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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

(自称)清楚系少女の遊歩

作者: haruki

「チェンジでお願いします」

「必要要項は?」

「巨乳ならなんでもいいよ。男ならショタになってくれれば話を聞く」

「……だ、そうですが。巨乳になるか女を捨てるか、どっちにしますか?」

 二人の可憐な少女(事実だから、事実だから!)は問い詰めていた。自分は偉い人ですという事を前面に押し出したファッションをしている人間に対し、清楚系少女Aはホストクラブよろしく交換を注文した。呆れる少女Bであったが、一体どういう事だと偉い人に視線を向ける。

「あたしなりに話を纏めると……」

「脂肪を溜め込めなかった人に危ない勧誘をされてる」

「悪意はあるけど概ねそんな感じ。お、このお茶結構おいしい」

「和菓子と組み合わせるべき品だね、という事で和菓子か擬人化少女を出せ」

「んな無茶な……」

 和菓子はいいとして、擬人化少女を出されてもどうしろって言うんだ。文字通り、食べるのか。そりゃあ繊細で美と味を備えた品ではあるが、出されても困るな。

「うん、つまり……世界征服? をしてくればいいんだよね」

「話一切聞いてなかったあたしが言うのもなんだけど、頭の螺子を何処に置いてきたの」

「母体……かな」

「今すぐ生まれなおしてきて。それか合わなくてもいいから回収してきて」

「そんな……私がこれ以上完璧な清楚美少女になったら、世界が傾くよ」

「自分に自信がありすぎる……。事情とかもっと聞いておく?」

「いや、私清楚だから。清楚、変態殴る」

「……普段なら止めるんだけど、あたしもよくわかんないからなぁ……」

 自己紹介とかするべき? でも、友人が殴った他人に声を掛けるのも。個人情報を渡すのも気が引けるし。

「なんかよくわかんないけど、世界を救えば元の世界に戻れるらしいよ」

「意味が分からないんだけど」

「私じゃなくて、不審者兼変態兼犯罪者予備軍から聞いた事だから私に聞かれても……」

「それもそっか、じゃあ行くしかないか。期間限定プリン冷蔵庫にあるし」

「美味しかったよ、あれ」

「……あたしの家に不法侵入した?」

「権利を持ってる人間に訴訟されなければ犯罪にならないんだよ?」

「良心の呵責を感じろ」


「ついた! 何処だここ! 迷子だな~」

「こら、道行く人のスカートを捲ろうとするのをやめろ。本当すみません、この子ちょっと頭がおかしくて。外に出て興奮してるだけなんです、何時もは……これより酷いですけど……」

「フォローになってないよ……ゆいちゃん?」

「何で名前を疑問形で読んだの? まさか覚えてなかったの?」

「そんな事ないよ、度忘れしてたっていうか。念のため確認しておこうかなって思って……」

「……ひまり、申し訳なさそうな事言いながら前科を重ねようとするのはやめなさい」

「……私清楚で美少女だし、ここは日本じゃなさそうだから合法」

「治外法権が許されるのは大使館位だと思うけど……日本じゃないからって良心はもとうよ」

「両親ならもういるよ、今頃汗水垂らして働いた金をギャンブルにつぎ込んでる頃かな……」

「一般家庭に住んでる少女がする発言じゃないからね、大丈夫?」

「大丈夫、夜逃げの準備は出来てる。いざとなったらゆいちゃん家行くし」

「……まぁ、一応友達だし。暫くなら面倒みてあげるけど」

「友達って便利な言葉だよね、相手を利用するのに最適な言葉だよ」

「やっぱさっきのなし……」

「ゆいちゃん、私達って友達だよね。一泊いくら?」

「買収しようとしてない? 安っぽい友情だな……」

 渦中に居るのが自分っていうのが笑えない。道行く人の服装はよく言えば簡素で動き易そう、悪く言うならみすぼらしい。一目で金持ちかどうか見わけがつけられそうだが、それはあたしの口からは憚れた。いくら日本語が伝わらない可能性があると言っても、現地人に難癖はつけられたくない。

「……奴隷市場って読めるんだけど」

「あたしの目もそうだって判別してる。裏通りって感じじゃないし」

「合法奴隷……人権って言葉が辞書に載ってないに百円」

「……何か買おうかなってノリで人漁るの止めない? 男漁った方がまだ健全に見えるよ」

「夜の街は未成年お断りなんで……」

「そういう所はあるんだね。お金ないのにどうやって買うの?」

「……強盗」

「強盗……清楚系少女が?」

「……暴力に訴えるだけだよ」

「何も改善されてないよ?」

「仕方ない……捲るついでにすった何個かの財布で買うか……」

「……おまわりさーん、ここに犯罪を犯した少女がいまーす!」

「大丈夫だよ、私の可愛い顔を後ろから見たんだ。見物料って事で」

「物は言いようだな。で、何買うの? やっぱり少女?」

「人を見る目じゃないよ、ゆいちゃん。そうだな……男にするか」

「……むさ苦しいのは嫌だって言うかと思ったけど」

「でも冷静に考えて……男の方が使い捨て……じゃなかった。頑丈だし、いざとなったら盾に出来るし。分からないうちは取り合えずの投資って事で」

「看過出来ない言葉が飛んだけど……いいや。で、どうすんの」

「えっと……買えそうなのは犬と兎……みたいな人……」

「獣人って書いてあるね、値段も人間より安い。一つしか見てないから何とも言えないけど」

「これは……人種差別だね。もう、何処に行ってもカーストはあるんだ。私が粛清してあげなきゃ……」

「……平気で人身売買にお金を落とすひまりこそ……何でもない」

 あたしは深く考えるのをやめた。兎風な人間の瞳は絶望に染まっている、成長途中の子供。青年にしては小さいが、子供とするには大きい気がする。

「よろしくね、私兵一号」

「……奴隷じゃないんだ」

「可愛くないから、私兵。何か特別感ない?」

「私兎派なんだよね……」

「今関係ある? 犬を選ばなかった事に対する言い訳?」

「選んだのはひまりでしょ……」


「中々に強いな、私兵一号」

「……使えなくなったら野郎が趣味の野郎に売り飛ばすって脅した人間の発言とは思えないね」

「そんな、性格がいいなんて当たり前の事で褒められるなんて……」

「もう何もいうまい。てか地道にお金他人の力で稼ごうとしてるけど、どうすんの」

「国家に反逆する。同性婚を認めてないなんて、そんなの間違ってる。私を邪魔するルールなんて壊して見せる、変えてやる」

「具体的なプランは?」

「まず、市民権を持ってる町人を買収します」

「……お、おう」

「次に、王様に同姓愛者疑惑があると噂を流します。あくまで噂、真実じゃない」

「……うん、それで?」

「王様がどこの馬とも知れない輩と結婚する! らしいからクーデター起こそうぜ! みたいな感じで民衆を煽ります」

「……お金に釣られた人間と賛成派が権利者に乗り込むって訳ね」

「簡潔に纏めてくれてありがとう。だから賄賂を集めなきゃね」

「方法には色々問題あるけど……ここ法治国家じゃなさそうだし別にいっか」

 ゆいは考えるのを放棄した。

「……聞いただけだとうまく行きそうだよね、お金の部分に不本意だけど全面同意するよ」

「愛情なんて飾りです、お金と性欲に物を言わせるのです」

「……倫理って言葉知ってる?」

「相手を洗脳……従順にさせるのに都合のいい言葉だね」

「……間違ってないのがなんとも言えない」


「お姉さん、私達困ってるんです。お金を払うので、国に背きませんか?」

「酷い誘い文句を聴いた。お姉さんドン引きしてるよ、結構な勢いで」

「……ここだけの話なんですけど。実は……王様が異邦人の男性と口を交らせていたんです」

 外交官と話していただけだけど、接吻したとは言ってないから嘘は言ってないなとゆいは正気を少し失った。

「まさか協力してくれるとは……この国大丈夫?」

「奴隷が公然と売られてる国で何言ってんの?」

「正論なんだけど買ったお前が言うな」

「別行動してる私兵一号は資金集めしてるんだ、ゆいちゃん。女の武器使ってくれない?」

「……ただ話すだけだからね」


「………………ふぅ」

「お疲れ様……えっと」

 しまった、女の武器云々で下ネタに発展する前に都合つけようとしたのが間違いだった。何を話せばいいのだろうと、ゆいは困り果てた。

「……何か、用ですか」

「い、いや……白くてかわ……恰好いいなって」

 かわいいが地雷な男が多いと思っているゆいは、訂正を挟んだ。

「……奴隷に首輪をつけないなんて、変わってる人間だ」

「……趣味わるっ……って、言ってたよ。うん、ひまりがね。あ、主人の事ね!」

 名前流石に聞いたよね、ひまりの事だから美少女とお姉さんとショタ以外に教える名はねぇ! とか言ってないよね。

「……おれの事、どう思ってる?」

「尊敬されるべき人類の一人……ごめん、ひまりに対する癖が……」

 意味わかんないよねと少女Bは頭を搔いた。だが、尊敬される一人の人間として扱われた元奴隷は。よくは分からなかったが、涙を流した。


「男を泣かせるとは、ゆいちゃんやるね」

「語弊を生む言い方をするんじゃない。資金は集まったの?」

「うん、おかげさまで。それじゃ、起こしますか……旗を持て!」

「……白旗って降参じゃないの?」

「卑猥に見えるなって思って」

「ごめん意味がさっぱり分かんない」

 国家への反逆はあっさり成功してしまった。一部は本物がいたが、お金に釣られた人間が大半を占めていた。獣人に人権を! 同性婚は認められる権利! 給料あげろ! 王様の処女が欲しい!

 ……なんかおかしいのあるけど、成功は成功だ。うん、深く考えるなあたし。

「突然なんだけど私、王様になりました!」

「なろうと思ってなれるものじゃないし、王女じゃないの?」

「鞭もって男を叩く趣味はないんで……」

「あたしが悪かった。これからどうするの?」

「国は乗っ取った、次にする事は……世界征服!」

「就任直後に宣戦布告ってあんた……」

「待ってろ、美少女王室! 夢が私を呼んでいる!」

「……乗りかかった船、か。やるしかないか」

「あ、ゆいちゃんは私兵のメンタルケアお願いね。お金出すから」

「……本音を言え」

「美少女と野獣って……素敵じゃない?」

「節操がなさ過ぎるわ!」


END

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