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21 奴隷



「あなたの秘密、すべて私に打ち明けてみませんか?」

 こちらを見上げて、優しい声色でそう言われれば、動揺するのは当たり前だ。なんなんだこれは。


「け、結構です。」

「私、口は堅いですよ?」

「いや・・・その。」

 いくら口が堅かろうが、クリュエル城の惨状を聞けば、引かれるだろうし、怖がられるだろう。話す気は毛頭ない。


「私にその価値はありませんか?」

「いえ、価値とかではなく・・・その、出会って1時間も経ってない相手に、すべてをさらけ出せますか?」

「・・・なるほど。」

 彼は立ち上がる。納得してくれたようで良かったが、手はなぜか放してくれなかった。


「私は、3年前に父を亡くしまして、それでこの商会の主をやっています。」

「は、はぁ。」

 急に何を言い出すのだろう。


「付き合っている女性も、気になる女性もいませんね。あ、でも今はあなたに興味があります。趣味という趣味はありませんが、たいていのことは何でもできるので、パートナーとは同じ趣味を共有したいと思っています。」

「いや、あの・・・ゼールさん。」

「はい、何でしょうか?」

 平然と返された。これは、私がおかしいのだろうか?


「なぜ、急にそんなことを?」

「私はあなたに秘密を・・・私はすべてをさらけ出してもいいと思ったので。」

「はい?」

「私は特に秘密という秘密、隠したいと思うことはあなたにはないのですよ。ですから、とりあえず思いついたことを話しています。」

「はい?」

「人は、その人のことを知ることで、その人のことを信頼できるのです。つまり、私が私のことを包み隠さず話すことで、あなたの信頼を勝ちとろうかと。」

「・・・そうですか。」

 全く理解できないが、とりあえず相手を否定することはしなかった。それにしても、胡散臭い男だと思っていたが、今はどうだろう。ただの馬鹿に見える。


「馬鹿ではありませんよ。」

「え。」

「これでも商会をまとめていますから、馬鹿では困ります。」

「それはそうですね。すみません。」

 この人怖い。何が怖いかといえば、心を読むみたいに人の考えているところを見通すところだ。そういう能力を持っているのだろうか?


「・・・私ではだめのようですね。でも、諦めませんよ、サオリ様。」

「えっと・・・諦めてください。」

「なら、私を失望させてください。それでは、ご案内しますね。」

 失望か。そもそも、私のどこを気に入ったのかわからない。それがわからなければどうしようもないだろう。

 私は諦めて放っておくことにした。


 通された部屋は、質素だが清潔な部屋で、イメージと違った。不清潔な場所で檻に入れられた奴隷を見回るのかと思っていたが、違うようだ。


「こちらをご覧ください。」

 そう言って、彼は机に一冊の本を広げた。しかし、字の読めない私は何が書いてあるかわからない。


「あの、私字が読めないんですけど。」

「あぁ・・・申し訳ございません。それでは、こちらで適当に見繕って連れてきましょう。」

 どうやら奴隷のプロフィールだったようだ。しっかり見たかったが、字が読めなければ仕方がない。



 そして、部屋に通された奴隷は5人。


「獣人4とエルフ1です。とりあえず、ひとりひとり紹介して行きましょう。」

 彼がまず紹介したのは、こわもてムキムキの獣人だ。ちょっとこれは怖いな。


「クマの獣人ですね。見て分かる通り力持ちですし、剣の扱いにも心得があります。ただ、身の回りの世話などには向かないでしょう。」

「それはそうでしょうね。」

 こんなムキムキのこわもてが紅茶を入れてくれたら、2度見する自信がある。

 次に紹介されたのは、細いがしっかりと筋肉の付いた獣人だ。


「ウサギの獣人ですね。力は他の獣人に比べると劣りますが、剣の扱いにたけており、身のこなしも軽く、戦闘に向いています。容姿も優れておりますので、どこへ連れて歩いても恥ずかしくないでしょう。」

「確かに。」

 イケメンの部類に入る。自分の好みで言えば、先ほどの獣人と比べたらこちらを選ぶだろう。ただ、目立ちそうだ。というか、ウサギ耳にどうしても視線がいく。イケメンのうさ耳って。

 次に紹介されたのは、少年の面影の残る獣人。


「オオカミの獣人ですね。力はまだ発展途上ですが、ウサギの獣人を超えるでしょう。武器の扱いは、見習い程度です。即戦力をお求めならあまりお勧めしませんが。」

「オオカミ・・・」

 とても狼には見えない。犬か狐かと思った。かっこいいというよりは、可愛らしいのだ。

 次に紹介されたのは、腹筋が割れている女性の獣人。


「カバの獣人ですね。」

「カバっ!?」

「はい。いかがなさいましたか?」

「いや、なんでも。・・・ごめん、続けてください。」

 クマやウサギ、オオカミはわかるが、カバの獣人なんて聞いたこともない。カバの獣人の能力って、どんなものなのか興味があるな。


「泳ぎが得意ですが、陸地での動きは遅いですね。力は強く、剣の扱いにもたけています。女性の方が色々と相談はしやすいかと思ってご用意しました。ただ、人間と同じで獣人も力は男性の方が強く、戦闘向きの女性獣人でご用意できるのはこれ一つとなっています。」

「そうですか。それにしても・・・カバの獣人というのは、珍しくないのですか?」

「そうですね、獣人自体種類が豊富で・・・特別カバが珍しいと思うことはありませんね。」

「・・・後で獣人の種類について教えていただけますか?」

「もちろんです。」

 なぜか嬉しそうにするゼール。まさか、彼は獣人マニアで、話し出したら止まらないという系の人だったらどうしよう。何とか逃げるしかないな。

 次に紹介されたのは、エルフの男だった。先ほどの獣人以外は男だな、戦闘向けだから仕方がないのかもしれないけど。


「エルフですね。魔法の扱いにたけています。エルフは容姿が整ったものが多く、人気の奴隷ですが、気難しいところがあります。ま、奴隷ですので、関係はありませんが。」

 その言葉にピクリと表情を動かすエルフだったが、何も言わず無表情に戻った。


「いかがでしょうか?一通り説明いたしましたが、気になるものはありましたか?」

「そうですね。」


 一番気になったのは、やはりウサギ耳のイケメンだろうか。主に、うさ耳が気になったのだが。あとは、魔法が使えるというエルフ。様々な魔法を扱う仲間がいれば頼もしいと感じるし、魔法を見たいという興味もある。だが、それは目的と逸脱している。


 私の目的は、自分の能力を知り、その扱いにたけること。そのために、魔物で試し切り・・・って、剣を使うわけではないけど、そういうことをしたいわけだ。人知れずに。

 そのためには、2人の騎士と別行動をとる必要があり、傍から見て代わりの護衛としての役割が期待できる人材が望ましい。そして、私が倒した魔物を奴隷が倒したことにするため、剣が扱えるのは必須だ。


「ところで、エルフは剣の扱いは?魔法の扱いにたけると聞きましたが、武器はどうですか?」

「このエルフは、魔法特化ですので、武器の扱いは期待しない方がよろしいかと。ま、練習させればできないことはないと思いますが。」

「・・・そうですか。」

 そこまでする必要はないだろう。そう思い、獣人の中から選ぶことにする。


「私の護衛としておくなら、獣人の中ではどれが最適でしょうか?」

「そうですね。場所にもよりますが、旅に出るのでしたらクマ、貴族関係で連れ歩くのならウサギかカバがよろしいかと。」

「強そうですもんね、クマ。」

「はい。ま、あの騎士2人がいるのなら、クマかカバをお勧めします。あの2人に隠したいことは、別に貴族関係ではないのでしょう?」

「・・・まぁ。」

「でしょうね。この世界に来て、すぐにその方面で攻めることはないと思っていたので。なら、クマでしょうか。」

「そうですね。」

 クマの顔を見上げる。怖い。


「気が進まないようですね。」

「まぁ。ちょっと想像つかなくて。私がこのクマを連れ歩く姿が。」

「そうですね。遠目から見れば人さらいのようです。」

 あぁ、確かに。そう思ったとき、気づいた。クマの獣人が震えていることに。


「え?」

「いかがいたしました?」

「いや・・・その、寒いのかなと。」

 クマの獣人を見て言えば、彼は眉をひそめてクマの獣人に問い詰めた。


「寒いのですか?」

「いいえ。」

 大きな体に似合わず、小さな声でその獣人は答える。すると、よく見ればウサギの獣人も震えていることに気づいた。


 なんだろう?




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