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あーーーーれーーーー!

落とされたーーーー!

落ちたら死んじゃうじゃーん!バカーー!


見えるのは空と雲。と巨大な犬?犬だよね?


「花ちゃん……?」


(おかあーさーん!)


「花ちゃーん!」


空中を犬かきみたいにバタバタとしながら近寄った巨大な体に手を伸ばす。指先にフンワリと当たるモフモフの毛……花ちゃんは器用に前足で私を引き寄せてクルンと背中に乗せてしまう。私は花ちゃんの大きな体にしがみついた。花ちゃんの体は銀色の長い毛で覆われていて温かくてフワフワのモフモフで、トクトクと聞こえる花ちゃんの心臓の音に安心する。


(おかあさん!もうすぐ地面だよ!)


「え?」


ぶつかる?ぶつかっちゃうの?冗談でしょ?


「花ちゃんっ!」


ギュッと目を瞑って花ちゃんに目一杯しがみつく。だってお父さん、居ないんだもの。今の私には花ちゃんだけだもの。


(おかあさん、ついたよ!)


…………衝撃は無かった。おそるおそる目を開けると明るい森?林?それとも山の中?良く手入れされた里山みたいな場所。

ズルリと花ちゃんの背中から降りてみる。


「ありがとね、花ちゃん。でも、ここどこかしら?」


(あのね、沢山の木が生えてる所なの!でもね、おかあさん。いつも見る木と違うの……)


ん?いつも見る木と違う?いや、何にも変わらないと思うけど……


(おかあさんも違う人みたい。目がチカチカするの。)


違う人?鏡は無いから確認のしようが無いけど、手とか見る限り真っ白でスベスベっぽい。爪なんかもピンク色でツヤツヤしてる。日焼けしてカサカサして皺とシミの出始めた手とは違う……雑誌で見るモデルさんの手みたいにキレイな手……いやいや、そこじゃない!チカチカ?なんでチカチカなのかしら?


(ねぇ、おかあさん。ずっと見えてた物と形は一緒なのになんでこんなにチカチカしてるの?)


あ!そうだ。何かで聞いたような気がする!たしか犬って色が分からないって。白黒の世界だって!じゃあ、チカチカって色が分かるようになった?


「花ちゃん。あのね、多分それは色なのよ。」


(色?)


「うん。世界には色んな色があるの。花ちゃんの毛の色は銀色。木の上の方は緑で下は茶色。」


花ちゃんは前足をしげしげと見て小さく(銀色……)と呟いてから尻尾をブンブン振った。


(緑!茶色!おかあさん!色のこと教えてね!スゴイね!沢山の色!)


尻尾から受ける風圧が結構痛いです。


「花ちゃん……尻尾から風出て痛いのよ。花ちゃんは大きいから、お母さん困っちゃう。」


キューンと鳴いてお座りをすると首をグイーンと傾げる。尻尾もペタリと地面に垂れている。


(おかあさん。あのね、花小っちゃくなれるみたい。)


「あら?そうなの。じゃあ小さくなれる?」


(うん。やってみる。)


ジワジワと小さくなっていく花ちゃん。ボックスカーよりも大きかった花ちゃんの体が見慣れた大きさになった頃。


(おかあさん!いつも見るおかあさんになった!)


「うん。いつも見る花ちゃんと同じ大きさだよ。花ちゃんはキレイになったしツヤツヤのモフモフでお母さん嬉しいなぁ!」


パッ!と立ち上がり尻尾をブンブン振って全身で喜びを表す花ちゃんに笑顔になってしまう。


(ほんと?おかあさん嬉しい?おかあさん嬉しいと花も嬉しい!)


「嬉しいよ!花ちゃんが嬉しいとお母さんも嬉しいなぁ!」


バッ!と近寄り跪いて花ちゃんをギュッと抱き締め、グリグリと頬を花ちゃんの横顔に擦り付ける。花ちゃんからもグリグリと頬ずりされる。

良かった……花ちゃんが一緒で。一人ぼっちだったら新しい人生なんて全然楽しめない。

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