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45 招待



 朝食を食べ終えて、リテと話をしていると外が騒がしくなった。


「何事でしょうか?」

 そう言って、窓の外を見たリテは顔をしかめた。


「どうしましたか?」

「・・・外に馬車が止まっています。おそらく、ここの領主のものでしょう。」

「領主って・・・」

 いいうわさを聞かないという領主のことだろう。そして、この宿を訪れるということは、私たちが目的なのは明白だ。


「すぐに発つべきでしたね。・・・僕が対応しましょう。おそらく屋敷に呼ばれるのでしょうが、サオリさんは病み上がりだと言って欠席できるようにします。」

「よろしくお願いします。」

「はい。」

 部屋を出ていくリテを見送って、私はベッドに寝転がった。


「いいうわさを聞かないってことは、悪いうわさを聞くってことだよね。もし、そんな領主の屋敷に行ったら・・・」

 クリュエルでの日々を思い出し、心がすっと冷え切った。


「次は耐えたりしない。」

 もう、自分の力は知っているから、その力を使って後悔させるだけだ。いや、絶望させて殺すだけだ。




 少ししてリテが帰ってきたが、その顔は悔しそうでうまくいかなかったことが分かった。


「すみません、サオリさんが屋敷に行くことになってしまいました。それだけではなく、あなた一人で行くことに。」

「どういうこと?」

「下に行ってみると、やはりここの領主の使者が来ていまして、プティさんが相手をしていました。それで、勝手に。」

「嫌がらせですよね、それ。」

「プティさんも領主の屋敷に御呼ばれなどされたくないようで、サオリさんを強く推したようです。まったく、勝手なことを・・・」

「受けないことはできなかったんですか?」

「サオリさんを病欠、他のメンバー全員出席ならできたと思いますが、サオリさんがもう大丈夫であることをプティさんに伝えられてしまい、もうどうしようもできませんでした。」

「・・・それは仕方がないとして、どうして私一人なの?」

「それはあちらの意向で。本当はプティさんも含めて2人と護衛1人を予定していたらしいですが、勇者だけなら一人でいいだろうと勝手に決められました。すみません。」

 勝手が過ぎるだろうと、王女の顔を思いっきりぶん殴りたいと思ったが、ただでさえ険悪な仲間内の関係をさらに悪くすることは控えるべきだ。


「わかりました。格好はいつもの格好でいいですか?」

「はい。・・・私もついていきましょう。」

「大丈夫です。」

 向こうの意向に沿わないと、気分を害するだろうと思い断った。本当は誰かいてくれるほうが安心だが、いいうわさを聞かない人物なら何をされるかわからない。一人のほうが動きやすいだろう。


「今日は、プティやマルトーと親睦を深めてください。ちょっと、仲間としてこの空気は命とりだと思うので、歩み寄ったほうがいいと思います。」

「それは、プティさんに問題があるからで、我々のせいではないでしょう。」

「そうですね、私のことを目の敵にしている彼女には問題があります。ですが、これから魔王を倒すというのに、このありさまでは・・・ただ死にに行くようなものです。」

「・・・そうですね。」

 もとからそのつもりであるリテからすれば、仲間との関係などどうでもいいのだろう。私、アルク、ルトとの関係で十分と考えているようだ。


「私は・・・死ぬつもりなんてありません。」

「サオリさん。そうですね、必ず生きて帰りましょう。」

 全く期待をしていない目で、嘘の笑いを浮かべるリテを見るのは嫌だ。


「しばらく一人になりたいです。」

「わかりました。私は扉の外で待機しています。」

「リテさんも休んでください。少し疲れが出ているように見えます。」

「ありがとうございます。ですが、僕は大丈夫なので。いつでも声をかけてください。」

 そう言って、出ていくリテ。扉が閉まるのを見て、私は再び寝転がる。


 目をつぶって、浮かび上がった顔はゼール。胡散臭い笑いを浮かべて、彼の口が動き出す。


 いつでも私をお使いください。


 悪魔のささやきを発して、その手をプティとマルトーに向ける。

 私は頭を振って、目を開けた。そこには、天井があるだけ。


「煩わしいけど、私が手を汚すことでも、彼に頼むほどのことでもない。一応仲間だし、もう少し仲良くなれるように・・・しなくてもいいか。はー。まだ時間はあるし、寝ようかな。」

 目を閉じてしまえば、たくさん寝たはずなのにもう眠気が襲ってきた。




 次に目が覚めたのは、夕方。リテに起こされて、私は簡単に支度をして屋敷へと向かうことになった。そういえば、領主について何も聞いていない。領主の名前すら知らないな。


 道しるべの魔法だと、プティに出してもらった白い光を追いかける。これなら道に迷う心配はない。便利な魔法なので、ぜひこれは覚えたいなと思っていたら、白い光が消えた。


「お待ちしておりました。」

 大きな門の隣で、小さな男が優雅に頭を下げた。男は執事だろうか?そんな感じの服を着ている。


「サオリ様、ようこそお越しくださいました。私はこの屋敷で執事長を務めるミニーゾ。ご案内させていただきます。」

「よろしく。」

 少し迷ったが、変にかしこまるのはやめることにして、普通に執事についていくことにした。大きな門が開くのを少しわくわくした気持ちで見て、広い庭が一面芝生で寂しいのに驚いた。広さの無駄遣いだな。


 まっすぐ食堂へと案内されて、よくわからないまま、言われるがままに、引かれた椅子に座った。




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