第6話: 【1】クエストやりたい。
ホーンラビットの狩りを終えた俺は、魔石を換金するために冒険者ギルドへと向かう。
あの後コスプレ女が色々聞いてきたが、適当にあしらって追い払った。
彼女には悪いが、俺は一人で狩りをする方が性に合っているのだ。
それに気の強い女に振り回され、尻に敷かれるのはゴメンである。
◇
冒険者ギルドの前に来た俺は、再び立ち止まっていた。
「はぁ~、またここか……」
嫌な予感しかしない。
俺は魔石を握りしめ、いったん呼吸を整える……。
「よし! 行くぞ!」
と、いきがった割りにはビクビクしながら扉を開ける。
扉を開けるとおっちゃんはすかさずこちらを睨んできた。
スキンヘッドで葉巻ををくわえた姿はマジで怖いです。
しかしなんとしても魔石を換金し、竹槍を卒業したい!
俺は目線をそらしながらも歩み寄る。
ギルドのおっちゃんは怖いけれども、俺は勇気を振り絞って言った。
「あの、魔石の換金をしたいです!」
「ん、どこで盗んできた?」
え~、そうなるのか……。
「いえ、ちゃんとホーンラビット倒して取ってきたんです」
「そんなわけねーだろ、冒険者学校も行ってないお前がどうやって取ったんだ」
信じてもらえない……。
どうしようかと悩んでいると、後ろから聞き覚えのある元気が良い声がする。
「――じゃっじゃじゃーん!」
ウエスタンドアを勢いよく開けて登場するは、ドヤ顔がムカつくあの誘惑的女豹コスプレ女の姿であった。
まさか俺をつけて来たのか? そんなわけないか。
「こんにちわ、ガルシアさん、もう――葉巻の吸い過ぎはだめよ!」
「お、君か……君にはまいったな……」
「その子、狩りで取ったのよ。わたし横で見てたし、一緒にもやったわ」
「そうなのか?」
あのツルツル葉巻ボスを一撃で言いくるめるとは……。
この女、ただ者じゃないな。
「えぇ、だから換金してあげて」
「おいボーヤ、わるかったな。換金してやるぜ」
態度が一変し、おっちゃんの睨んでいた顔はもう無くなっていた。
しかし、坊や呼ばわりは変わっていない。
「えーと、3,4,5……5個だな。……ほら報酬だ」
数えてみると、たった500ゼルであった。
竹槍を用意して、狩場まで行って、時間かけて狩りしたのにこんな金額。
時給換算したら100ゼルぐらいか、アルバイトのほうが全然マシじゃないか。
「なんだ、どうした?」
「こんなに少ないとは……」
「これでもおまけしてやったんだぜ。ホーンラビットではこんなもんだ」
「で、ですよね……」
予想以上の少なさに、俺はがっかりしていた。
もっと強いのを倒さないとダメってことか。
「クエストでもやれば、普通の狩りよか、がっぽり入るがな」
「――クエストやりたいです! ――やらせてください!」
何も考えず儲かるという言葉に反応し、俺は返事をしていた。
とにかくお金稼いで武器を買わないと、だから何でもやってやる。
「ボーヤはまだダメだ。学校も行ってない、資格も無い、お前みたいな初心者にはクエストを出すわけにはいかない」
またそれか、いまさら魔法学校なんて行ってられない。
確かに俺が初心者なのは認めるが……。ところで資格ってなんだ?
「ねぇ、私がクエスト受けるわ! そして、この子を雇います。それなら問題ないでしょ? ほら……冒険者カードならあるわよ」
「君か、……それなら問題は無いが」
おお、なんという救い船。あなたは天使ですか!?
……あれ、何か忘れているような?
俺はその何かを考えつつ、女の子のほうを見てみると……。
――『ドヤ顔』
あぁ、思い出した。――この屈辱忘れるべからず。
このままではこの女の言いなりになってしまう――ダメだ。この条件だけは呑めない!
「なによ、その不満そうな顔は! ――私はあなたより強いし、美人だし、好条件だと思うの!」
いや、だから! 美人は余計だろ!
「もし、引き受けてくれたら……私の大切なもの……あげるわ」
(あげるわ...)
(あげるわ...)
何かいい響きが、脳を突き抜ける!
「これよ! 私の大切な物、でも成功の暁にはこれを差し上げてもいいわ」
その手には、立派な剣がそびえ立っていた。
――ちょっと待てよ、それは見たことがあるぞ。
これは! まさか、伝説の……。
「聖剣、エクス……カリバー」
「聖剣かはわからないけど。――良い物よ」
聖剣、異世界、そしてクエスト。
なんか、冒険らしくなってきたじゃないか!
「おっちゃん! 俺やるぜ!」
「そっか。じゃ、このリストからレベルに合うものを選びな」
「――ちょっと待って! もうクエストは決まっているの、――これよ!」
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ラッキーベアー討伐【クエストランク:D】
条件 : 2名で討伐(助っ人1名)
基本報酬 : 20,000ゼル
ドロップ : 不明
出現場所 : ビソチア遺跡
内容 : 召喚して討伐するのみ。
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やりたいクエストは既に決まっていたようである。
コスプレ女は依頼書をカウンターに叩きつけ、俺に同意を求めてくる。
「もっと簡単そうなやつからやらないのか?」
「武器欲しいでしょ? 最初にこれをクリアするの! これが私の条件よ!」
ランクEとかFがあるのに、いきなりDランクからで大丈夫なのだろうか?
しかしこれをやらないと、武器が貰えない……。