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2ノ第15話: エルフの里とウソの始まり

 メーサーキャンプ地を出発した俺達は街道を()れて北へ向かう。

 どこへ行くのかというと、エルフの森である!


 俺たちがエルフの森へ招待される事になったのは、姫たちの馬車がアント達に襲撃されているところを助けたことがきっかけで、お礼として俺たちはエルフの森へ招かれることになった。

 人間を入れることはないと言われるエルフの森に行けるのは、とても貴重な体験が出来そうである。


 あ、そうそう、俺はエルフの森だと思い込んでいたが、エルフ族はエルフの里とよんでいるようだ。



「リュージ君がこんなに大物だったなんて驚いたわ」


 それは誤解なんですけどね。

 俺って誤解されやすい体質のようだ。


「お仕事も決まったし、感謝するわ」


 あ~、よかったよかった。

 クマさんパンツみたぐらいで殺されたらシャレにならんからな。

 ロリエット姫は仕事につけて、俺への殺意は感謝に変わったようである。


 こんなに褒められることって、俺の人生にあっただろうか?

 正直戸惑っている。


 でもこのままじゃ……俺、嘘つきになっちゃうよな。

 まあ、いいか。


 ところでミリアは俺を不思議そうな目で見ている。

 が、いつの間にか不敵な笑みに変わっていた……。

 何か良からぬことを考えているに違いない。

 きっと「お前が小物だって、わかってるんだから!」などとでも思っているのだろう。

 その見透かした態度は、どうにも気に入らないぜ!


「ロイド、お仕事ちゃんと手伝ってよね!」


「もちろんじゃ、よ~し、ナンパじゃなくてエルフ美女をスカウトするぞい」

「ちょっとロイド! エルフ族は皆んな純粋なんだから、騙したり変なことしちゃダメですからね!」


 思わず俺の顔が引きつった。

 俺、やばくね?

 騙すつもりはまったく無いし、ウソだってついてないんだけど……。

 誤解を解いたほうがいいかな?


 ……今更どうにもならないよな。

 そうさ、勝手に誤解してるのが悪いのだ。

 俺は悪くない!


「ロリエット、実はな……隠していたことがある……」


「なによ? ロイド!」

「実はな……ワシは王子なのじゃ」


 ロイドのじっちゃん、只者じゃないとは思っていたが。

 てか、70歳の王子とか違和感ありまくりなんですが……。


「嘘なんでしょ?」

「うん、ウソじゃ」


 ですよね~。

 もしかしたらなんて一瞬信じてしまいました。


 そんなロリエット姫は呆れ顔である。

 動じていないところを見ると、最初からわかっていたようだ。

 昔からそういう事していたんだろうな。





「もうすぐ到着です。荷馬車から離れないで下さい」


 俺たちは荷馬車にのってのんびり森の中を抜けてゆく。

 アンリエットさんは荷馬車を降りないでと注意をしてくる。

 森になにかあるのだろうか?

 ちょっと緊張感が漂う。

 

 すると一瞬視界が歪んだような気がする。


「はい、ここはもうエルフの里ですよ」


 ただ森の中を進んだだけのようであるが、明らかに雰囲気が変わった。

 おそらくエルフの里は結界のようなもので守られているのだろう。


 そして視線を感じる。誰かに見られている……。

 おそらく木の陰や木の上から隠れて俺たちを覗いている人、いやエルフ族がいる。

 

「心配ありません、いい人たちです。皆さん安心して出てきて下さい」

「「「人間だ! 人間だ!」」」


 周りから一斉に声が聞こえる。

 続々とエルフ族が姿をあらわし、俺たちの馬車を囲むように近寄ってきた。

 取り囲むエルフ族の大半は子供であった。

 人間を見るのは初めてなのだろうか?

 興味深そうに俺たちを観察している。


 最初は殺気のようなものも感じたが、今はもう感じない。

 人間を入れることはない里であることから俺たちは珍客なのであろう。


「こいつ奴隷か? 手錠付けてるぞ」


 俺のことだな。

 エルフの子供達は手錠をはめている俺をみて奴隷だと思っているようだ。


「違うよ、これは魔力制御装置と言ったところだ」

「変なの! お前、弱そうだな!」


 失礼なガキめ!


「俺の名前はリュージだ。結構つよいんだぞ」

「じゃ、僕と勝負だ! 僕はケント! いずれ勇者になる男だ!」


 子供ってやりづらいわ。

 ここは人間の威厳というものを見せ、ちと(おど)かしてやるか!


「未来の勇者を見逃すわけにはいかないな!」

「なにっ!」


「聞いて驚け、俺様は悪の大魔王、リュージ様だ。『グァ~ハハハ』」


 生意気なガキをちょっとビビらせてやろうという。

 ほんのジョークであった。


「であえ!であえ! みんな戦うぞ!」

「おいおいおい、ちょっとまて!」


 エルフ達は一斉に武器を構え、臨戦態勢である。


「心配ありません。それは嘘なんです。人間のジョークという嘘です」

「嘘なのか? なんで嘘つくんだ?」


 ジョークが通じない……。

 真面目すぎるぞエルフ族。


「子供にウソつくなんて、大人げないわよリュージ。嘘つきなのはこいつだけよ、嘘つきリュージと呼んであげて」

「「「嘘つきリュージ! 嘘つきリュージ!」」」


 ひどいじゃないか! ミリア君。

 てか俺だけじゃないだろ!

 ロイドのじっちゃんだって……


「オホホホ。嘘は良くないな。嘘は――」


 オホホじゃねーよ!

 この、裏切り者――――!



 そんなこんなで、俺たちはエルフの里に到着した。


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