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あいう  作者: かれーめし
43/56

だから玄関から来い 4

「誰ですかウチの学校のプールを破壊した人は」


「俺以外に誰かいるのか」


「開き直るな!」


 足を伸ばして床に座る私の膝を枕にして寝っ転がるカミーリアの髪をくしゃくしゃと撫でる。

 3時間目の途中で耳鳴りするほど凄まじい轟音がして、しばらくしたらチャイム以外は滅多に鳴らないスピーカーから教頭が、速やかに校庭に出てくださいと噛みまくりながら言うので出たら、プールが粉々になって抹茶色の水が辺り一面に広がっていた。

 正直プールの授業は男子の視線もそうだが着替え室が狭くて蒸し暑いやら水にセミやトンボの死骸が浮かんでるやらであまり好きじゃなかったから良いのだけど、直感でこれカミーリアがやったなとわかったからそれがバレる方がビビった。


「学校もしばらく休校か……長めの冬休みって感じだから別にいいけどさ」


「宿題なら僕が代わりにやってあげるよ?」


 リュウが詩音と冷穏のマリカを隣で見ながら言ったら、台所から母さんのダメですという声が聞こえてきた。チッ。


「ちょっと考えたら分かるだろ、何で清香さんがお前に学校を弁当で壊してほしいと思うんだよ」


「まぁいいじゃん。これで兄貴も朝気の済むまで寝れるんだし、あわよくばプールも屋根付きの温水に改装されるかもよ?」


「公立校がそんな贅沢なことするかよ。マチリークに濡れ衣着せて賠償してもらえば話は別だけど」


「まぁ大元はマチリークだけど絶対払わないよ」


 冷穏がため息を吐きながらテーブルの上のあられを鷲掴んで口に入れようとしたら、リュウがニコニコと口を横で開けていたので、何粒か落としてから自分も口に入れた。


「父さんにさっき電話したら一周回って笑ってたよ。真似してみるとこんな感じ、くっ……うっ……フフフフ、ハッハハハ……ハハハ……みたいな」


「乾いた笑いってヤツか……」


 カミーリアがどこか他人事くさい口振りでそう言いながら目を擦る。


「でも僕も少し学校行ってみたかったなー」


「何で?」


「だって千明が勉強してるの見たら吹き出しそうだし」


「は? 家でもしてますけど?」


 リュウがゴロゴロと転がって詩音に近づいてから背中に抱きついて覆い被さると、詩音は猫をあやすみたいにリュウの喉仏を指でくすぐった。15歳で女子高生に飛び付くのが許される男子って後にも先にもリュウくらいだと思う。

 しかし平和だ。とても今日学校の一部が破壊されて臨時休校になったとは思えない。それはそれとしてあのマチリークからガッツリ目をつけられてるのに。彼らってどっかで私を監視とかしてるんだろうか。

 リュウがいるからあまり派手なことはできないだろうし、本当に私らが音を上げるまで待ってるとか?

 私が膝の上のカミーリアの身体を下心抜きで脇腹やら胸周りやら撫で回していると、ふとリュウが詩音の肩の上に涙を落とした。


「えっ? ど、どうしたの?」


 詩音はゲーム機をほっぽってリュウが涙を拭き、私もカミーリアを抱えたまま心配して近寄る。


「……いや、ちょっと家族に会いたくなっただけ」


 リュウの小さじいっぱいくらいの涙を染み込ませたティッシュを詩音は近くのゴミ箱でなくポケットに入れた。何に使う気だ?


「お前の親父か?」


「いや父さんは別にいいけど、兄さんや姉さんに会いたいなと……」


「そういえばお前って末っ子なんだよな。これでさらに下の子がいたら千明が正気を失ってしまう」


「は?」


 何ほざいてんだあのDQNは……。


「分からないよ? 父さん貞操観念が虫並みだからもしかしたらいるかもしれない……はぁ」


 虫並みなのか……。


「リュウの姉にはちょっと会ってみてーな。すごい美女だろうし」


「あっ下心丸出しの人がいる」


「うるさいだってコイツの兄貴もおっさんだったけどイケメンだったじゃん。え? まさか兄しかいないの?」


「いや。冷穏と同い年のもいるよ。というか何人いるんだっけ死んだの含めて兄さん達」


 リュウは指を一本ずつ折り畳んだ。まず5人か。珍しいけどまぁ常識の範囲内か。

 次にそれをまた一本ずつ立てた。え? 10人?

 そして、それを親指だけ残してまた折り畳んだ。14人もいるのか兄弟。


「うん。存命で14人死んだの入れたので18人」


「すごいなぁエネルギー溢れるお父さんだねぇ」


 何かコメントに困る。


「兄さんは言わずもがな、マチリークって内戦中は外戦してない時、外戦中は内戦してない時って言葉もあるから、僕の腕がなくなった時に姉が1人死んで、また別の姉はどっかで1人で死んで、また別の兄さんで1人戦場で死んだな。ジェスタフ兄さん割と長生きした方だと思う」


 壮絶すぎる。


「もうずっと家にいたら?」


「ダメだよ。父さんは放任主義だけどおじさんが帰ってこいって言ってきたら流石に帰らないと」


「お前の叔父か?」


「ちょっと違う。クランストロおじさん。昔から僕を色々と心配してくれるおじさんなんだけど過保護気味で正直今僕が日本にいること知らないと思う。知ってたら即部下をよこして連れ戻しに来ると思うし」


「部下をってことはそこそこの地位にいる人なんだ?」


「うんまぁ」


 すると、台所から母さんが出てきた。


「千明、ちょっと手伝って。あとリュウも流琴が帰ってくる内に風呂入ったら?」


「えっ私がリュウと」


「千明は絶対ダメ」


「えぇ……」


 まぁ確かに楽しみは取っておくか。リュウが私に微笑んで今目配せしたし、今日はもう理性を失うつもりで夜中に挑むつもりだ。


「じゃあ私と入ろうかリュウは。あ、カミーリアも」


 は? は?


「お前、カミーリアはともかくリュウとは2歳しか変わらんだろ」


「リュウはいいの。リュウぐらい可愛いともう性差も年齢差も超越してるから。あと襲われても勝てる」


「いや僕の方が強いから」


 と、変なマウントの取り合いをしながらカミーリアとリュウは詩音に連れられて消えていった。今晩リュウと一緒に寝る話がなかったら脳が破壊されていたところだ。アイツ許すまじ。

 というかリュウもだけどあの2人って性欲とかないのか? 今までカミーリアとは裸で風呂入ったりリュウとも昨日は裸で抱き合ったりしたけど、2人とも普段通りの反応だった。一周回って心配になってきた。


 ***


「ふーなんか変な店に来た気分」


 リュウとカミーリアと同じ湯船に浸かりながら詩音がリュウの濡れた髪を避けて背骨を撫でると、リュウの身体がぶるりと震えた。

 リュウと一緒にいると自分が間違いを起こしそうになって怖いのだが、それでも関わるのをやめられない。というかリュウがマチリークの大物の息子というので何とか堪えているが、流琴の役者仲間の息子とかだったら多分襲っている。

 今も無理矢理顔を自分に向けさせてキスをしたり、2人にむしゃぶりつきたいと思っているのを我慢している。いっそリュウから襲いに来てくれたら助かるのに。

 詩音がリュウを、リュウがカミーリアを抱きしめる形で3人がぼんやりしてると、遠くから叫び声が聞こえた。酔っ払いかな? 若い女の声だった。詩音は気にせずにリュウの二の腕を揉んでいた。


「ん?」


「……ュウウゥゥゥウウウウぅ!!」


 リウの身体がびくっと震えた。

 また声が聞こえてきた。さっきより近いし何かリウを呼んでいるような声がする。


「ちょっとごめん」


「えっ?」


 リウは全裸で濡れたまま風呂を出て、リビングの方に出て行ってしまった。


「リュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッッッ!!!!」


 彼が生まれたままの姿でリビングに現れ、それに食事をテーブルに並べる千明達がぎょっとしたのと同時に、ガラス戸がドロップキックで勢いよく蹴破られて知らない若い女が転がって壁に激突した。


「え……え?」


 横でゲーム機を片付けていた冷穏の顔に足が当たり、壁に頭を強打した彼が気絶した。

 リウは壁に衝突してピクリとも動かない彼女の元に屈むと、髪をかき分けて顔を見た。


「シ、シア?」


「だ、誰?」


「あ、僕の姉です」


 リュウが彼女の肩を揺さぶって起こそうとする。真冬に下は半ズボンで上は袖のないシャツの上に防弾ベストという凍えそうな服装だったが、ベストには手榴弾やサバイバルナイフが収めてあり、剥き出しの腕にはしなやかな筋肉があった。

 すると、彼女はリウの


「リュウ? リュウ!? 無事だったのよかった心配したんだよよかったよかったいやなんで裸なのしかもずぶ濡れなのさてはコイツらに水責めの拷問を受けていたんだね!? 許さない!! お前ら全員ギッタギタの血祭りにしてやる!!」


「お、落ち着いてシア! 違うただ風呂に入っていただけだし拷問なんかされてないから落ち着いてくれー!!」


「コロス……」


 シアというリウの姉はリウに自分の防弾ベストを着せると、そこからサバイバルナイフを抜いて千明に襲いかかった。


「えっ? う、嘘やろ……」


 千明が持っていた茶碗で反射的に顔を覆った時、浴室から飛び出してきたカミーリアが彼女の腹に射出した空気の塊を叩き込み、寸でのところで千明を守った。全裸で。


「グェッ!!」


 よろめいた彼女の身体は食器棚にぶつかり、開いた棚から皿が何枚も割れて砕けた。


「あっパン祭りで頑張ってシール集めた皿が」


「私の心配は?」


「コイツがお兄様を殺した元凶か……ちょうどいいここで皆殺しにしてやる!」


 VS アナスタシア・アンダルセン

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