1話 / 居候の憑依霊
憑依。
すなわち「取り憑く」という事である。
主に幽霊や妖怪等が使うものであり、漫画や何かの物語で見た事があるという人もいるのではないだろうか。
取り憑く事で対象を操ったりする事ができる。だが、中には少し違った効果のものもあるようで………。
やっちまった………。
また授業中に寝ちまった………。
寝ないように気を付けていたつもりが、いつの間にやら夢の中、という訳だ。
「おう!零!お前まーた寝てたろー!」
寝ぼけた頭に突然デカイ声が降り掛かってきた。
「うっせ、急に大声出すな………」
「だってお前、今日で3回目だぜ?流石に1から3時間目まで連続で寝るのはヤバイだろ」
「それくらい、俺だって分かってる。でもどうしても寝ちまうんだよ………」
「じゃあ顔でも洗ってきたらどうだ?少しは目ぇ覚めると思うぜ」
「ん、じゃあそうする………」
俺はゆっくり立ち上がって、水道のある方へと足を向けた。
寝ぼけていたせいで、紹介が遅れてしまった。俺は下向 零。
ここ、月鳥高校の2年生だ。
自分でもよく分かっていることだが、俺は長所よりも短所の方が多い。その一つが、ネガティブって事だ。名前のまんまじゃねーかって思う人もいるかもしれないけど、それは、俺じゃなくて作者に言ってくれ。俺は知らん。
で、さっき教室でデカイ声を出してた奴は、俺の友達、上木 元気だ。
俺はゲンって呼んでる。
こっちも名前の通り、元気だけが取り柄の騒がしい奴だ。ただこんな俺を友達と呼んでくれる唯一の人間だから、ありがたく思っている。
っと、言ってるうちに目的地に着いた。
蛇口をひねって水を出し、それを手にとって顔につける。冷たい水は、寝ぼけた俺の頭を覚ましてくれるような気がした。
2、3度顔を洗って、4時間目の授業のためにまた教室へ向かう。
(それにしてもここ最近何で眠くなりやすいんだか………。やっぱあいつかなぁ………。)
俺は小さいため息をつきながら教室に入った。
「はぁ、疲れた………」
帰りのHRが終わったところで、思わずそんな一言が漏れた。
「お前、今日一日寝てしかねーだろw」
「うっせ、寝疲れたんだよ」
我ながら訳のわからない返答だ。
「なんだそれw」
まぁそうなるわな。
結局あの後あと、なんとか4時間目は寝ないで耐えたものの、5、6時間目はまた寝てしまった。
「じゃ、俺は帰るわ」
「あー、俺も一緒帰る!」
「お前は部活あるだろ」
「あ!そうだった畜生ー!」
「忘れてんじゃねーよw」
こんな他愛もないやりとりに、思わず苦笑いが漏れる。俺は部活に行くゲンと別れて帰路についた。
「ただいまー」
家に着いたのは4時半位だった。俺は自分の部屋に行くために、階段を登った。この時間、親はまだ仕事だから、家の中はかなり静かだ。階段を登る足音だけが響く。俺は階段を登り終えると、目の前にあるドアを開けた。
「あ、おかえりなさい。零くん!」
優しい声が届いた。
「ただいま。ユウ、お前また俺になんかしたろ?」
「あはは、やっぱりバレてましたかー。流石です」
予想的中だ。
「で、何したんだ?」
「一週間だけ異様に眠くなる呪いをかけました✩」
笑みを浮かべて言う。
「まーた変な呪いを……」
「学校ではよく寝れてますか?w」
「おかげさまでな」
「それは良かったです✩」
少し皮肉混じりに答えれば、相手は変わらず笑顔のまま応じるだけだ。
こいつの名前はユウ。
俺に憑依、つまり取り憑いている幽霊だ。
何故俺に憑依しているのか、憑依ってもっとこう違う感じじゃなかったかってのはまたあとに話す。
ユウは、ぱっと見は普通の人間だが、よく見ると少し透けていて、周りにほよほよしたもの(何だかよく分からない)が浮いているのが見える。生前は何をしていたのかよく分からない。もっとも、本人が一部記憶を無くしているって言ってるから、聞いても答えが帰ってこないのは分かっている。ちなみに、口調だけじゃ分からないだろうから言っておくと、ユウは男だ。
まぁ要するに俺は、幽霊と一緒に暮らしているのだ。
「あ、そうだ。零くん、おやつ有りますよ!食べます?」
そんな事を幽霊が聞いてくる。俺はただ、「おう」と頷いて部屋に入るだけだった。
どうも、初めまして。拓溟と申します。小説書いてる先輩に影響されて、今回初めてこうゆう小説を書いてみました。初めてなので、間違いとか色々無いか心配です(汗)。
さて、主要キャラであるはずのユウが結構最後に出てきましたね〜。結構っていうかもう一番最後ですねw。ユウは何で零くんに取り憑いているのか、そもそも憑依ってこういうもんじゃ無くね?wっていうのを次回書こっかなって思ってます。
あ、あと不定期の連載になると思います。すいません。
では!宜しくお願いします!また次回!!