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果てへと向かうものがたり

作者: 鈴々

 私の住む町には、大きな切り株がある。

 どれくらい大きいかというと、私の家より大きくて、イズミ商店の裏の空き地より大きくて、文学学校の庭くらい大きい。

 その切り株はかつてジョナの木と呼ばれていたのだと、近所の物知りなモンダくんが言っていた。

「どうしてジョナの木なの?」

「昔ジョナサンてファミリーレストランがあって、そのお店が繁盛すればするほどこの木はどんどん成長していったんだ。そうしてここまで大きくなって…」

「それ絶対嘘だよね?」

 私が聞くと、彼は残念そうに舌打ちしてそっぽを向いた。どうやら図星らしい。

「しかしジョナサンは繁盛していたそうだよ」

「いや、どうでもいいし。何年前の話?」

「残念だけど僕にもわからない」

 しかし、かつてここがまだ日本と呼ばれていて、世界には沢山の人がいて私達とは全く異なる文明が栄えていた頃からこの木があったことは確かなのだそうだ。

「それにしても、切られてしまう前はどれくらい大きかったんだろうね?」

 私が何かを聞くたびに、モンダくんは必ずもっともらしい回答を私に提供してくれる。それが真実かはわからないけど。

「この木は宇宙まで伸びていたんだ。だから昔の人はこの木を登って宇宙へ行ったのさ」

 それが真実にしろ、そうでないにしろ、私はいつも彼の回答に感心してしまう。

「どうして切られちゃったんだろうね?」

「それは…」

 珍しくモンダ君は口を噤んでしまった。私はしばらく彼の回答を待っていた。でも、陽が少しずつかげり始めて私達は家に帰らなくてはいけなくなってしまった。

「じゃあまた明日」

「気をつけてね」

 結局、彼は切られた理由を語らなかった。


 夜は危険な世界。 真っ暗で、寒くて、悪い怪物が現れる、というのは聞いた話だから本当かどうかは私は知らないけれど、本当に悪い怪物はいるらしい。

 夜は家から外へ出てはいけないのがこの町の掟。夜に外に出るのはとても危険なのだ。大人だって誰もやろうとはしない。

 私は一人で暮らしているから、夜は完全にひとりになってしまう。誰もたずねて来ないし、何処へもいけない。モンダくんや他の皆と一緒に集団用コテージに住めば良かったのだろうけど、これはこれで私としては気に入っている。ひとりの時間というのはとても大切だと思う。

 夜はいつも読書をして過ごす。今日も新しい本を書庫から持ってきた。古いものの中には、前文明のときに書かれたものもいくつかあって、私達の知らない世界の話がそこには書かれている。そういう未知のものにふれるのが好き。でも、難しいのはちょっと苦手かなぁ。今日のはたぶんそんなに難しくはないと思う。表紙には可愛い絵が書いてあるし、中も挿絵が多くて読みやすいかも。でも題名のモエタンって、どういう意味なんだろう?

 さて、読み始める前にいろいろと準備をしないといけない。 暖炉に薪を補充して、夜に急激に下がる気温に備える。昼間は半袖でだってへっちゃらだけど、夜は何枚も重ね着しないと凍え死んでしまいそう。暖炉の火は欠かせない。温かい紅茶も。

 窓の鍵をかけながら、外の風景へと視線を向けてみる。真っ暗で何も見えないその先に、あの切り株が確かに存在している。何となくジョナの木の切り株のことを考えてみる。

 どうして木は切られたのだろう?

 そもそもあんなに大きな木が育つのだろうか?

 もしあの木が今でも切られずに、宇宙まで伸びるくらい成長していたら、私も宇宙に行けるかもしれない。

 窓の外の空を見上げると、無数の星達が今日もぐるぐると規則的に回っている。

 もしも、あの星達のところへ行くことが出来たらどんなに素敵だろう。きっとモンダ君は、どうして星が光っているのかとか、どうして星がぐるぐる回っているのかとか、たまに現れる無数の星の群れについても、余すところなく話してくれるだろう。彼は物知りなのだ。ここでの彼の役割は物知りである事なのだから。

 でも、そんなモンダ君があのジョナの木が切られた理由については答えてくれなかった。一体どうしてだろう?明日会ったらもう一度聞いてみよう。


 終わりの来ない夜はないって、モンダ君は言ってた。君が読む本も、いつか読み終えてしまうみたいにね、って。そんなの当たり前じゃない。わざわざかっこつけて言っても、モンダ君がかっこいいとは思わないし。

 なんて、そんなことは今はどうでもいい。もうすぐ夜が明けようとしている。窓の外はうっすらと明るんできていた。私はこれから自分の役割を果たしに行かなければならない。

 夜も明け始めれば危険ではなくなる。外へ出れるようになるのだ。

 私は手早く身支度を済ませて家の玄関を開けて外へと出た。


 小鳥達の鳴き声が聴こえてくる。虫達の鳴き声も。

 朝はまだ完全に明けていないから、とても寒い。何枚も重ね着して、マフラーを巻き手袋をつけて帽子もかぶったけれど、厳しい寒さが全身に伝わってくる。吐く息が白いもやとなっては消えていく。

 私は小走りに、目的地へと向かう。町には誰の姿もない。当たり前だ。私以外の人は皆、まだ眠っているのだから。

 私の役割は、夜が明けて朝がきたらみんなを起こすこと。私が起こさなければみんなは永久に眠り続ける。そんなことはあってはならない。

 この世界の人々はみんな、ひとりひとりが何かしらの役割を担い、支えあうようにして生きている。私の役割は特に重要だ。もし私がみんなを起こさなければ、この世界は止まってしまったも同然なのだから。どうして私にそんな重要な役割が与えられたのかわからない。でも与えられた以上はしっかりと勤め上げなければならない。そうやって今まで生きてきた。私だけが眠る事もなく、みんなが寝ている間も私は夜な夜な本を読み、朝が来ればみんなを起こしに行く。他の誰もこの役割を変わることが出来ない。みんなは夜になれば寝てしまうからだ。これを抗う事が出来るのは私しかいない。

 こんな生活が一体何処まで続くのだろう。私は時々考えてみた。でも、答えなんて出るわけがなくて、結局私は同じ役割を繰り返す。今までも、これからもだ。


 町のはずれの小高い丘の上に、小さな鉄塔が立っている。それほど高くはないけど、その鉄塔のてっぺんからは町が一望できる。

 異変に気付いたのは、鉄塔のてっぺんに吊るされている、みんなを起こすための鈴を今まさに鳴らそうとしたそのときだった。

「えっ…?」

 誰かに声をかけられたような気がしてそちらの方へと振り返る。声をかける人なんているはずもないのに。でも、確かに呼ばれたような気がしたのだ。

 振り返った私は目を疑った。その先には信じられない光景があった。町の中央のほうにジョナの木は位置している。ジョナの木は確かにそこにあった。切り株ではなく、木がそびえ立っている。信じられないくらい大きくて、見上げるとその木はずっとず〜っと上まで伸びていた。どこまでも、果てしなく遠く高く。

 信じられない。一体どういうことだろう?昨日までは確かに切り株だった。昨日だけじゃない。その前の日も、それまた前の日も、ずっと切り株だったはずなのに。思わぬ出来事に、私はすっかり自分の役割も忘れてその大木を見つめていた。


「こんばんわ。あ、今はもうおはようだね」

「ひゃっ!!?」

 突然声をかけられて、私は思わず小さく悲鳴を上げる。見ると、小さな男の子が立っている。綺麗な顔で、まるでこの世の人ではないかのような不思議な雰囲気を漂わせている。

「き、きみ…誰?」

 私はおそるおそる聞いてみた。考えてみれば、この状況はありえない。私はまだ鈴を鳴らしていないのに、この男の子は目覚めている。私以外にどうして…。

「そんなに恐がらなくても大丈夫だよ。怪物みたいにあなたを食べてしまうわけでもないし、蛙や鼠の姿にしてしまう意地悪な魔法使いでもないんだから」

 男の子は笑った。その無邪気な笑顔はまるで天使と思ってしまうくらい可愛らしく、純真な笑顔だった。その笑顔を見ていると、自分がどれだけ醜い存在なのだろうかと思ってしまう。

「僕はただ、あなたに知らせたいことがあったからここに来たんだよ」

「知らせたいこと…?」

 男の子は大木のほうに視線を向けた。私もつられて彼の視線の先のほうを見やった。木は大きく高い割りに葉が少なく、分かれた小さな枝達ももそれほど伸びてはいない。しかし、一晩だけであんなに成長する木なんて聞いた事がない。

「ね、ねえ、どうしてあの木はあんなに育っているの?昨日までは確かに切り株だったはずなのに…」

「いや、あれはずっとあのままだよ。切られてなんていなかった。ただ、誰も気付かなかっただけなんだ」

 気が付かなかった?あんなに大きな木に?

「ど、どうして気が付かなかったの?あんなに大きな木なのに、気付かないわけがないじゃない」

 私はもう完全に混乱していた。あの木も、男の子も、普通ではありえないことばかりだ。

「そうさ、みんなには見えなかったんだ。あの木の本当の姿を。いや、気付いてる人も中にはいたんだよ。切り株なんかじゃなく、切られてなんかいない。あれが本当の姿だって分かっていた人もいたんだ。でもね、みんな黙ってたんだよ」

「ど、どうして?」

 私が聞くと、男の子の笑顔は消え、表情は暗くなってしまった。哀れなものをみるような、そんな目で、私を見つめていた。

「あなたがどこへも行かないようにするためだよ」

「私が?」

「そう、みんなにとって、あなたは本当に特別なんだ。この世界にとっても。あなたがいなければなりたたない。あなたがどこかへ行ってしまったら、ここの住人達はもう存在することさえ出来なくなってしまう」

 確かに、私の役割は重要だと思う。でも、そこまで大袈裟にいうほどのものでもないと思うのだけど…。

「私がどこへ行くって言うの?」

 私は当然の質問を投げかけた。別に行きたい場所なんてないし、ここ以外の世界のことなんて全く知らないから行きようがない。

「思っているはずだよ、あなたは。あの先へ行ってみたいって」

 男の子は空を見上げた。正確には木のてっぺん、あの大木の遥か上のほうを見ている。私にはなんとなくそれがわかった。

「あの木の上…」

 あまりに高く、木の一番先のてっぺんは全く見えない。本当に宇宙まで続いているんじゃないかって思うくらい。この木は途方もない年月をかけてあそこまで成長したのだろう。

「あの先って、一体何があるの?」

「それは自分の目で確かめるしかないよ。実際のところ、ぼくも知らないんだ。でも、あの先にはきっとあなたにとっての真実が待っている。それはあなたにとって不幸なものかもしれないし、幸福なものかもしれない」

 真実…?私にとって?さっぱりわからない。

「私にはここでの役割があるわ。あなたも言ったようにぃ、私はここではとても大切な役割を持っている。その役割以上に私にとって大切な何かがあの先にあるというの?」

 私が聞くと、男の子は見上げていた顔をこちらに向け、私をまっすぐに見つめてくる。まるで吸い込まれてしまいそうな、綺麗で透き通った瞳。一瞬、時が止まったみたいに、そこで沈黙が訪れる。この現実感のない状況のおかげで、本当に時が止まっているのではないかと錯覚してしまう。あと少しで、世界は終わってしまう、だがそれを防ぐために、時は止まったのだ。そして、終わらない世界へと車線変更をして、時は再び動き始める。そんな考えが私の頭の中をめぐる。ちょうどそのタイミングで、本当に時が動き始めたみたいに男の子の口が開いた。

「それはあなた次第だよ」

「でもね、今いるこの世界は言わば内向の世界なんだ。例え永遠に続いたとしても、外へと向かう事はないから何も得られるものもないし、変化も起きない。閉鎖的で、平坦な一本線の世界」

「あの先には沢山の分かれ道がある。どの道も険しくて、厳しい世界かもしれないし、永遠の世界ではないかもしれない」

「もしあなたが少しでもこの世界に疑問を抱いているのなら、あの木を登る事をおススメするよ」

「もちろん、ここに残ってこの永遠に続く世界を見つめ続けるというのなら、それは止めはしない。あなたが自分自身で考えて決めた事ならね」

 男の子に影のようなものが何重にも重なっていき、まるで何十人もいるみたいに見える。その何十人が一人ずつ順番に話してるみたい。

 これは何だろう?突然現れた得体の知れない男の子に、私は選択を迫られている。ここに残るか、違う場所へ行くか。もし、その別の場所に私にとっての真実があるというのなら、私はそれを知りたいと思う。ここでこうして、毎日決められた役割を果すという人生が永遠に続くなんていやだ。それは、何か違う気がする。私は本当はいつまでもここにいちゃいけないんだと、そう思えてくる。でも、一つだけ心残りもある。

「モンダくんや、ほかのみんなはどうなるの?」

 私がここからいなくなってしまったら、私以外の人たちは一体どうなるのだろう?私が起こさなければ永遠に眠り続けてしまうのではないだろうか?そうなってはみんなに申し訳がない。

 でも、男の子は私がそういう事を予期していたみたいに小さく微笑んだ。そして「だいじょうぶ」と言った。

「みんなもそれぞれの世界へと向かっていく。結局、あなたがここを離れれば自動的にみんなも別の場所へと旅立つことが出来る。何も心配する事はないんだよ。みんなそれぞれの場所で、それぞれの新しい自分を取り戻す事が出来る。ただ、なかにはそれを望んでいない人たちもいるみたいだけどね。だからあなたにはあの木の事を知っていても話さないでいた人もいたんだよ」

 モンダくんは知っていたのだろうか。彼が知らないわけがないだろう。だから私が、木が切られた理由を聞いたとき、彼は話さなかったのかもしれない。モンダ君はこの世界にいたいのかな…。

「……私、あの木を登ってみようと思う」


 たぶん、もうずっと前から私の答えは決まっていたのだと思う。

 私はそれを望んでいるんだ。自分を変えること、世界を変えること、木のくぼみに手を乗せ、足を掛け、踏みあがるその度にいろんな思いを込めてその木にぶつけていく。登り始めると意外にすいすいと上へと進んでいく。私はひたすら登り続けた。夜になっても、朝が来ても。

 夜に外に出ているなんて初めてだった。木の上までは怪物もやってこないみたいで、誰の邪魔もなく木登りに専念する事が出来た。木は、まるで登ってくださいと言わんばかりにうまいぐあいに足と手をひっかけられる場所があり、心配していたよりも簡単に登れた。不思議な事に、夜には木がぼんやりと光だし、見えなくて登れないなんてこともなかった。そして一番不思議なのが、登り続けてもちっとも疲れないということだ。おかげで一度も止まることなくひたすらに登り続けた。と言っても道のりは程遠い。一体何度夜を越しただろう。疲れはしないものの、手の皮は擦り切れぼろぼろになり、履いていた靴は底が磨り減り穴が空いてしまい、途中で脱ぎ捨てた。痛みはそれ程感じなかったけど、それでも辛く、重苦しいものが身体に乗っている感じがした。ただ黙々と木を登り続けるということが、こんなにも精神的な部分に影響してくるとは。だんだんと、登るという決意、執着心が薄らいでいく。諦めや、絶望が押し寄せる。

 これだけ登り続けてもその先にあるものが一体どんなものかわからない。心が不安で押しつぶされそうになる。それでも、登り続けるしかない。私はそう決めたのだ。

 ふと、周りを見渡してみた。遥か地平線の彼方まで見渡せる。下を見ると、私のいた町はもう豆粒よりも小さくてよくわからない。ずいぶん上まで登ってきたのだと実感する。それでもてっぺんは未だ見えてこない。このまま行くと、本当に宇宙まで行ってしまう。それも面白そう。

 いつの間にか、不安やら、絶望感やらは消えていた。今あるのは、この先にあるものに対する期待と、心地よい高揚感。このまま手を離してしまっても平気かもしれない、なんて思ってみたりする。


 で、実際私は気が付くと、手も足も大木から離れていた。

「え…えええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ〜〜〜〜〜!!!!!!!!?????」

 私はある一方向へと無常にも放り出されていった。


「最後まで登る必要はないさ。ようはするかしないか。あなたはすることを選んだ。だからあなたは大丈夫。これまでもそうだったように、これからもきっとそうだ」

 声はどこか遠くから聞こえてきた。

 私は、体が落下していることを全身で感じながら、ひとり思いをめぐらせていた。これまでに読んだ本の内容であるとか、町の人たちのひとりひとりの事。あの男の子のこと。そうしているうちにも、私の身体は落下を続けた。


や がて、頭のてっぺんに強い衝撃をおぼえた。


「いったあああああぁぁぁいぃっ!」

 突然の衝撃に、私は机に突っ伏していた身体を勢い良く起こした。

「まったくお前は…、授業中に寝るやつがあるか!」

 声は私のすぐ隣から聞こえた。激痛の走る頭を両手で押さえながら、私はそちらに顔を上げて先生を睨んだ。

「な、なにもそんな強く叩かなくたっていいじゃない。しかもそんな分厚い広辞苑で…」

「どアホっ!ちゃんと授業聞いてろって言っただろ。だからお前はいつまで経っても成績が良くならないんだ。だいたいなぁ、いつも先生が言っているように…」

 あ〜、かどっちの説教がまた始まった…。

「先生、わかりましたから授業続けてください」

「あぁ、おうおうわかってるよ。だけどお前はわかってない。後でみっちりと説教してやるから、放課後職員室へ来いよ」

「サイテー」

「何か言ったか?」

「いいえ先生。何にも申しておりません」

 かどっちは黒板のほうへと戻っていった。そして再び授業を再開する。

 周りを見回すと、いつもの教室だった。三十七人がそれぞれ自分の席に着き、授業を聞いている。

 何故か不思議と、ここが全く知らない世界のように思えたのだけれど、そんな事は全然なくて、私は今日も不真面目な生徒の模範としてしっかりとオツトメを果している。はあ、何だか異様に疲れた。まるでずっと木登りでもしてたかのように全身が疲労し、あちこち痛みを感じる。今日は部活を休もう。早く帰ってゆっくり本でも読もう。

 隣から小さな紙飛行機が優雅に飛行をしてきて、私の机にうまい具合に着陸した。今日のフライトも大成功だ。飛んできたほうを見ると、離れた席に座るさあらがこちらに笑顔を、というよりにやけている。なんだあの子は?気でも狂ったか?

 紙飛行機をひらいて中を見てみると「放課後の職員室、ふたりきりの特別授業。生徒と教師の禁断の愛(R18指定)」と、わざわざ筆ペンで達筆に書かれていて、私は堪え切れず思い切り吹いた。一緒になってさあやも吹いていた。

「おまえらああぁぁ!!」

 先生の怒鳴り声で学校が揺れた。

 さすがにちょっと反省して、そのあと私は大人しくしていた。

 ああ、平和だ。なんて平和なんだろう。もう平和すぎて眠くなってくるぜぇ…。

 私はまた長い長い旅へと出発するのであった。

 再び、広辞苑が私の脳天に激突し、学校中を巻き込む大乱闘にまで発展するのだけれど、それはまた別の話。


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― 新着の感想 ―
[一言] 良いですね。今のところ、ここで読ませてもらった作品の中では一番好みの雰囲気でした。いつまでも読んでいたいような。 さあらが筆ペンで書いた紙、絵が浮かんで吹き出しました(笑)
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