24 好きな色
朝。朝食を部屋に運んでもらい食べていると、ノックをしてアルクとルトが入ってきた。ちなみに、リテは私の後ろに既に控えていた。
奴隷なので、私の部屋で暮らすのかと思っていたルトだが、2人に反対された。年頃の男女がどうのこうのと。2人と寝所を共にしたことがあるはずだけど?とはツッコまなかったが、納得がいかない。
しかし、奴隷のために部屋を用意するというのもどうかという話なので、とりあえずアルクの部屋で寝泊まりすることになった。
「おはよう、サオリ。」
「お、おはようございます、サオリ様。」
「おはよう。2人はもう朝食は済ませてきた?」
「あぁ。ついでにルトと、朝のメニューをこなしてきたぜ。」
朝のメニューとは、基礎体力作りのことだろう。勝手なことはしないで欲しい。もしもルトの実力が知れれば、私が倒した魔物をルトが倒したことにできなくなる。
「ルト、体は辛くない?」
「え?いいえ。」
「心配しなくたって、朝のメニューは初心者向けだぜ?」
「本当?」
「あぁ。ま、問題なくこなしていたし、余裕がありそうだったからレベルは上げるけどな。」
「ま、ほどほどにね。」
「いいえ。彼のためにもぎりぎりを責めるべきでしょう。」
異を唱えたリテを見て顔をしかめるが、リテ自身も仕方なく言っているようだった。
「弱くて命を落としてしまっては、彼のためになりません。少しでも強くしてあげるのも優しさですよ。」
「・・・うん。」
ルトの強さは、ある程度知れているようだ。これは、言い訳を考えるのに頭をひねる必要がありそうだ。
ま、実力が知れてしまっているのなら、強くなってもらうに越したことはない。
「アルク、よろしくね。」
「あぁ。なら明日からはビシバシ行くぜ。」
「・・・それなら、緩やかにレベルを上げるためにも、今から訓練してもらった方がいいよね。朝の時間だけでは足りないだろうし。」
「それはそうですが。それだと傍にいるのが私一人になってしまいますよ?」
それの何がいけないのだろうか。ま、リテ一人だと問題というなら、私が訓練を傍で見ていればいいだろう。
「訓練って、どこでやるの?」
「中庭の一角です。」
「なら、今日はそこに行くよ。それならいいですよね?」
「はい。それと、今日は服屋を呼んでいますので、お忘れなく。」
「そうだった!どんな服が似合うかな。ルトは、どんな服が好き?好きな色とかある?」
ルトの服選びをすることを思えば、自然と鼻歌を歌いそうになった。
「え、えーと。動きやすい服がいいです。色は・・・水色とか赤がいいですね。」
私の方をまじまじと見て言ったので、私の色を選んだのは故意だろう。本当にその色が好きならいいが、媚を売るためなら可哀そうに思えてくる。
「・・・ルトの髪色なら、黒もいいね。肌も白いし・・・服も白だったら、神々しいな。」
私にそういうセンスはないけど。ルトの好きな色で似合う服が見つかるといいな。動きやすさ重視だと装飾はない方がいいだろうし、結構シンプルな服になりそうだ。
「あの、サオリ様は赤がお好きなのですか?」
「・・・あぁ、これね。」
コートの赤を指さし、苦笑した。
なぜ、赤のコートなのか。私は別に赤が好きなわけではない。どちらかといえば派手な色は嫌いで、暖色系より寒色系の色が好きだ。でも、コートを赤にしたのは、目が赤色なのと、血が目立たないようにだ。
本当は、赤より黒の方が良かったのだが、デザイナーに流石に寂しいと言われ、赤にしただけ。
「嫌いではないよ。」
「そう・・・ですか。でも、赤はとてもお似合いですよ。」
「ありがとう。」
「いいえ。」
「へー。別に赤が好きなわけじゃなかったのか。」
「でも、素敵な色でいいと思いますよ。サオリさんの瞳と同じ色ですし。ルビーのような瞳、僕は好きですよ。」
「ありがとうございます。ちょっと照れますね。」
「朝から口説くなよ、リテ。」
「言ったもん勝ちですからね。それよりも、早く食べてしまわないと、冷めてしまいますよ。」
「本当ですね。ちょっと待ってね、すぐ食べ終わるから。」
「のどに詰まらせるなよ。」
「あ、えっと、ごゆっくり。」
食事を終えて、中庭の一角でアルクとルトが素振りをしているのをひたすら眺めていた。
私は日陰でのんびりと見ている中、彼らは直射日光のあたる場所で、流れる汗を輝かせながら、剣を振るっていた。
「模擬戦をひたすらやるのかと思っていました。」
「そちらの方が見ている側も楽しいでしょうが、こういう地道なことも大切なんですよ。」
「そうですよね。」
私は、戦闘能力というものがあるので、こういう地道なものとは無縁だ。
「そういえば、魔王討伐隊のメンバーが決まりましたよ。」
「メンバー・・・そっか、私たち以外にもいるんですね。」
「はい。流石に3人・・・4人ではきついですからね。あと2人を加えることになっています。なので、6名での討伐になります。」
「少ないですね。人類の敵を倒すというのに、そのメンバーが6人ですか。」
「弱いものを連れて行っても、足手まといでしょうからね。残りの2人は、戦士と魔術師でかなりの戦力になる方たちです。」
「戦士ですか。騎士ではないのですよね?」
「はい。城に仕えているのではなく、外から雇いましたので。」
外から雇った?よくそれで引き受けてくれたものだ。私なら絶対断る自信がある。
「戦士の方は男ですが、魔術師の方は女性です。サオリさん一人だと心細かったでしょうから、良かったですね。」
「そうですね。」
同じ女性がいるのは嬉しいが、四六時中一緒にいるタイプだと面倒だ。私には隠してやりたいことがたくさんあるから、ほどほどの付き合いができればいいかな。
「その魔法使いはどんな人なんですか?」
「・・・気の強い方ですね。あと、良くも悪くもお嬢様です。」
「・・・面倒そうですね。」
「旅の重大さなどはわかっていると思うので、問題は起こさないと思います。分別はある方なので、大丈夫でしょう。」
「ま、会ってみないとわからないし、今心配することでもないですね。」
「はい。それに、僕たちもいるので、心配など不要ですよ。困ったことがあればいつでも相談してください。」
「その時は、よろしくお願いします。」
メンバーが決まったということは、出発に日が近いだろうと察せられた。
正直憂鬱だが、魔王さえ倒してしまえば、後は平和な日常があるのみだ。それを目指して、今はただ頑張ろう。




