9話 / 女子キャラ登場!
3日間の中間テストが終わった。
1日目のテストの出来は悪かったが、その後のテストは家で勉強しまくったから多分大丈夫だ。
取り敢えずは一安心か……。
「無事にテストが終わって良かったですね、レイ君」
当然の様に学校に付いてきたユウは、廊下を、歩きながら(幽霊だから浮いているが)言った。学校が楽しかったのか、あれからユウは毎日学校に来ている。テスト2、3日目はユウは学校内を探検と称して色々動き回っていて邪魔されなかったので、助かった。
「あぁ、なんとかなー。初日のはヤバそうなのもあるけど、それは祈るしかない」
「自業自得ですけどねw」
「うっせ!分かってるよ!」
話しながら教室に入り、席につく。何気なく引き出しに手を入れると、教科書以外の何かが手に触れた。
「何だ、これ?」
「紙……?」
身に覚えのない紙だ。手紙の様にも見える。
「手紙ですかね?レイ君、コレってもしかしてラブレターじゃ……」
「いや無いな。俺に限って絶対無い」
「ソッコー否定!?早くないですか!?」
「いやだって俺だよ?友達と言ったらゲンしかいないし、恐らくクラスの片隅になんかいるな〜くらいに思われてるだけだろうしそれに、」
「うわ、レイ君のネガティブな発言来た!1話目でネガティブって紹介しときながらネガティブ来ないなーと思ってたら今来た!!」
「悪かったな。設定忘れかけてた作者に言ってくれ」
流れる様に作者いじりをしたところで、やはりこの手紙が何なのか気になった。
「じゃあ、ちょっと見てみるか」
俺は何の躊躇いも無く紙を開き、中を見た。
「えーと…?『放課後に屋上に来てください』って……、え?」
読み上げたところで俺は固まった。
何だこのいかにもラブレター的な内容は!?
「ほらー、やっぱりそうなんじゃないですか〜?」
「い、いや違うだろって!!何かの間違いだろ!!」
「行ってあげたほうがいいんじゃないですか〜?w」
「う、うっせ!!取り敢えず、考えさせろ!!」
ニヤニヤしながら言うユウに対して、俺は少し焦って、少し赤くなりながら応えた。
結局、放課後に屋上へ、行くことにした。
放課後、手紙に書いてあった通りに屋上へ足を運んだ。ドアを開けると、一気に空が広がる。やっぱり屋上だと、開放感がある。俺はそのまま前に進んだ。
「屋上なんて初めて来たかもな」
「ボクも初めて来ました」
いやいや、初めての屋上に感動している場合じゃない。あの手紙の差出人がここにいるはずなのだから、探さなくては。
「どこにいるんだ?手紙を書いた人は」
「さぁ…。ここから見える範囲にはいなさそうですから、まだ来てないかもしれませんね」
「もしかして、キミが下向零君?」
急に、上の方から声がした。女の子の声だ。
俺とユウが声のした方に顔を向けると、その声の主はニコッと笑った。
恐らく、ハシゴでもあったんだろうか。俺たちが出てきたドアの上にあるスペースで、待っていたようだ。
「びっくりした…。君が手紙をくれた人なのか?」
「そうだよー、ちょっとキミに、零君にお願いがあってね」
女の子は上から飛び降りながら言った。
「俺に、お願い…?」
「うん、そうだよー!じゃあ、ちょっと待って」
そう言うと、急にその女の子の体を煙のようなものが包んだ。一瞬、前が見えなくなる。
俺もユウも、いきなりで何が起こったか分からない。煙が消え視界が晴れると、その女の子は何事もなかったかのように立っていた。
「これでよし!さぁ、ここで問題です!さっきのワタシと今のワタシ。どこが変わったでしょーか!」
「え、どこが変わったか……?」
唐突だ。しかもどこが変わったか全く分からない。
「どこが……変わったんだ??」
「もー!分からないかなー?」
女の子はがっかりした。そして、
「じゃーこうすれば分かるかな?」
と言いながらこっちに向かって来た。
全く速度を変えない。止まる気はないらしい。
「え、ちょっ、ぶつかる…!」
と思った瞬間、驚いた。
これは、前に経験したことがある。
確かに俺にぶつかった筈なのに、ぶつかった感覚がまるでなかった。なのに、女の子は俺の後ろに立っている。
これ、もしかして、すり抜け………!!?
「……!! 君、もしかして……」
「やーっと分かった〜?そう!ワタシは〜…」
女の子はいかにもそれっぽい、手の甲を見せるようなポーズで言った。
「幽・霊でっす!!☆」
俺は女の子の急な宣言に、ただ必死に頭の中を整理するしかなかった。
俺が脳内整理を終えて落ち着きを取り戻したとき、女の子は再び話しかけてきた。
「もしもーし?整理ついた〜?」
俺ははっとなった感じで応えた。
「あっ、うん。なんとか…」
ま、また俺の周りに幽霊が増えた……。
「じゃー自己紹介しないとね! ワタシは2年B組の『明 霊子』! まぁ『リョウコ』って呼んで!」
手紙を出した女の子、リョウコは、明るい声で俺に言った。
ん…?待て……??
リョウコの自己紹介に疑問を持った俺は、聞いた。
「2年B組ってことは、俺の隣のクラスだろ? なんで幽霊なのに学校に通えてるんだ??」
「よくぞ聞いてくれましたー! それはねー…」
リョウコはユウの方を向いて言った。
「“霊能”って知ってるでしょ? そこの幽霊君も持ってるはずだよ?」
「はい。僕の“霊能”は使える呪いの幅や力の上昇ですね」
「うん。そんな感じに、ワタシにも勿論“霊能”があるの。その“霊能”のお陰で、ワタシはこうして学校来れてるんだ〜」
「その“霊能”って、もしかして…」
「そ! ワタシの“霊能”は『実体化』!! 人間が見る事のできない霊体から、人間から見えるし触ることもできる実体になる事ができるの! こんなレアな“霊能”持ってるのワタシ位だし、せっかくだから何かに使わなきゃ勿体ないでしょ?」
なるほど『実体化』か。この能力なら一度死んでる幽霊でも人間と同じように生活できるよな。まさか隣のクラスに幽霊がいたとは。
「凄い能力だな。ん?でも待てよ。幽霊って元々実体化できたはずだよな?」
「あー!そこね!私の場合は、霊力さえ余ってれば半永久的に実体化できるのー!」
「マジか!フツーに強い能力だな……。それで、その実体化幽霊のリョウコが、俺に何の用なんだ?」
リョウコは変わらない、明るい声で応えた。
「そう! その話なんだけど〜、零君って霊感強いじゃない?」
「あぁ。まぁ普通に幽霊見えてるし」
「でしょ! だから、取り憑かせてほしいの!!」
ん……?
デジャヴ。聞いたことあるぞこのおかしな頼み。
俺が再度脳内整理をしていると、ユウが割って入ってきた。
「ちょっ、ちょっと待って下さい! レイ君にはもうボクが取り憑いてるじゃないですか!」
「え、駄目なの?」
きょとんとした様子で言う。
「駄目ですよ〜。一人の人間には、幽霊は一人しか取り憑けないんですよ? 二人以上が取り憑くと取り憑かれる人間側の方の体がもちません」
「な〜んだ〜、そうなのか〜。折角霊感強い人見つけた!って思ったのに〜」
俺の周りの幽霊共は、俺の体をなんだと思ってるんだよ……。
「霊感が強くないと取り憑けないものなのか?」
「いえ、そんな事はないんですけど、霊感が無い人に取り憑いてしまうと、その人から生気を吸い取り続けないとなんですよ。そうしないと、霊体が体に定着出来ないんです」
「それに比べて霊体が強い人は、生気を吸い取らなくても霊体が定着できるんだよね〜。不思議だけど」
「だから俺に来たのか……」
幽霊は何もしなくても生きていける訳じゃないらしく、人間に取り憑いて生気を吸い取るか、霊感の強い人に取り憑いていなくては、活動する為のエネルギーが得られないらしい。だから人間に友好的な幽霊は、なるべく霊感の強い人に取り憑くのだそうだ。
「てことは、ワタシのお願いは元々通用しなかったってことか〜」
リョウコはがっかりしながら言った。
「え、じゃあ俺も呼び出され損?」
「そういうことだね」
「マジかよ……」
あっさり言われて、俺もなんかがっかりした。別にあの手紙がラブレターだったんじゃないかとか期待してはいなかったけど……。
「じゃあこんなのはどうですか?」
がっかりしている俺とリョウコに、ユウは思いついたように口を開いた。
「リョウコさんの為に、他の霊感のある人を探して見るんです!」
ユウの提案に、リョウコは目を輝かせた。
「ホントに〜!?」
「はい! ボクとレイ君で探してみます!」
「ちょっと待てユウ、俺まだやるとは言ってないぞ!? 大体、霊感ある人探すって、どうするんだよ?」
「同じ幽霊の方を放って置くわけにも行かないですし、方法は………なんとかなります!」
「なんとかって!」
「レイ君が嫌なら別にボク一人でやりますけどね」
「〜〜……別にやらないとも言ってないだろ……」
「よし、決まりです!」
俺の言葉を聞いて、ユウはすぐさま嬉しそうに言った。
「ホントに探してくれるのね!」
「はい! でも、リョウコさんも一緒にですよ?」
「それはモチロン! 自分の事だもん、一緒にやる!! ヨロシクね! 零君、ユウ君!」
唐突な決定事項だけど、ここまで来たらもうやるしかないか。
俺は初めての人助けならぬ、幽霊助けをする事になった。
どうも、拓溟です。
かなり遅れた明けましてめでとうございますですね笑。1月中に投稿できて良かったです。
因みにリョウコの苗字の「明」は、「めい」って読みます。「あか」とかじゃないです。
この前の日曜、朝二度寝したらまさかのお昼の12時になっててビックリしました。めっちゃ寝れて疲れが取れたのは良かったのですが、「半日無駄にしたー!!」って叫んでしまいました笑。
次回、幽霊助けです。
ではまた次回!!