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2ノ第3話: 転移者と転生者。

2ノ第3話: 転移者と転生者。


「久々のコミケ楽しみだわ!」


 家族よりも恋人よりも大切なコミケ。

 オタクのパワーは愛のパワーを遥かに凌駕する。


「これは忙しくなったわ! 今すぐにでも実行したいけど、その前にやらなきゃいけないことがいっぱいあるの! 明日準備が出来たら呼ぶわ!」


 マーガレットさんは忙しそうに身支度を整えだす。

 そう言えば、マーガレットさんが気になることを言っていたのを思い出した。

 

「この世界への転生候補者リストがあると言ったよね?」

「えぇ、そうよ」


 転生候補者リストたるものが存在したということは。

 俺は偶然異世界に転生したのではなく意図的に転生させられたと考えられる。


「そうだわ、アナタの冒険者カードを見せてちょうだい」


 俺の冒険者カードを注意深く見るマーガレットさん。


「見た目は他と同じだわね」


 冒険者登録を行うときに「既にアカウントが登録されています」と言われ、更に俺の冒険者カードは凍結されていたのだ。

 何のために冒険者試験を受けたんだみたいなところはあるが、それはおいといて、あのときはめちゃめちゃ怪しい目で見られてしまったよ。

 マーガレットさんも当然俺の冒険者カードが怪しいと思っているのだろう。


 俺の冒険者カードは普通とは違う何かがあるのだろうか?


「アナタの冒険者カードは都市伝説だった一桁ナンバーよ」


 この世の中に出回っている冒険者カードは10番以降らしく、一桁のナンバーは存在しないと思われていたらしい。

 そして俺の番号は『02』。


「一桁の冒険者カードは無いと言われていて、昔に私も調べたわ。だけどその時は見つからなかった。それもそのはず、頭に『0』(ゼロ)が付いているんだもん。夢にも思わなかったわ」

「俺の冒険者カードにそんなヒミツが……」


「私の推測する限り頭に『0』が付いている冒険者カードは転生者だわさ」

「俺以外にも居るのか?」


「『01』はおそらく居るわ。でもデータは消され誰かも分からない。もしかしたらもう死んでるかもね」

「怖いこと言わないでくれよ……」


「まあ、私が思うに深入りは禁物。知らないほうが幸せってこともあるだわさ」


 ガサガサと何かを探しながらつぶやくマーガレットさん。

 俺を見て真剣に警告するわけでもなく、軽くつぶやいている。

 しかしマーガレットさんの言葉に、俺は妙に説得力を感じた。


 知らないほうが幸せってあるかもしれない……。

 そう、俺は冒険できれば満足なんだ。それ以上は望まない。


「あったわ! これよこれ!」


 何かを探していたようだがどうやら見つけたようである。

 机の引き出しから小さなIC(アイシー)チップのような物を取り出す。

 何をするのかと思いきや俺の冒険者カードに装着している!


「これは、『テレパSIM(シム)』と言ってこれでテレパシー通信が可能になるわ」

「なんとー!」


【聞こえますか?】


 うわ~気持ち悪い! 頭の中で声が響き渡る。

 スピーカーが脳に埋め込まれた気分だ……。


【22歳、独身! 彼氏居ない歴22年。処女は今日で終わり】


「ちょっとマーガレットさん冗談はやめてください!」

「聞こえたようね! 私の理論は間違ってなかった。うまくいったわ」


 何という技術だ……。

 古代文明の遺物は遥かに俺の知る科学を凌駕している。

 というかこれはマーガレットさんが発明したのか?

 頭が良くてわりと美人な大人の女性。


【こうして見てみるとマーガレットさんも意外とイケてるよな。もったいないことしたぜー】

【ウフッ。ありがとう】


「なんとー! 声が漏れてしまったのか! 今の無し無し」

「私を意識してテレパシーを送ってくれればこちらにも届くわ」


「なるほど、そういう仕組みなんですね」

「それじゃ明日。準備が出来たら呼ぶわ」


「了解。じゃ帰るね」


 俺はドアを開けて部屋を出ようとする。


「まった! ここは男子禁制の研究所内部よ! 見つかったら殺されるわよ」


 おいおい待て待て、危ないじゃないか!

 どうしたらいいんだ?

 

「転送装置で飛ばしてあげるわ」

「おお! それは便利だ助かるぜ」


「そこに座って」

「待て待て、冒険者ギルドへ飛ばされたら、俺殺されちゃうよ!」


 まだガルシアさんが怖い顔して待ち構えているかもしれない。

 せっかく逃げられたのに、また冒険者ギルドへ行くのはゴメンだ。


「そうね~。それじゃ、ミリアの元へ飛ばしましょうか? 私の改造したこの転送マシーンならたぶん(・・・)いけるわ」


 今『たぶん』がついてましたよね……。

 100%じゃ無いってのはちょっと問題あるきがします……。


「まあ、死ぬことは無いわ!」

「そうですか……それじゃお願いします」


 マーガレットさんはパソコンのような古代文明の遺物に向かい、呪文のようにブツブツと言いながらキーボードをカタカタと叩く。そして


「転送開始!」


 いつものようにあたりが真っ白になり俺は転送された。

 今回は足が宙に浮いているようだけど……。

 

 まさかの転送失敗!?


 空中から落ちてゆく感覚を味わうと突然――バシャーン! と音を立てて俺は水浸しになっていた。

 

 しかしこれは水じゃない! お湯である!


 空間転移の影響により真っ白で何も見えないが、俺はお風呂の中に転送されたのだと把握した。

 マーガレットさんはミリアの元に転送させると言っていた。


 ということは……ミリアが入浴中である。ということなのか!?


「あなたどこから現れたの! キャー!」『バチン』


 声が聞こえるがビンタは見えない。

 まるで亜空間から飛んできたようである。

 あたりが真っ白のまま、意識が遠のいてゆく……。


 これはマーガレットさんに文句言わないと!

 この転送装置には決定的な問題があります。

 

【大事なシーンを見逃したじゃないか!】

【そんなにミリアの裸が見たかったの? そうよね~、私じゃ満足できないですもんね~】


 嫌味なテレパシーが俺の脳内を駆け巡る。

 

 テレパSIMで筒抜けだったようだ……。


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