2ノ第20話: そこは、ラブコメ訓練場
ついにボーナスステージがやって来た!
そこはエルフの訓練場。
里の者は皆、神殿復興に全力を注いでいる。
よって訓練場は貸切状態。
俺とマリアちゃんの二人っきりなのだ!!
これをボーナスステージと呼ばずになんと呼ぶ!
この訓練でマリアちゃんにいいところ見せちゃって「リュージさん強いですね!」なんて言われたら「君を守るためさ!」などと言っちゃったり。
そんなマリアちゃんといい感じになって「リュージさん好きです!」なんて言われちゃったりすると「俺もだよ!」なんて言い返してみたり。
うぉ~、そして俺たちは結ばれ……。
ヤバイ、妄想が――。
「リュージさん、わたし出来ちゃったんです……」
「なんとー!」
もう俺の子が……。
なんか色々と順番が吹っ飛んだぞ。
チョット待てよ、俺の子じゃないよな……、一体相手は誰なんだ?
俺、動揺しているのか?
「すぐにでも伝えたくて」
「相手、誰?」
誰? 誰? 誰?
「もちろんリュージさんです」
「えっー!?」
俺か! 俺が? 俺だ!
俺知らない間に、俺やっちまったのか!!
「見ててくださいね!」
「あれっえ……??」
そう言ったマリアちゃんは右手を前に出し詠唱を始める。
あの構えは、魔力弾の構えだ。
どうやら俺……勘違い?
妄想癖は昔に克服したと思っていたが、また再発してしまったのか……。
いやいや、悪いのはマリアちゃんだ!
あのひざ枕状態から「リュージさん、訓練場行きませんか?」などと俺を誘惑的に誘ってくるもんだから――、即答で「いいね!」と答えたよ。
この時の俺に不純な考えは無かったのだ。
俺、意外と訓練好きなんだよ、きっと。
そのあと色々思い出していたら、マリアちゃんと特訓した魔法学校の事を思い出した。あの時はいい思い出しかなかったな……。
そんな祝福の時の記憶を探っていたら、妄想癖まで蘇っちまった!
はぁ~ビックリしたけどガッカリだよ。
でも、いつものマリアちゃんでホットしたよ……。
あぁ~もう、なに言ってるのか訳が分からない!
「リュージさん! 生まれそうです!」
「はぃいー???」
俺は目を疑った。
何が生まれるかと思いきや、目の前に魔法陣が生まれていたのだ。
「リュージさんやりました! 出来ちゃいました!」
「そ、それは……。ま、魔法陣じゃないか!」
ロイドのじっちゃんが20年かけて編み出したという魔法陣を、こうも簡単にやり遂げてしまったというのか!?
どこからどう見ても、それは魔法陣である。
そこから放たれた魔力弾は――、明らかに威力とスピードが共にアップしている。魔法陣の効果が出ているのは間違いない。
「頑張りましたー」
魔法陣を見た俺は興奮している。
が、マリアちゃんもまた興奮しているようだ。
出来たのが相当嬉しいのだろう。
嬉しさのあまり俺に飛びついてきたので、俺は受け流すかのようにグルグル回して祝福してあげたさ。
「目が回りますー」
「ごめんごめん」
こんな短時間でモノにしてしまうマリアちゃんはマジですごい。
マリアちゃんは魔力が見える特殊な目を持っている。
おそらくそんなマリアちゃんだからこそ可能であったのであろう。
「リュージさんもやってみます?」
「俺には無理だよ……」
「そうですね、すぐには無理かもしれません」
分かっているじゃないかマリアちゃん。
魔力弾すらろくに作れない俺に出来るわけないのは自覚している。
「でもですね。出来てしまえば簡単なことだと分かってしまったんです!」
「なにっ!」
「それはですね。お風呂の栓を抜いた時に渦ができますよね」
「あ、あれか」
「あれと同じように、魔力の渦が出来始めると魔法陣が現れるんです」
「な、なんだと!! それだけの事なのか!?」
そんな簡単なことだったら、ただ魔力を集めていればそのうち俺にでも出来ちゃうかもしれない!
「でも、ただ魔力を集めてたら出来ないんですけどね――」
俺の理論は一瞬で砕かれ、ぬか喜びと変わった。
――モウダメポ。
「集めるのではなく、集まらせる感じなんです」
ますますなに言ってるかわかりません。
「目の前に低気圧のような低魔圧を作ります。すると周りの魔力はそこへ向かってどんどん渦を巻いて押し寄せてくるんです」
「はぁ~……」
要は、その低魔圧ってのを作れさえすれば出来ちゃうかもしれないってことなのか!
話は単純そうであるが、俺には絶対ムリな気がしてきた……。
例えるならば、「ちっちゃなブラックホール作るだけですもん。簡単ですよね♪」とか言っているように感じるよ。
「大丈夫です。リュージさんならきっと出来ます」
「ありがとうよ。マリアちゃん」
簡単じゃないから、絶対無理だから……。
そんなことより!
今って、いい感じなんじゃね?
そういえば今俺はボーナスステージ中であった!
その証拠にマリアちゃんが急接近している。
ちかい、近いぞ――。
「兄ちゃんチューしないのか?」
下を向くとケント少年がしゃがみ込みながらこちらを覗いている。
少年は気配を消していたようだ。
「なにをイキナリ。てか、いつからそこに居たんだ!?」
マリアちゃんに気を取られていたから気が付かなかったのだと言いたいところだが、ここはケント少年の気配を消す能力を褒めるべきであるだろう。
自分より強いモンスター達がいっぱい居る危険なダンジョンをこの歳で行き来している。そんな事を繰り返しているうちに、身を隠す術を自然と身につけてしまったのかもしれない。
「兄ちゃん約束覚えてる? あの技教えてくれよ~! えっと、スカー……」
「――まった、まった。ストップストップ」
マリアちゃんが居る前で変なこと言うんじゃない!
俺が変態だと思われちゃうじゃないか。
そもそもあの技はそういう目的で出来た技ではない。
全身強化が失敗しそうになった時に、地面へ魔力を流して自爆するのを回避する非常手段なのである。
まあ約束しちゃったからな、一応教えるだけ教えるか。
二人っきりのラブラブタイムが……。
はぁ~、どうやらボーナスステージは終わったようだ……。
「よし、まず全身強化からやってみせるからな」
「ハイ! 先生!」
「今なんと?」
「せんせい……?」
いよいよ俺も先生か――!
先生と呼ばれるのも悪い気がしない。
ここはいいところ見せちゃうかー!
「よしいくぞー!」
俺は体全体から魔力を放出し全身強化状態に入った。
「これが全身強化だ。これでキングアントとやりあったのだよ。オホホッ」
「おおぉー」
「この状態から魔力を地面に流すことで周りに上昇気流を作るんだ」
「なるほどー」
「準備はいいか?」
「いいよー兄ちゃん」
ケント少年は岩にしがみつき、じっと俺を観察する。
「マリアちゃんも安全なところに……」
「わかりました!」
いや、わかっていないだろ、なんで俺の方に近寄って来るんだ。
離れてくれと言おうと思ったが、マリアちゃんは俺に寄り添うようにしがみついて来てしまった!
「ココって、安全ですよね?」
確かにココは安全である。
爆風は周りに発生するのであって中心は安全なのだ。
だが、別の意味で危険は上がったよ。
まあ、こんな状況でも冷静に発動させる特訓はしてきた。
昔の俺とは違うのだ!
すると後ろの方から声が聞こえる。
「リュージ、ここに居たのね。探したわ」
振り向く先には無防備なミリアの姿。
なんでこんなタイミングで出てくるのだ。
なんとしても発動を止めなければ――、いま発動したらヤバイ。
てか、発射寸前での寸止めとかキツすぎる……。
「だしてください」
なにを言うんだマリアちゃん。
いま発動したらキケンがヤバイってことがわからないのか!?
――そんな上目遣いで俺を誘惑してくるんじゃない!
もしかして……、そんなすまし顔して確信犯なのか!!
「ご主人様~、スキあり~にゃ」
『ドカッ!』
でたな――隠れキャラのメアリー!
なんでこんなタイミングで出てくるのだ。
最近姿を見せないと思ったら、不意を突いて俺の横っ腹にドロップキックしてきやがった。
マリアちゃんの誘惑には耐えていたのに、魔力を漏らしちまったぜ――。
俺のスカートめくり技が発動したのだ。
『キャー!』 スカートがヒラヒラ……
「リュージ! アンタわざとやってるでしょ!」
ミリアはとても怒っています。
こうなってしまってはどんな言い訳も通用しないでしょう。
ミリアは目線をそらさず俺を睨みながら一直線に向かってくる。
迫る姿はノシノシと重厚で、とても華奢な女性とは思えません。
そんな姿から右手は輝きだし、目からは十字の閃光が放たれる。
俺には間違いなく目が光ったように見えたんだ。
ところでミリアの右手には、かなり魔力が集中している。
必殺技を貯める時は、たしか移動できなかったはず……。
成長したな……ミリアよ。
『ばちぃーん!』
久々に魔力のこもったビンタを貰いました。
懐かしいこの痛みを噛みしめながら、俺は地面でピクピクしてます。
「ねえーちゃんすげーな!」
「あら? 君はケントくん?」
「うん! ミニスカのねえーちゃん、今の技教えてくれよ」
「私の名前はミリアよ! いえ、ミリア先生と呼びなさい!」
「はい! ミリア先生!」
「良い子ねー。このミリア先生が教えてあげるわ!」
ナイスだ、ケント少年。
ミリアはビンタからカカト落としのコンボ攻撃を狙っていた。
あんなの貰わずに済んで、助かったよ。
こうしてケント少年の興味はミリアに移った。
ミリアは前衛タイプでありツルギを使うのはとてもうまい。
拳でボコボコ殴る俺なんかよりよっぽど勇者ぽい。
勇者を目指しているケント少年にとってはミリアはとても魅力的であろう。
先生の座は奪われてしまったが、これでよかったのである。
だって……。
「リュージさんヒーリングしますね」
いま……、祝福のひざ枕なんだ!
ミリアに感謝である。
ビンタに感謝である。
どうやら俺のボーナスステージは終わっていなかったようである。




