2ノ第9話: 暗殺美女と魔法陣
エルフの姫様が乗った馬車が壊れてしまい、こちらの荷馬車で一緒に移動することとなった。
そして地平線の彼方へと続くビソチア街道を俺たちは進む。
「乗せていただいて、ありがとうございます」
「構わんさ、旅は多いほうが楽しいじゃろ?」
俺が頼んだときは「のんびり一人旅が好きだ」とか言ってた気がするが気が変わったのか? 確かに大勢になって賑やかで楽しいかもしれない。
御者のロイドじいさんと、俺と、そして5人も美女を乗せた荷馬車。この荷馬車には気がつけば7人も乗っている!
おっと、中には俺への暗殺を目論んでいるエルフ美女が混ざっている。
しかし、ロイドじいさんと再会できた今、ロリエット姫は幸せのはず……。
と言うことで俺は願う!
俺への殺意はもう消えていると……。
「ロイドまた新しいパーティー作ったの?」
「わしは一人旅じゃ。この者たちは乗客じゃよ」
「リュージくんが居なくなったら、またハーレムだわね! ロイド」
「冗談はやめてくれ。もう昔のわしとは違うのじゃよ。大人だからな。いやおじいちゃんだけどな」
やっぱ俺を消そうとしてるんでは……。
「ねえ、アンリエット」
「はい、姫様」
「この者たちをエルフの森にご招待しましょう」
「人間を森に入れるのですか?」
「この者たちは恩人です。歓迎しましょう」
「そうですね。おもてなししましょうか」
「エルフの森いきたいにゃ~」
「リュージ行きましょうよ! ねえリュージ」
「それじゃお言葉に甘えて……」
こうして俺たちはエルフの森に招待されることとなった。
人間を入れることはないと言われるエルフの森にいけるのは、とても貴重な体験ができそうである。
「楽しみだな」
「でも、動き回って迷子になるのだけは気をつけてください。森は人間に優しくありません。死ぬわよ」
まさか俺を森で始末する気じゃないだろうな……。
「やっぱりエルフの森へ行くのやめよう!」
「心配ないわよ、わたしがついているから」
それが一番心配なんです……。
ロリエット姫の本意は気になりますが、下着を見られたぐらいでさすがに殺すことはないだろう……とは思っているが果たして……。
そんなことより、俺の興味はロイドのじっちゃんの魅せた魔法陣の方である。
アニメの中の空想的なものだと思っていたが、魔法陣が実在するとは。
まあ、ここは魔法が存在する異世界。そんな事があってもおかしくはない。
今考えればロイドのじっちゃんはビソチア街道を一人で渡ろうとしていた。
護衛もつけずおじいちゃん1人で渡るのは危険だと思ったが、あれだけの強さなら護衛を付けないのは納得できる。
ロイドのじっちゃんに弟子入りしようかな……。
魔法陣があると分かってしまった以上、俺もやりたくなってしまった。
何しろ見た目がいいじゃないか!
「ロイドさん。魔法陣ってどうやるんですか?」
「企業秘密じゃ」
そうですよね。
そう簡単に必殺技を教えてくれるわけ無いですよね。
いや待てよ、見た目がいいからと言って俺は浮かれているのか。
威嚇ならともかく、対人戦で使ったら目立つだけで逆効果。
でも……、あの魔力弾は明らかに威力が上がっているように感じた。
やっぱり、知りたい!!
「ロイド様! もう一度魔法陣を見せて頂けないでしょうか?」
「そんな安安と見せるもんでは、ないのじゃよ」
そうですよね……。
「ロイドさん」
「なんじゃい? マリアちゃん」
「わたしも見たかったです」
「ん~……」
悲しそうにうつむくマリアちゃん。
「おじいさんの魔法陣。とても格好良かったです」
「うへへへ、そうじゃろ~、そうじゃろ~、仕方ないの~。特別じゃぞ! 一回だけな、一回だけだからな」
「わーい」
マリアちゃんグッジョブだ!!
さっきは戦闘中であまり見れなかったから、今度はじっくり見てやり方を盗んでやる!
「では、やるぞ」
ロイドさんは荷馬車を一旦止めて、右手を草原に向ける。
すると右手に魔法陣が現れだす――。
魔法陣は回転しながらエネルギーを呼び寄せているようだ。
魔力弾は徐々に大きくなりそして解き放たれる。
草原に向けて飛び立った魔力弾は地面で炸裂した。
見事な魔力弾であった。
通常の魔力弾と見た目はさほど変わらないが明らかに威力が上がっている。
これが魔法陣の力だというのか!
「今ので30%の力じゃ!」
「なんと!」
「こんなの初めてです!」
あれで手を抜いていたとは……。
ところでマリアちゃんにはどのように見えているのだろう?
魔力の見えるマリアちゃんには俺とは違ったものが見えているに違いない。
「じゃろう、じゃろう、もっと見せちゃうぞ」
安安と見せないとか言っておきながら、魔法陣のたたき売りしてますね。
せっかくだからよく観察させて頂こう!
「ほらほら、すごいじゃろ。もう一回見るか?」
何度も何度も魔法陣を繰り出すロイドじっちゃん。
それを見ているマリアちゃんは大喜びである。
俺はというと、マジックを見破るかのように真剣に凝視していた。
しかし、どのようにやっているのかさっぱりわからなかった。
「よ~し、次は全力だしちゃおうかな!」
「ロイド! ちょっと調子に乗りすぎよ!」
ロリエットさんはロイドさんのお尻をつねりだした。
「イデデデェ」
「若い子見ると、すぐ調子にのるんだから! 森に埋めるわよ」
「ロリエット冗談きついの~。そんなところは昔からかわらんの~。でもそんなロリエット、わしは好きじゃぞ」
俺には冗談に聞こえませんがね……。
そうこうしている間に俺たちの荷馬車は経由地であるメーサーキャンプ地にたどり着いた。




