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第41話: リベンジしたい。

「到着したわね」


 ラッキーベアーの出現ポイントである遺跡に到着した。

 今思えばここの遺跡は神秘的な場所である。

 

 遺跡の奥にはピラミッドがそびえ立ちその周りを囲むように遺跡が広がっている。ピラミッドは比較的小さく、高さが10メートル程の小さいピラミッドで、中央の階段から頂上までのぼれるようになっている。


 古代の参拝者はその階段でピラミッドの頂上まで登り、神に祈りを捧げて居たのかもしれない。


 日本で言うならば、神社のようなところなのだろう……。


「ここからやり直すぜ」


 思えば俺の冒険は竹槍から始まった。

 前にこのラッキーベアーとの戦いで、自分の不甲斐(ふがい)なさに嫌気(いやけ)が差していた。

 

 そんな過去の俺に決着をつけるためにも、竹槍で始まった冒険を、竹槍で決着つけたい。


 俺なりのケジメ、と言うか意地ってやつだ。





 <<クエスト進行者リュージ、助っ人メアリー。承認しました。>>

 <<クエストを開始します>>



「まずは、うちがやりますにゃ!」

「気をつけるんだぞ、絶対に無茶だけはダメだ」


「大丈夫にゃ、ミリア先生との修行の成果をみせるニャ!」

「どんな内容だったの?」


 俺は前に妄想した修行内容を思い出す。

 【――敵がこうスッと来るわよね】

 【――そこをグゥーッと構えて腰をガッとすのよ】

 【――あとはバァッと言う感じでガーンと打ち込むの!】


「ごめん、なんでもない。 『行くんだ! メアリー!』」



 メアリーは戦闘態勢に入った。

 メアリーの姿勢は徐々に低くなり、その姿勢は野生の猫が獲物を狙うかのように静かである。

 さすが猫耳族と言ったところだ。


「スッ~にゃ~」


 ――足を蹴りだし前に進むと、一気に前傾姿勢となる。


「グゥーッにゃ~」


 ――と同時に前傾姿勢のメアリーは手を使い地面を四足歩行(そくほこう)で捉えて加速してゆく。

 その後の足運びはとても速く、俺の目では追えないほどである。


「バァッ~にゃ~」


 一気にトップスピードに入ったメアリーは、ラッキーベアーに体当たりを浴びせた!

 

「ガ~ンにゃ~」

 

 強烈なインパクトによりラッキーベアーはよろめき、驚く。


 小さな体で大きな相手に体当たりを食らわすそのさまは!まさに――

 

 無謀(むぼう)


 そしてメアリーは大きく弾き飛ばされている……。

 というか、チャリンコで車に突撃したようなものだ。

 

 しかしメアリーはその類稀無(たぐいまれぬ)運動能力で体勢を空中で立て直し、直ぐにラッキーベアーへ向かってゆく。

 そして強烈な猫パンチを百烈拳(ひゃくれつけん)かのように連打で浴びせるのであった!

 

「ニャニャニャニャニャニャぁあ~~」


 利いているのか、効いてないのかはわからんが、とにかくすごい攻撃だ。

 

 ――とその時であった。

 ラッキーベアーは強烈な一撃で反撃しようとする姿が目に入った。

 おれは前に戦ったことがあるので直ぐにわかったのである。


 慌ててメアリーの救済に入ろうとした瞬間――

 メアリーは大きく後ろに飛んで危機を回避したのであった。


 動物的の感なのか、一瞬でメアリーは危険を察知し距離を取ったのである。

 

「メアリー、選手交代だ!」

「わかったニャ、ご主人様」


 俺はラッキーベアーとメアリーの車線上(しゃせんじょう)に割り込み身構える。


 ラッキーベアーは勢いをつけ突進してくる。


 今の俺は昔の俺とは違う!

 そして、全身強化もさらに一段階進化している。

 

 全身強化を行いつつもそれを維持し、さらに竹槍に魔力を送り込む。

 竹槍は、軽く、固く、そして鋭く、変化している。

 まるでセラミックのようであるかのように……。


「うぉ~」


 俺はその竹槍を新体操のバトンのようにくるくる回す。

 きっとカンフー映画のように華麗(かれい)に見えているに違いない!


「あちょ~」


 そして竹槍を右手で持ち、隠すように体の裏へと回す。

 若干半身(はんみ)状態でラッキーベアーの突撃を迎え撃つ。


「真っ向勝負だ!」


 それは、相撲取りが正面きって激突するかのようにだ……。


 俺は微塵(みじん)も避ける気などない! 受けて立つ!

 おそらくラッキーベアーも同じ考えだ。

 その場の空気が、そう感じさせたのである。


 もしかしたら俺の言葉を理解しているかもしれない……。


「グォォォー」 ラッキーベアーの唸り声がこだまする。


 ラッキーベアーは加速を増し俺に襲いかかる。

 俺は、いよいよ激突だという瞬間――

 

『スッ』――と姿勢を低くし、懐に潜り込む。


 そして……

『グゥーッ』――と腰を構えて『ガッ』と力を貯める。


 俺は左肩をラッキーベアーの胸元にむけ――

『バァッ~』――と言う感じに鋭く踏み込む。


 ラッキーベアーの胸元を――

『ガーン』――と肩で突き上げる。


 激しい衝突音と共にお互いはノックバック(のけぞり)状態に入る。

 ラッキーベアーの、のけぞる姿はお腹を丸見えにさせており、後ろに転ばないよう必死に耐えている。


 狙い通りである!


 弱点をあらわにしたラッキーベアーが体勢を取り戻す前に、俺は竹槍を胸元に向け突き出す!


「いくぜ!」


 狙いは『アバラ3枚』、いわゆる(しん)(ぞう)だ。

 その呼び名は、マタギ(狩猟を専業とするもの)が使う言葉である。

 彼らは心の臓を『アバラ3枚』と呼び、位置はクマに対して左側から肋骨(ろっこつ)3枚目が目安ということだ。



「スペシャル必殺竹槍アタック!」



 おれはそこをめがけて突き出し、そして(つらぬ)いたのである。

 そして俺はラッキーベアーを倒した。



「もう会うこともあるまい……。 あばよ! ラッキーベアー」

「その竹槍を持って格好つけられても、微妙なのよね……」


 『ショボーン。』 すかさずミリアのツッコミが入りました。


「変態ご主人様かっこいいにゃ!」


 おお、分かってくれるのはメアリーだけだよ!

 お前は俺に似ていい冒険者になるぜ!

 ところでその『変態』ってのはいつになったら取ってくれるんだい?


 まあ良いのだ、今は清々しい気分なんだ。

 過去の俺よ、さらば。


 俺は前に進むぜ!



 ラッキーベアーを倒した俺は、報酬のドロップを待っている。

 ミリアはハズレを引いたっぽいが、二度もハズレを引くことはないだろうと信じ俺は期待した。


「よーし、報酬はレアドロップ頼みまっせ~!」


 するとアナウンスが流れる……


<<しばらく、お待ちください……>>


「なんだと~!」


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