5話 / 霊能
幽霊が一人増えた。
突然俺の部屋に現れたその幽霊は、「マスター」と名乗っている。
ユウとマスターと、俺。
人間俺一人かー……!!
「どうされました?急に落胆したように下を向いて……」
いつの間にかがっくしと下を向いていた俺に、マスターが心配した様に声をかける。
「あ、いや大丈夫です……。急に来たこの状況と現実に驚きを隠せないだけです……」
「?」
不思議そうな顔をしているマスターに、俺は疑問に思っていたことを質問した。
「そんな事より、ユウはマスターからその漫画借りたって言ってたけど、なんで同じ幽霊のマスターが漫画なんて持ってたんです か?」
「あぁ、それは買ったんですよ」
「買った?」
意外な返答だったから、思わず聞き返した。
幽霊が漫画を買った?
聞いたことないぞ、そんな話。
「買ったって、幽霊なのにどうやって……?」
「この世に存在する幽霊のほとんどは、実体のある人間のように、実体化することができるのですよ」
「人間に……!!」
「はい。まぁ、短時間ですがね。それとお金はどうしているかと言いますと、霊界の通過を、人間界の通過に変換する会社がありまして、そこで手に入れております」
「そんな事まで出来るのか……。スゲーな幽霊……!」
俺は素直に関心してしまった。
でも、霊界の通過を人間界の通過に、ってどうやってるんだ??
「はっはっは、面白いでしょう?幽霊の生き方も。ところで今、どうやって霊界の通過を人間界の通過にするのか、と考えていましたね?」
「え!?あ、はい……」
何で分かったんだ?
「それは、その会社に、そういう能力を持ったものがいるからです」
「能力……!あ……!」
俺は、ユウと話したことを思い出した。
その日、学校から帰って来た俺は、自分の体の異変を話した。幽霊ならなにか分かるんじゃないかって、何となくそう思ったからだ。
「なぁユウ、今日妙に体が重かったんだが、なんか分かるかな?」
「あ、気付きました?」
「え、なんか知ってんの!?」
本当に知ってた!!と思って驚いた。
「ボクが呪いをかけました☆」
「ゑ??」
まさかの返答に、俺は固まった。
いやサラッと「呪いかけた」とか言われて固まらない方がおかしいだろう。
俺は固まったまま、ユウの言葉を返していた。
「呪いをかけた!?」
「はい。約一日、体がだるくて重くなる呪いを☆」
「バカヤロウ!!なんつーいい感じに地味で嫌な呪いかけてんだ!!てかなに!?呪いかけられんの!?」
「幽霊は大体呪い使えますよ。ボクはその種類が多いだけです」
ん?種類??
「どういう事だ?」
「えっと、幽霊にはそれぞれ『霊能』と呼ばれる能力が備わっていてですね。その『霊能』は、個体によって違うんです」
「能力……!」
そういうのあるのか……!
「ちなみにボクの能力は、他の幽霊よりも使える呪いの幅、種類がとても多いいんです」
「へぇー、凄い能力だな………って!だからってなんで俺を呪った!?」
「なんとなく」
「っはーー?!」
思い出したら腹が立ってきた……。
なんとなくで人を呪うなよまったく……。
「……で、そういう能力っていうのは…」
「はい。そのまんま、霊界の通貨を、人間界の通貨に変換させる能力だそうです。その逆も、また可能だそうで」
「へぇー、いろんな能力があるんだな」
「面白いでしょう?貴方もこちら側に来れば、『霊能』が使えるようになるかもしれませんよ?」
「誘わないで下さい……。俺まだ生きてたいですよ」
「はっはっは、そうですね。命があるのは良いことです」
実に愉快そうだ。なんかマスターと話してると和むな。流石マスター。
「そういえば、マスターの『霊能』は?」
「えぇ、私の『霊能』は、人の心、思っている事を読む力です」
へぇー、これまた便利そうな。あ、さっき俺の考えてた事を当てたのって、マスターの『霊能』だったのか。
と、ここで漫画の続きを読んでいたらしいユウが話に入ってきた。
「そういえばマスター、お店の方は大丈夫なんですか?」
そっか、マスターは喫茶店のマスターなんだっけ。
「ああ!忘れていました!店を開けて来たんでした」
「いや、忘れないで下さいよ!そんな大事な事!!」
以外とドジ(?)なんだな、マスター。
「それでは、私はこれで。是非、店にも遊びに来てくださいね」
そう言ってマスターは部屋を出ていった。
「いい人だったなぁ、マスター」
「でしょう?とってもいい人です!」
ユウを助けた人だもんな。
「あ、それより見てくださいよレイ君!今週のワンp……」
「ストップ!やめろ!!伏せ字は前回だけで勘弁してくれぇ!!」
そんな感じで、俺はまた幽霊の事を知ったのだった。
どうも、拓溟です。
一ヶ月……。一ヶ月ですよ……。一ヶ月も開けてしまいましたよ……。なんだかすいません、間が空いてしまって。まぁ一応不定期なんで、気長に待っていただけたら幸いです。
さて今回はマスターによる霊界の仕組みの説明と『霊能』についてでしたね。マスターの『霊能』、私も欲しいです。
次回、ユウと零が暇つぶしをします。
ではまた次回!