6
黙って見て待ってたら、馬車が来るのが分かる。
「馬車だ……」
(馬車?)
「うん、馬が荷台とか引いてるやつの事を馬車って言うのよ。人が一人だけみたい。」
(おかあさんはもの知りだね!花、ぜんぜんわかんなかった!)
「お母さん、花ちゃんより長生きしてるからね。花ちゃんよりはもの知りだよ。」
馬車がどんどん近付いて来て、私と花ちゃんの手前で止まった。ぱっと見純朴そうな若い男だけど、どうかな?
「あんた達どうした?」
「気が付いたら山の中だったのよ。彷徨って道に出て来たのは良かったんだけど、どっちに行けば良いのか分からなくて立ってたの。とにかく人のいる所に行きたいのだけど。」
ちょっとの嘘を織り交ぜて本当の事を話す。男はボリボリと頭を搔くと、う~ん……と唸るとジロジロと私と花ちゃんを見て頷いた。
「うん、悪い人には見えねぇ!この先に俺の村があるんだ、気が付いたら山の中ってのは何か事情があんだろ。荷台に乗んな!その犬もフェンリルみてぇだけど、大きさが全然違うしな!犬は乗っけても良いよ!」
「ありがとうございます!花ちゃん、乗る?」
(走ってく!)
「分かった、じゃあ疲れたら乗るんだよ。」
(分かった!)
「じゃあ、お邪魔します。」
イソイソと荷台に乗り上がり座る。
「じゃあ、動かすよ!この辺りはゴブリンも出るから危ねぇんだ!」
ゴブリン……緑のゴキブリね……男がチラッと私を見たから、私も男を見て頷いた。ピシリと音がすると馬車が動き出し軽快に走り出す。
半透明の地図は便利だけど、ずっと出てるの邪魔くさい。そう思ったらススス……と小さくなって視界の端っこに行きました。
地図見たいなぁ……思った瞬間、ススス……と真ん中に来たらポンって大きくなりました。
地図の中、端っこに緑のゴキブリのマーク?最初に見たマークが端っこに動いてました。馬車の方が早いのでどんどん置いていきます。
時々小さなマークが出てきます、何だろうな?と思ったら花ちゃんがパッと走って茂みに入ったかと思ったら何か豆柴サイズの兎……耳が長いから兎よね?を荷台の端に乗っけてから付いてきます。
「優秀な犬だなぁ!そいつは中々獲れねぇ兎だ!肉は美いし毛皮も上等だ!村に着いたら売れば良い金になるぞ!」
「花ちゃん、売るとお金になるんだって!」
(じゃあ、花もっととってくる!)
そう言うと走って行ってしまいました。
「どうした?」
「兎を見つけたから獲ってくるみたいですよ。」
「すげぇな!優秀だぁ!」
馬車の速度は変わらず花ちゃんだけがあっちこっちを駆けずり回って荷台に兎を乗せていく。
十羽も獲れば上等でしょう。
「花ちゃん!」
(もう、おわり?)
「うん。」
(分かった!)
地図に映る集落っぽいものが見えてきた。木々も途切れ草原が見える。その草原の中木の柵が見える。あの木の柵の中が村だと分かる。
「村が見えてきたぞ!」
男の嬉しそうな声に私も嬉しくなる。地図は小さくなってね。思うだけで小さくなって移動しました。