3話 / 憑依決定
「で、話って何だよ……?」
俺は、急に真面目そうな顔になったユウに聞いた。
「はい、実はですね……」
ユウは俺の問いに答えて話し始めた。
「ボク、記憶を無くしているんです」
「は……?」
俺は驚いた。
「幽霊でも記憶無くすことって………あるのか……?」
「はい。ボクが生前何をしていたのかとか、何故死んでこの様に幽霊となったのか、とか、全然思い出せなくて………」
「そうだったのか……」
幽霊も大変なんだな……。
「それでボク、自分がどんな人だったのか思い出したいんです」
「なるほど……。ん?でも待て、何でそれで家に来たんだ?住むとこ無いとかそういうのなら分かるけど、家以外でもいいじゃないか」
「はい、それなんですけど……」
何か家じゃなければいけない理由があるのだろうか。俺はそのまま、黙ってユウの話を聞いた。
「ボク、幽霊になって、最初に目を覚ました所がこの町なんです。そして自分の名前も分からず、行く宛もなく彷徨っていたボクに、名前を付けて、励ましてくれる方がいたんです」
「名前を付けてくれた……?それって、誰なんだ……??」
「同じ、幽霊の方です。初めて会う方なのにボクにとても優しくしてくれて、何か懐かしい様な感じがして……」
へぇ、「ユウ」って名前は元からあった名前じゃなかったのか……。
「いや、でもなんで家なんだよ。まだ話に出てきてないぞ」
「あぁすいません、ここからです!……で、その方が教えて下さったんですけど、幽霊は一人じゃ生きていけないらしくて、誰か人間に取り憑かないといけないそうなんです。」
「それで……俺??」
「はい!霊感が強い人間の方が取り憑きやすいし、何より相手もボクの姿が見えやすくなるので!」
なるほどな………。
ん?!いや、ちょっと待て。俺は今のユウの言葉に違和感を覚えた。
「え……俺って、霊感強かったのか………?!」
「はい。え?ご存知なかったんですか?」
「あぁ……」
俺って霊感強かったのか………。まぁ確かに今目の前で幽霊見えてるけど、それはユウがなんか特殊な力で俺に見せてるもんだと思ってた。
「自覚無かったんですか……」
「あぁ……」
「ちなみに昔、何か変わった事とかありませんでした?怪奇現象的な」
「え?えっと……」
俺はしばらく考えて、
「あ、そうだ。小学生の頃林間学校行って、夜中に変な笑い声で起きたっけな」
「あるじゃないですか……」
「あ、あと二階のこの部屋で寝てた時窓叩く音がして、そのまま寝て起きたら一階のリビングに転がって寝てた………なんてこともあったな」
「めっちゃあるじゃないですか!なんでそれで霊感あるって思わなかったんです!?」
「確かにそうだな」
「鈍感ですねw」
「う、うるせー!」
反論したかったけど、ホントの事だから出来なかった。
まぁ、一応これで、ユウが俺に取り憑きたいという理由は分かった。さて、どうするか……。
「どうですか?取り憑かせてくれます……??」
俺は少し考えて、答えた。
「………俺で役に立てるんなら………いいぞ」
「いいんですか!?」
「あぁ」
「やったー!」
ユウはぴょんぴょん飛び跳ねて喜んだ。飛び跳ねてるのに音がしないのに気付いたのは、少したってからだ。あ、そうか。幽霊だから体重とか無いのか……。
「ありがとうございます!!あ、えっと…」
「あぁ、名前、……零だ。下向零」
「分かりました。ありがとうございます!レイ君!!」
こうして、この幽霊は俺に取り憑く事になった。
なんかよく分かんないけど困ってるんなら、力になりたいしな。
お久しぶりです、拓溟です。
いや、ホントに久しぶりになってしまって申し訳ございません(汗)色々忙しかったのですが、なんとか投稿できました!次回は早めに出そうかと思いますので、よろしくお願いします(_ _)
ではまた次回!