なくクリアして、その後希望の職場に就職して、みんなに慕われるキャリアウーマンとしての軌道が視える、それしかみえんわ。。 逆に輝かしい未来以外は想像できません。どうあがいても、これから起きる大きなミスすら思いつかないです。なんだよコイツ、、
坂井の話はこれぐらいにするか。次。
(6/12)
眠気で膨れ上がった重い瞼を擦り、A4の画用紙と色鉛筆を勉強机の1番下の引き出しから取り出す。もう習慣になりつつあるなぁ。
私のちょっとした趣味って感じ。
赤いダサいメガネとKawaiiキャラクターの目がついたヘアバンドをつけて、鼻から息を吸い集中する。色鉛筆を持ち、紙に思い描いた景色や風景を想いのままなぞっていく。景色と風景ってどう違うのかな?
この時間だけはなにも考えなくて済む、心が荒むことも、気が散って他のことで頭を悩ませることもなく。
もう1時間はたったかな? スマホで時間を確認するともう23:30を過ぎていた。
真っ白の画用紙が白い余白がなくなるくらいには完成に近づいてきた。
もう限界、寝よ。
幼稚園児が遊そびちらかしたように散漫している色鉛筆を元の位置に片付け、いつもどうりに1番下の引き出しにしまった。
(7/13)
雨が長く降ったせいで、映画館まで自転車でいけなくなって憂鬱に思っていた。それも過ぎていき。。
雨のウザさから暑さのウザさに変わってきたころに、僕は自分自身に異物が産まれたのを感じとっていた。もっと前から気づいていたかもしれない。いつだったか??
でも最近だと思う。
初めて
初めてだ
そっかこれが
人生で初めて
こんな気持ちになるのか
うまく言えないが悪いものではない
もうこれは止めれるものでもない
止めようとするものでもない
止めたくはない
どうでもいい
会いたい
正直、ここまでのものだとは思わなかった。
お前らがよくゆう『ドキドキする』が僕の中にやってきた感覚。
映画、小説、漫画、ドラマではすべて共感できなかった異物がここまで自分に馴染んでいる気持ち悪さ。それでも自分が普通になれた気がして、ホッとした気持ちもある。今はそんなことはどうでもいい。
この自分ではどうしようもできない、溢れんばかりの異物の扱い方が全く分からない。
感じたことのない悩みも増えたが、それよりもメリット?といってもいいのか、悪いのか。ここまで変わるのか?
今までみてきた普遍的な日常がここまで鮮やかに写る。ここにずっと心 体 すべてをあずけたい。
(8/14)
もっと描きたい、もっと入り込みたい。
この瞬間だけが私が生きている、息を吸っている。
画用紙の上で色鉛筆を走らせる。
こんな真夜中でも、蝉の鳴き声は止まない。
私もこんな所で、止まってたまるか。
赤いメガネに汗が滴る。まるで、メガネにも体温があるかのように。
邪魔するものもいなければ、何も遮ることもない。
この作品に私の全部込める。完成に近づけば近づくほど、私は命を燃やし、喜びを感じるこ
(8/15)
「ぁ 」
目を開ける。身体全体が痛い。頭が回っていない状態の中、勉強机にもたれて、椅子に寝ていることに気づいた。
「え、」
なんだこの絵は。よく見るサイズの画用紙に描かれていたのは、森と湖。
あまりにも美しく、ボッーとした頭の中にスッと入り込んできた。どこか、見たことがある景色のようで、それでいて、現実味のない綺麗な色彩。
その絵に気を取られていたが、それより、今の状況があまりにもおかしく、怖くなった。散らばった色鉛筆。絵。誰かが描いたのか? いや、ここで寝てたよな。僕が。今。
締まった喉を精一杯震えさせたが、かすれた声しか出なかった。
「お母さーん」
言ったそばから、今日は仕事でいないことを思い出す。
ヤバい、頭がぐちゃぐちゃになる。昔のように。
パニックになり、椅子から立ち上がった瞬間、
「痛ぁ!!」
何かを踏み、何かが折れる音が聞こえ、その痛みが右足裏に伝わる。
尻餅をついた後、視界の中心に折れた赤いメガネが落ちていた。
あの感情が蘇ってくる。最近、手にした『異物』が。
急激に顔が熱くなり、全身に温かみと汗が吹き出できた。
全部みえた。全部。こんな茶番は終わり。
意識が朦朧としている。
窓を開ける。
助走をつけて、痛みが残った右足を窓辺に引っ掛けた。
飛んだ。
あ、ここって何階だっけ?