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31 メンバー紹介




 遂に出発の時が来た。

 プティとマルトーにろくに挨拶ができないまま、私たちは荷馬車に乗り込んだ。御者はアルクが務めるようだ。


 大きな荷馬車だが、大人5人と6人分の荷物を乗せれば狭く感じる。

 荷馬車の中には、本来4人入って、後の2人は御者台にいる予定なのだが、今回は顔合わせのためにこのような状況になっていた。

 お互いの顔が見えるように向かい合って、座る。私は御者台側にいるので、後ろにはアルクがいるが、もちろん彼の体は進行方向に向いている。

 私から見て、左側にリテ、右隣にルトがいる。正面にはマルトーがいて、右側にプティがいた。


「これから長い旅を共にする仲です。お互いのことを知ることは、お互いの命を守ることにもつながる大事なことですので、狭い場所ですがここで行いたいと思います。」

 司会役を買って出たらしいリテに、マルトーが最初に発言した。


「お前に言っても仕方がねーと思うが、なぜ城でやらなかったんだ?この辺りは魔物が出にくいとはいえ、出にくいだけだ。安全ではない。」

「城ではどこに耳があるかわかりませんから。みなさん、自分の手の内はなるべく知られたくないでしょう?」

「なるほど。」

 マルトーは納得したように頷いたが、プティは鼻で笑った。

 プティは、昨日と違ってフードをかぶっておらず、金髪青目の美少女だということがわかった。


「だからといって、ここで暴露するわけないでしょう?すべてをさらけ出せるほど、あなたたちを信頼していないわ。」

「それもそうですね。では、話せるところまでで結構ですので、自分が何をできるのか。例えば、扱う武器の得手不得手、得意な魔法、能力など教えていただけますか?」

「・・・私は最後にするわ。どうぞ、皆さんお先にさらけ出してくださいな。」

 そう言われて、先に話し出したのはマルトーだった。


「とりあえず、自己紹介をしておこう。おいらはマルトー。見ての通り大剣使いだ。魔法は自分に施すばかりで、魔力量も少ないので期待しないでくれ。そうだな、能力はあるともないとも、今は言わないでおく。あと、これだけは言っておくが、おいらはややこしいことは嫌いだ。何事も単純明快が一番、あやふやなのもはっきりさせたいと思っている。以上だ。」

 腕を組みながら、マルトーが次は誰だと言って、それにリテが答えた。


「では、僕が。勇者サオリ様の騎士、ヴェリテ。武器は主に剣を使いますが、他には槍も使いますね。魔法の腕には自信がありますが、本職には負ける程度です。僕も、能力については、何も語りません。では、次はルト。」

 自分の紹介を終えたリテは、ルトを指名した。ルトが終われば、私とアルク、プティだけなので、御者を務めるアルクと最後に話すことを宣言したプティとなれば、次は私だ。

 何を話そうか。


「はい。サオリ様の奴隷をやっています、オオカミの獣人ルトです。」

「オオカミか。ずいぶん可愛い肉食獣だ。ガハハハッ。」

 笑うマルトーに困ったように微笑むルト。


「よく言われます。それで、武器は剣を使っています。魔法も、今リテさんにならっている最中で、簡単な魔法なら使えます。僕はサオリ様の所有物ですので、そこは忘れないでくださいね。以上です。」

「調教済みってわけね。勇者の名が泣くわね。」

「あー・・・そうですか。では、次は私の番ですね。」

 プティに何と答えればいいかわからず、テキトーに答えてしまった。どうやら彼女は気分を悪くしたようだ。こちらを睨みつけている。


「えーと。勇者のサオリです。召喚されたので、この世界にこととかよくわかりませんし、私の国は平和でしたので、戦うことについてもできません。武器は、一応剣を持っていますが、使ったことはないです。」

 そう、私の腰には、剣がぶら下がっていた。重さをあまり感じない魔法がかかっているらしく、動くのに支障はない。たまに、存在を忘れるという危険がある。


「能力は、移動魔法というもので、私が見える範囲ならどこへでも瞬間移動できます。・・・以上です。」

「以上ですって?」

「サオリと言ったか。」

「はい。」

 プティとマルトーが私を睨みつける。プティの場合慣れっこだが、マルトーには初めて睨みつけられた。予想はしていたが、ちょっと顔が怖いんだけど。


「お前、何をしに行く?」

「・・・私たちの目的は、魔王討伐と聞いています。」

「そういうことじゃない。お前は、何をするのだと聞いている。」

「考えはしましたが、やはり移動魔法を使っての支援をするくらいかと。」

「それだけか。」

「・・・他にできそうなことはありますか?」

「ないな。わかった。あーそうだ。おいらのことは呼び捨てで呼んでくれ。それと、丁寧に話されるのは好かん。何言ってるかわからんしな。」

 なんとなくそんな感じはした。


「私も、マルトーと同じよ。様付けとかいらないから。あと、へたくそな敬語もね。」

 鼻で笑うプティの視線は、私に向けられていた。

 私は敬語を使えない現代人なので、敬語を使った覚えはない。残念だったな。


「それでは、プティ様。あなた様の番ですよ。」

「嫌がらせかしら。あと、私の番ではないわよ。だって、まだあっちの騎士を紹介してもらっていないわ。」

 プティの言葉に、アルクが答えた。


「サオリの騎士、アルク。剣を使って戦うが、魔法もある程度なら使える。はい、終わり。」

「なんだ、もう終わりか。」

「ちょっと、出し惜しみしすぎじゃないかしら?」

「まぁ、アルクは今忙しいので。それで、アルクの隣には誰が行きますか?」

「あ、なら私が行きます。」

「待ちなさいよ!まだ私の番が来てないわ!」

 私はアルクの隣に立候補したら、プティがそんなことを言った。忘れてたわ。


「そうでしたね。では、どうぞプティ様。」

「・・・感じ悪すぎではありません?騎士のしつけがなっていませんね。」

「しつけてないから。」

「なら、ちゃんとしつけておきなさい。」

 見下すように見られて、私の中のプティの好感度は駄々さがりだ。ま、最初からマイナスだったけど。


「プティよ。私の身分はわかっているとは思うけど、今回は伏せて旅に出ているの。だから、忘れて頂戴。」

「大丈夫ですよ。忘れていましたから。」

「本当に感じが悪いわね。それで、見ての通り、私は魔法を扱うのが得意よ。魔力量も膨大で、魔法についての知識を詰め込んでもいるから、使える魔法は多岐にわたるわ。」

 魔法についての知識は、ぜひ披露してもらいたいものだ。煽ればいけるかな?


「武器も一応扱えるわ。杖で戦うこともあるし、レイピアを使うこともある。能力は・・・言うつもりはなかったのだけれど。」

 ちらりと私を見て、続きを話すプティ。


「バーサーカーという能力を持っているわ。ま、どのような能力かは、ご想像にお任せってところね。以上よ。」

 なんか、ものすごい名前の能力を持っている。あれ、この人王女だったよね?もっと、ロイヤルとか名前につくような能力だと思っていたのに。




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