2ノ第17話: 神殿ダンジョン①、ケント少年
「あれ、リュージさんが見当たりませんね」
「ダンジョンでも行ったんじゃないの?」
「リュージさん悲しそうでしたよ。一人にしていいんですか?」
「いいのよ。ほっとけば」
俺は隠れている。
俺の存在は誰にも気づかれない。
俺は今、潜伏スキルの練習中なのだ。
気配を消し隙きを伺う。
暗殺者も顔負けさ。
誰にも俺は見つけられないぜ。
しっかし、最近のミリアは冷たい。
もう酔っぱらっていないはずなのに。
……俺ってなんか恨まれてる?
「それよりアンリエットさん! 私に弓を教えてください!」
はぁ~、ミリアにはガッカリだよ。「心配だから探しに行くわ」とか、言ってくれてもいいじゃないか。
てか俺は何を期待しているんだ。
一人で冒険するのは元々好きだったはず……。
「お姉さま。わたしリュージさんが心配です」
「大丈夫よ」
さすがマリアちゃん良い子すぎるぜ。
マリアちゃんとラブラブデートな冒険したい!
「なにかやらかしそうで……」
えっ~!
優しいんだか……、けなしているんだか……。
「ほっときなさい。あいつバカだから」
あのやろー。
そういうお前もバカなくせに。
「バカは死なないっていうでしょ」
ほら、お前こそバカじゃねーか!
それを言うならバカは風邪引かないだろ!
お前はきっと長生きするぜ。
「バカは死んでも死なないからな!」
俺の後ろに気配が……。
「お兄ちゃんそれを言うなら、バカは死んでも治らないじゃないの?」
何時からそこに居たのだ!
俺の潜伏スキルをあっさり見破るとは!
俺より優れた潜伏スキルを持っているようだな。
「そぅ……そうとも言うかもな」
「ジョークってやつですね?」
「そうそう! もちろんそうさ!」
「ジョークってのが分かってきたよ」
「それより静かにするんだ! 俺は今、潜伏スキルの練習中なのだ」
「じゃ僕も!」
俺たち二人は引き続き潜伏スキル練習という名の盗聴を続ける。
◇
「そういえば、ロイドさんも居ませんね」
なにっ!
俺を出し抜いてダンジョンへ先に行ったりとか……?
気になった俺は周りを見渡す。
『居たっ!』
よかった、ダンジョンへは行っていないようだ。
というか、エルフ美女を捕まえてナンパをしている。
何という実行力。
早速ウエイトレス美女をスカウトしているようだが、俺にはナンパにしか見えない。
「君はとても綺麗じゃ」
「そんなっ。私なんて」
「人間は君みたいな子にメロメロじゃよ」
「そうなんですか?」
「ワシと、一緒にいいことしようじゃないか!」
ちょっと待て! 俺は見たぞ!
今さり気なくお尻を触っていた。
あの子は気づいてないのか??
なんて技だ!
後で教えてもらおう。
いやいや、それはヤッちゃいけないな。
「良い子は真似しちゃいけないぞ! ケント少年」
「うん。僕あんなことはしないよ」
「いい子だ、ケント少年!」
「それよりお兄ちゃん、あのスカートめくりの技はどうやってやるの?」
それもダメだろ!
てか技じゃないんだけどな……。
「あれは暴発して失敗しただけなんだ」
「嘘だよね?」
「技は技でもわざとじゃない。なんちゃって」
「またジョーク?」
決まったぜ。
「さすが少年わかってるじゃないか!」
「周りの動きを封じる、すごい技だったね!」
「ハッ!!!」
決まったと思いきや、俺のダジャレはスルーされていた……。
いやいや、そんな事はどうでもいい!
自分の身を守る為に自然に行なっていた行動であった。
自分が爆発しないようにアースの如く魔力を地面へ逃がす。
すると魔力は上昇気流を作り突風を生み出し周りを巻き上げる。
巻き上がる突風を浴びた相手は耐えるので必死になる!
もしかしたら、これは実践で使えるかもしれない!!
「よくぞ大魔王の技を見破ったな!!」
「えっへん!」
「さすが未来の勇者。見込みがあるじゃないか! ハッハッハッ」
◇
「さて、俺はダンジョン行ってみるか」
「僕もいく!!」
「ダメだ」
子供を連れて行く訳にはいかない。
ここはきつく言い聞かせた。
「ついて来ちゃダメだからな」
俺は一人でダンジョンへ向う。
ダンジョンの入口は洞窟とかではなく明らかに人工物の建物である。
アンリエットさんはここにダンジョンがあると言っていたので、とりあえず信じて入ってみようと思う。
中は立派な建物で、どうやらここは神殿のようだ。
神殿は手前に大きなフロアと奥にも大きなフロアがあるようだが、奥へと続く広い通路が崩れ落ちており奥のフロアには進めない。
下へ下りようにもこの高さじゃ落ちたら死んじゃうな。
で、ダンジョンは何処にあるんだろう?
「何探してるのかな?」
振り向くと子供のケント少年が居た。
「来ちゃダメだって言ったろ!」
「この下がダンジョンに繋がっているんだよ」
「おお~って、ここ落ちたら死んじゃうじゃないか!」
「付いてきて。地下の階段があるんだ」
まんまと乗せられてしまった。
俺はケント少年の後を追う。
ケント少年は階段を軽快に下り階段を降りどんどん進んでいく。
様子を見る限りこの辺にモンスターは居ないようである。
「ねえケントくん、奥にも神殿があるようだったけど、橋が壊れて渡れないね」
「あれね、アントが襲ってこないよに壊したんだ。奥の神殿はアントの巣になってしまっているんだ」
それで橋が壊れていたのか。
「兄ちゃん、止まって」
「どうした?」
どうやらアントが居るようだ。
このアントはワークアントで、最弱クラスのアントである。
「兄ちゃん強いんだろ? 大魔王なんだろ?」
「大魔王では無いけどな、そこそこ強いぜ」
「じゃ、僕とチーム組んでアイツら倒そうぜ」
「ダメだ、危ないから君は帰るんだ!」
「僕にだってやれるんだ!」
そういったケント少年はワークアントめがけて突っ込んでいってしまった。
困った子供である。
未来の勇者を怪我させるわけには行かないな。
俺は後を追い助けに行くもケント少年は既に戦い始めていた。
「えい! えい! えい! えい!」
『キン! キン! キン! キン!』
子供にしては頑張っている。
頑張っている姿を見ると応援したくなってきた。
このぐらいの小型なワークアントならば俺は余裕で倒せてしまうが、ここはケント少年に華を持たせてやろう。
だが流石に囲まれたらケント少年も危ない。
そこは俺がフォローだな。
しっかし、俺が冒険始めた頃よりケント少年は遥かに強い。
俺なんかホーンラビットでしょぼい戦いをしていた。
あの頃が懐かしい。
この子の将来が楽しみである。
俺も負けちゃいられないな。
もっと強くならなければ!
「あれを試すか!」
ダメージ与えて倒しちゃったら困るからな。
あの技がぴったりである。
スカートめくりの技とか変なこと言われたが、実用化に向けて練習するならこのワークアントはちょうど良い相手だ。
俺は全身強化をする。
強化した魔力を地面へ向けて解き放つ!
「ライジングバースト!」
かっこよく名前をつけてみた。
ワークアントは吹き上げる風に耐えるようにこらえる。
一瞬ではあるが、動きを封じることが出来た。
この技は使える!
しかし問題は技名だ。
強そうな技名なのに相撲の猫騙しぐらいダメージは無い。
「ストームバースト!」
ワークアントは怯んだ。
う~ん、いまいちピンとこない……。
技名に負けてる気がする……。
それにリズムも悪いぜ……。
「スカート~~。めくり~~!」
ワークアントがよろける!
このリズムだ!
ワークアントの硬直時間も伸ばせたぞ。
しっくりは来たが、……女子の前ではキケンだな。
「お兄ちゃんヤメてよ! 僕まで巻き込まないでよ!」
「あぁ~、ごめんごめん」
ネーミング以前にこの技には問題がある。
味方まで巻き込んでしまう。
「後一匹だ! 僕がヤル!」
「行くんだ少年」
「えい! えい! えい! えい!」
『キン! キン! キン! キン!』
「やるじゃないか! ケント少年」
俺たちはフロアのワークアントを全て倒した。
◇
「やったね! 兄ちゃん!」
「おぅーよ」
「この先にね! キングアントが居るんだ」
「あれがキングアントなのか……デカイな」
そこは天井が吹き抜けの大きなフロア。
そこにキングアントが居座りどうやら寝床にしているようだ。
「お兄ちゃんやっつけてくれよ! 大魔王なんだろ!」
「どう考えても一人じゃ無理だよ」
「僕がいるじゃないか! 二人でやっつけようよ」
調子に乗ったケント少年は、次にキングアントを倒そうといいだす。
アントと戦ってきた俺ならわかる。
どう考えても勝てる相手ではない。
少年に華をもたせたのが仇となってしまったようだ。
言うことを聞きそうにもない……。
子供っていうのは、困りもんだ。
「よーし、作戦だ!」
「なに? なに?」
キングアントが居るのは隣のフロア。
こちらのフロアとの連絡は、この小さな通路を通るしか無い。
よって大きいキングアントはココを通過することは出来ないから、危なくなったらすぐに逃げられる。
「今回は敵の実力を確かめるだけ! 絶対に無理はしない! 負けそうならすぐ逃げる! 守れるか?」
「えぇ~」
少年は不満そうである。
「隊長の指示に従えたなら。スカートめくりの技、教えてやるぜ!」
「本当に!? お兄ちゃん絶対に約束は守るよ!」
「よし、行くぞ!」 ……つづく。




