2ノ第12話: それは悪魔の水
俺はリュージ。温泉を破壊した犯人です。
最悪なことに、温泉を仕切る壁を破壊した噂は、一晩で街中に広まった。
インターネットじゃあるまいし、拡散が早すぎです。
と……、おもわず愚痴ってしまった。
◇
温泉で死の花園が見えたが、気がつけば布団の中。
そして清々し――くない朝を迎えた。
ふぅ~、俺はまだ生きていたようだ。
ミリア達には半殺しで済んだようだが、このあと俺は宿の人に殺される。
というのは大げさか。
温泉を仕切る壁の修理費を払いさえすれば許してくれるだろう。
しかし温泉が使えなくて修理している間は営業できないとかになったらかなり怒られそうである。
「はぁ……」
「気にするな。元気を出しなされ」
ロイドのじっちゃんは落ち込んでる俺を励ましてくれる。
ロイドじっちゃんは裸が見れてご満悦みたいだが、俺は気が重いよ。
そういえば、この宿は俺たち以外に泊まっていた様子が伺えない。
温泉は貸し切り状態だったし、ロビーや通路など人気が感じられない。
――潰れるんじゃね?この宿!?
俺のせいで温泉が使えず営業停止に追い込んでしまい、これをきっかけに店じまいとか……。
メーサーキャンプ地の温泉宿を潰した男として、俺有名に……。
「ここ、出入り禁止だな……」
「大丈夫じゃよ。なんとかなるじゃ」
何を根拠にそんな大丈夫だと言えるのだ。
「オホホッ」
オホホじゃねーよ、俺の身にもなってくれ!
◇
宿の精算のためにフロントカウンターへ向かった。
肩を落とし足取りは重かった。
そして奥から支配人らしき偉そうな男性が、やたら低姿勢で現れてきた。
「これはこれはロイド様。そしてこのかたが噂のリュージ様ですね」
「すいません。ごめんなさい。もうしません」
はいはい、私が噂のリュージ様です。
俺は全力平謝りを決め、なんとか穏便に済ませようと試みたが、思ってもみない返事が帰ってきた。
「何を仰いますか、リュージ様は神様です!」
「ん?」
「お食事の用意ができております。こちらへどうぞ」
「んん??」
なにかおかしいぞ。
素泊まりプランだったはず。
節約したいから素泊まりで予約したはずが、なぜか食事がついている!?
てか、いま神様とか言われなかったか!?
何が起きてるの?
「リュージ様のおしえの通り、混浴で営業すると言ったら。予約殺到で大繁盛ですわ~!」
「そうじゃろ~、そうじゃろ~」
んんん???
「リュージ様の手腕に旅館一同、心から感謝いたします」
「オ、ホッホッホッ」
オホホじゃねーよ。一体何が起きているのだ。
怒られるのかと思いきや、感謝されているではないか。
「ロイド師匠。これは……一体?」
「オ、ホッホッホッ。なんとかなると言ったじゃろ」
オホホのロイドじっちゃん、うまいこと言ったのか!?
「経営が危うかったですが、これで救われます!」
混浴風呂だけでそんなに繁盛するもんかね?
まあ、予約殺到なら何よりだ。
それで助かったんだし、なんでもいいや。
「まぁまぁまぁまぁ、とりあえずお食事をどうぞ。姫君たちは既に席でお待ちでこざいます」
こうして俺たちはテーブルいっぱいの豪華な朝食にありつけたのである。
◇
「美味しかったわね~」
「そうじゃの~、これでお酒があれば最高なんじゃがの~」
どうやらお酒好きのロイドじっちゃん。
朝から飲む気満々である。
すると勢いよく隣の部屋からおっさんが飛び込んできた。
「待っていましたロイド様! お酒でございます」
「お、頂いていいのかの?」
「もちろんでございます」
どうやらこのおっさん、隣の酒場の店主らしい。
そこの扉の向こうが酒場になっているようだ。
扉で酒場と繋がっているなんて、前にもこんなのを見たことあるようなきがする……。まるでデジャブー。
これは、嫌な予感がする。
フラグ立たないように大人しくしていよう……。
「ロリエット、一杯どうじゃ!」
興味津々にゆっくりと手を差し伸ばすロリエット姫。
それを止めようとするアンリエットさん。
「ダメです姫様! それは人間が飲む、悪魔の水です」
アンリエットさんの保護者スイッチが入った。
まるでお母さんかのようにロリエット姫を食い止めようとしている。
「ちょっとなら大丈夫じゃよ。美容にもいいぞ。健康だっけか?」
悪魔の水だけに悪魔の囁きってか?
まあ飲みすぎたらアルコール依存症になって、言う通りの悪魔の水になるのは間違っていないであろう。
ちなみに俺も勧められたが、俺は断った。
別にお酒が嫌いというわけではない。
そもそもこれから冒険行くのに酔っぱらってる場合ではないのだ。
ところで、お酒を飲んでパラメータが上がるとかあるのだろうか?
酔拳じゃあるまいしお酒飲んで強くなるとか、まず無いだろう。
お酒なんて要りません。
俺のオススメはやっぱりこれ!
『リカバリィタンD』 【あなたの魔力がミルミル回復しちゃいます!】
キャッチコピーは【魔力ハツラツ! 夜もバッチリ!】
もしかして……、もう俺はリカバリィタンD依存症なのか!?
「ほれほれ、大人はみんな飲んでるんじゃぞ」
ロイドじっちゃんの誘惑は続いていた。
そんな誘惑に負けて姫様の手が伸びる。
「ロイドがそう言うなら、飲んでみようかしら」
「ダメです姫様!」
「子供扱いしないで! 私はもう立派な大人よ!」
偉いけんまくでアンリエットさんを押し退け、お酒を飲みだした。
大人という言葉に反応したとしか思えない。
推定70歳なのに、見た目は子供。しかもロリっ子。
そういえば、研究所の時に履いていたパンツは熊さんのパンツ。
やっぱり子供だな。
『ヒクッ』 もう目つき変わってるし。
お酒初体験ならそんなものか。
そして悪魔の水は猛威をふるい、その悪魔ぶりに思い知らされるのである。
誰がだって?
……飲んでない、俺へ




