婚約破棄を言われた結果。
初投稿です。
誤字脱字等、至らないところがあると思いますが、感想欄等で指摘していただけると嬉しいです。
「ルリアナ、いくら伯爵家と言えど、お前の仕打ちは目に余る!
よって、お前との婚約を破棄し、死罪とする!
代わりに、こちらのテレサを婚約者とする!」
よりによって、卒業パーティの場で…
「殿下、私は、どうしてそのような処分を課されたのでしょうか。」
「ふん、白々しい!
お前は、2年生から卒業する今までの間、テレサをいじめただろう。
服に隠れるからと体を殴ったり、最終的には階段から突き落とそうとした!
しかも、自分ではやらず、配下の令嬢方にさせていたのだ!
そんなこと、王妃となる者に相応しいわけがないだろう!」
「まあ、そのようなことがございましたのね。
残念ですが、私、そちらにいらっしゃるテレサ様?とおっしゃるんですね。
貴女の姿を存じ上げておりませんでしたの。
しかも、殿下と仲がよろしいのも存じ上げておりませんでしたわ。
情報収集不足だと責められるかもしれませんが、私に責はございませんわ。」
「お前、この期に及んでシラを切るか!」
「いやですわね、シラを切るわけではございませんわ。
ただ、知る必要がございませんでしたの。
婚約者でもない、一介の令嬢が、どうして殿下のお気持ちを探りましょう?」
「え、婚約者じゃない?」
「ええ、そうですわ。
約3年ほど前でしょうか。
一応ですね、私は伯爵家の長女でしたから、打診はございました。
ですが私、その頃には隣国の第一王子との婚約が決定していましたの。
それを破棄することも出来ませんでしたので、その打診はなかったことに。」
「な、何だと?」
「あら、ご存じではないのですか?
確か、婚約者は男爵令嬢の方に決定したと伺いましたが。
お名前はですね、ええと、そうですわ、テレサ・ウェルス様とおっしゃいます。
あら?どうやら、そちらの方と同じお名前ですわね。
失礼ですが、お名前を教えていただいてもよろしいですか?」
「テ、テレサ・ウェルスと申します…」
「ありがとうございます。
殿下、良かったですわね、もう婚約されているそうですわよ。
これでよろしいですよね?」
「いや、お前のいじめが…」
「私もそうですけれど、どのご令嬢も、ウェルス様をいじめることはございま
せんわ。だって、殿下とご結婚されますので。」
「だから嫉妬が…」
「いやですわね、殿下と結婚してくれるのに、いじめて婚約破棄されたらどう
しますの?
まあ、反対されれば燃えるというのもございますが、性格もわからないのに、
そんな藪をつついて蛇を出すようなこといたしませんわ。」
「結婚してくれるってなんだ!
不敬だぞ!」
「それですわ。
自分の思い通りにならないと、権力で人を罰する。
普段は王族になんて生まれたくなかったとおっしゃっているのに。
このような方が次期王様だと思うと、吐き気がいたしますわ。」
「お前、まだ言うか!」
「ええ、申し上げさせていただきますわ。
ウェルス様、このような状態になってしまって、大変心苦しいですが、怪我の
本当の原因は、何ですの?
大丈夫ですわ、貴女方は私の家が守ると、約束いたします。」
「ほ、本当の原因ですか…?」
「ま、待て、テレサ、言うんじゃない!
言ったらどうなるか、わかってるんだろうな!」
「こんな戯れ言、気にしなくてよろしいですわ。」
「で、殿下に、殴られました…
来る日も来る日も…
婚約者になって、一月ほどは優しかったのです…
それが、いつの間にか、な、殴るようになって…
でも、親には言えませんでした…
殿下が言うのです…
お前は、本当の子じゃない、だから俺の婚約者にして、のしあがるために駒に
したんだ、って…
お前は、俺の隣しか居場所はないんだって…
家系図とかも見て、違うとわかっていても、でも、駒だったらどうしようって…
学園では、側にいないと、授業が終わって誰もいなくなったら、側からいなく
なった回数だけ殴られるんです…
痛い、痛かったのでしょうか…
だんだん、わからなくなりました…
でも、一緒にいないと、両親に褒められない、そう思うと…」
「で、でたらめを言うな!
お前は、俺のことが好きだって言っただろうが!」
「殿下のこと、心から好きだって、言ったことはございません…」
「ルリアナ、お前、テレサに言わせたのであろう!
知らないと言っておきながら、どうやって口裏を合わせたのだ!」
「いやですわね、人聞きの悪い。
文通していただけですわ。
今の姿を拝見したのは、今日が初めてですわ。」
「じゃあ、なぜ文通するようになったのだ!」
「両親が仲が良いのです。
昔はよく会っていたのですが、ご婚約されてから、会わなくなりまして。
まあ、婚約したから殿下も落ち着かれ、ラブラブしているのだろうと、思ってお
りました。
なんといっても、お美しいですからね、ウェルス様は。
その美貌にやられ、また、性格も相手を不快にさせるものではございませんか
ら、きっとウェルス様は上手くいっているのだろうと、勝手ながら思っており
ました。
しかしですね、私の父から、ウェルス様がふさぎこんでいると。
そこから文通を始めたのですが、手紙を見るたびに腸が煮えくり返りましてね。
あの殿下、まじ許せん、私の可愛いテレサに何してくれてんだ、と。
あら、申し訳ございません、つい本音が。
それで、まあ今日に至るわけですが。」
「テレサ、お前、こいつに逐一報告しやがって!
俺がお前にしてやったこと、忘れたわけじゃねえだろうな!」
「えっと、脅迫と暴行と強姦未遂ですか?
あと、ついでに今日の件で私に対する名誉毀損も含まれますわね。」
「ルリアナ、お前には聞いていない!
でしゃばってくるな、たかが伯爵令嬢の分際で!」
「へー、そうですか、たかがとおっしゃるのですね、伯爵令嬢のこと。
どのご令嬢なら、たかがにならないのか、教えていただいてもよろしいです
かー?」
「そ、それは…」
「言えないんですかー?
まあ、よろしいですけれど。
では、文通を始めた後からの映像を貴方のお父様にご覧になってもらっていまし
たので、ご意見をお聞きしましょうねー
ご覧になっていますか、王様。
我が伯爵家の影が撮影いたしました。
王様なら、その情報の確実さ、わかっていただけることと存じます。」
「あー、うん、そうだな、アーノルド、そなたは廃嫡だ。
代わりに、第2王子を皇太子とする。」
「なっ、父上、こいつのことを信じるのですか!?」
「お、お前、言うに事欠いて、ルリアナ嬢をこいつ呼ばわりとは、どういう了見
だ!ルリアナ嬢の生家であるマルティン伯爵家は、警備団のトップだぞ!?」
「ですから、捏造など…」
「するわけないだろうが、馬鹿者!
すまないなルリアナ嬢。
こいつは、幽閉するから、許してやってくれないか?」
「幽閉で許すわけがございませんわ。
普通に裁判にかけましょう。
ウェルス様の被害届と証拠である映像も警備団に提出しております。
あとは流れに沿うだけでございます。」
「なっ、俺は皇太子だぞ、なぜ裁判になど…」
「これだけ申し上げてもおわかりにならないのですか?
よろしいですか?
貴方はウェルス様から脅迫・暴行・強姦未遂で被害届を提出されています。
あと、私の名誉毀損も後で提出いたしますので、どうぞよしなに。」
「だから、なぜ被害届が提出されるのだ!
俺は、何をやっても許されるはずではないのか!」
「そのような時代はとうに過ぎましてよ。
今は、どれ程偉かろうが、どんな人の子どもであろうが、裁かれる時代です。
もちろん、私も例外ではございません。
身分で罪が軽くなる時代は、身分で泣き寝入りをしなければならない時代は、
もう終わったのです。」
「そ、そんな…」
「それでは、どうぞ警備員の方々、よろしくお願いいたしますね?
私は退席させていただきますわ。
最後に、めでたい席でこのようなことになってしまったこと、心からお詫び
申し上げます。」
その後の話になりますが、とりあえず殿下は有罪になったようです。
どうやら懲役刑になったようですが、脱獄を試みたそうで、再度裁判にかけられるそうです。
テレサについては、両親に溺愛されるようになりました。
まあ、今までも溺愛されてはいたのですが、今回のことで更に。
私は、婚約破棄となりました。
今回のことは隣国にも伝わりましたので、あの女は法律に従わない人ならば、どんな人でも裁くやばい奴だという認識が広まったそうです。
良い法律は、何よりも守られるべきなのに。
まあ、そうではないものは改良すべきですが。
そんなこんなで、今日も私は警備団で働いております。