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おまけ

本編とは関係のない、神さまのお話です。

特に読む必要はないかもですが、気が向かれたときに、ゆる~い気持ちでお楽しみ下さいね。


 しんと静まりかえった深夜の土間。

 鞍馬が1人で食料庫の整理をしていると、中庭から誰かが入って来た。

「《こうじん》さん。どうされたのですか、こんな夜中に」

「あー鞍馬。久しぶりじゃの」

 《こうじん》だ。

 彼は、対、人間用? の山羊ひげのじいさん姿である。

 だがやはり森羅が見破ったとおり、彼は鞍馬を知っているようだ。

「あー今回は大変だったね」

 のほほんとそんなセリフを言った後、「いいえ」と首を振る鞍馬に向き直り、すい、と姿勢を正す。

 つぎの瞬間。

 ぼわあ、と、天井に届くほどの背丈に膨れ上がった《こうじん》は、炎を纏う本来の姿になり、ぼわあ、と今一度炎をまき散らした。どうやら笑ったらしい。

「でも、我が友を、よくこちらに引き戻してくれた。礼を言うぞ、ありがとう、鞍馬」

「いいえ。こればかりはご自分の意思がなければどうにもならないことです。お礼ならハシュナさん自身に」

「ああ、そうだな。ああ、そうしよう」

 またぼわあ、と炎を上げる《こうじん》に鞍馬が言う。

「そろそろお姿を変えて下さいませんか。そのままいらっしゃると東西南北荘が燃え尽きないかと、気が気ではありませんので」

「はあ? ……ぶはっ!」

 なんとか吹き出す前に山羊ひげじいさんに戻った《こうじん》は、ホーッホホホと、またサンタクロースのように笑いだした。

「わしの炎で、ここが燃えるはずなかろう。まったく……」

 ポリポリと頬を掻いたあと、少し言いにくそうに《こうじん》が話し出す。

「あー、でな、鞍馬。わしはただ礼を言いに来たのでは、ないのだ」

「はい」

「お願いがあるんじゃよ」


 そのお・ね・が・いとは。


「鞍馬に、本気を込めてプリンを作ってもらいたいんじゃ」

「プリン、ですか」


 実は、《こうじん》とハシュナのけんかの原因は、プリンだったのだ。

 その日、ハシュナが一仕事終わったら食べようと楽しみに取って置いたプリンを、《こうじん》が全くの悪気なしに食べてしまったのだ。

 それがわかったときのハシュナの怒りと悲しみは相当なもので。

 当の本人は、たかがプリンごときで、と思ったが。

 ハシュナにとっては、されどプリンだ。

「食べ物の恨みは、ほんにおそろしいものよのお」

 という《こうじん》の一言に、すべてが表現されている。


 快くそのお願いを引き受けた鞍馬に、抱きつかんばかりに礼を言って《こうじん》は、また空の向こうへと帰って行った。




 そして場面は一転、《すさのお》の家に神さま修行前のハシュナが立ち寄ったところへと切り替わる。

「あ、それからな」

「?」

「《こうじん》からの伝言。お前さえよければ、神さま修行に付き合ってやらんでもない! だとさ。まったくあいつ今から来るってのに自分で言えっての。お前ら、どこまで素直じゃないんだよ!」

「ふん! 元はと言えばあいつが悪いんだ! 俺が大事に取っておいたプリンを……」

 と、思い出したのか涙目になるハシュナ。

「はあ? まったく、プリン一つでそこまでこじれるか、普通」

「……(ムスッ)」

「あ、けどそれも大丈夫だぜえ。《こうじん》がさ、鞍馬にお願いして、本気のプリン作ってもらったんだと。もうすぐ持ってきてくれるってよ」

「なんだそれは! 鞍馬の本気のプリンだと! そんなもんで俺があいつを許すと思ってるのか!」

「ああ、許すよ許す。一口食べたらもう、絶対許すって言うぜ、賭けてもいい」

「ばかばかしい! 言わないに賭ける!」


 結果は。

 皆さまお察しの通り、《すさのお》はこのあと、賭けに大勝したんだとさ。

 めでたし、めでたし。



おしまい







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