足りない
誰かが言った。
目の前のこいつが言った。
『私の気持ちを理解できないんだろうね』
途切れ途切れの引きつるような声も
過呼吸気味の口呼吸しか出来なくなった様を
見たところで、なお苛立つだけだった。
他人だからね、と言われているようで。
「分かりたくもない」
きっと悪いのは自分だと知っている
だってこいつが泣いていて
俺はただそれを見てるだけ。
「なんで」
「なんで」
「なんで」
と絞り出すように出ていた声も、すすり泣く声も
しばらくして止んだ。
ごめん、悪い事をしたと思ってる
翌日、謝った。
(昨日泣いたのなんでなんだろうな…)
読んでくださってありがとうございました。