第37話: リセットしたい。
あれから何日たったのであろう……?
毎日毎日、俺とミリアは第2ステージで狩りをしている。
俺たちにとって第2ステージのビックアントは、もう目をつぶっていても倒せるぐらい余裕な狩場である。
そんな単純作業の狩場で会話という会話はほとんど無く、ただ黙々と狩りを続けるのだ。
そんな生活が日々繰り返された。
永遠とゲームのレベル上げだけをしているかのように……。
来る日も来る日も……。
来る日も来る日も……。
来る日も……、来る日も……。
……
◇
「そろそろ帰りましょうか……」
「そうだね」
狩りを終えてアジトへ戻るとメアリーが出迎えてくれる。
そして3人でテーブルを囲み夕食会が始まる。
まるで家族のようである。
結婚もしていないし子供も居ないが家族というものはこういうものなのだろうか……?
今の生活になんの不満もない!
お金も宿も家族同然の仲間もいる。
俺はとても満足している……。
そして夜が過ぎ、変わらぬ朝を迎える。
一日の行動はほぼ決まっている。
俺とミリアは第2ステージで日々の生活費を稼ぎ、夕暮れになったらアジトに帰る。
でも今日は違っていた。
「ごめんリュージ、今日は体調が優れないの」
「無理することは無いよ、アジトで休んでなよ」
疲れがでたのでしょうか、ミリアは体調を崩してしまった。
そんなミリアの分も頑張ろうと俺は一人で第2ステージへ向かった。
第2ステージならば俺一人でもなんとかできるそんな狩場である。
いつもは夕暮れになれば帰るのだが今日の俺は残業をした。
ミリアが稼げなかった分も俺が頑張ろうと思ったからだ。
「おかえりなさいませご主人様」
「おかえり、リュージ」
「ただいま! ケーキ買ってきたよ!」
「わーい」
メアリーは喜んでくれたがミリアは元気がない。
俺はミリアの容態が気になっていた。
「ミリア体調はどうだい?」
「ええ、なんとか大丈夫。今日はごめんね……」
病気とか怪我ではないようだ。
もしかすると精神的なものなのかもしれない……。
「ミリア心配ないよ、俺がミリアの分も残業で稼ぐから!」
「ワタシ。足引っ張っているわよね……」
「そんな事ないって!」
「その優しさが辛いわ」
俺は今の生活に満足している。
ダンジョンで狩りを行い。そのお金で生活までできる。
俺の望んでいた冒険……のはずだ……。
「ねえ、リュージ。最近のあなたって、変わったわ」
ダンジョンのレベル上げというのはこういうもんだ……。
「ねえ、リュージ。最近のあなたって、変だわ」
前世で廃人ニートの俺にとっては、長時間のレベル上げなんて変じゃないさ。
「ねえ、リュージ。最近のあなたって、変態だわ」
「調子が戻ってきたようだな! そうやって俺をイジメるが良い!」
「いえ、もうそういうことは辞めるわ」
「なんだと!」
「わたし、ここ出ようかと思うの……」
「えっ……。」
俺は動揺した。
今まで感じたこともない動揺が襲っていた。
「こうなったのも、わたしのせいだわ、そんなリュージはみたくない」
なんかフラれた。そんな気分であった。
彼女を持った経験は無いが、フラれる瞬間というのはこういう感じがするものなのだろうか……。
それを見ていたメアリーが心配そうな顔でしゃべりだす。
「お姉さま出ていっちゃうのかにゃ……」
「うん、私がここに居ちゃダメな気がしたの」
「うちを置いていかないでにゃ」
「それじゃ、わたしと一緒に来る?」
メアリーは戸惑う。
「待ってくれミリア、それなら俺がここを出る!」
「あなたが出てどうするのよ!」
「ご主人様まで……にゃぁあぁあぁあぁあ」
メアリーは泣き出してしまった。
「2人一緒じゃなきゃいやだにゃぁあぁあぁあぁあ」
俺とミリアは言葉を失い、メアリーは号泣している。
……。
しばらくの間なにも会話が無く、メアリーの泣き声だけが木魂している。
◇
どうしてこうなってしまったのだろう……。
俺は考えた……。
人生にリセットは利かない。
しかし方法があるかもしれない!
ここで皆がバラバラになるのだけは絶対にダメだ。
そんな気がする!
「リセットだ!」
「えっ?」
「こうしよう! まずこのアジトを捨てよう!」
「捨てるの?」
「うん、ダンジョンも辞めだ! 一度リセットして新たに冒険しよう。3人で」
「本気??」
「おぅ、本気も本気。確かに最近の俺は変だったかもしれない。ちょっと初心に返ってみる。そして新たな冒険をしよう」
俺はいつの間にか守りに入っていたのかもしれない。
安定なんて求めちゃいけないんだ!
「わたしをワクワクさせてくれるのかしら?」
「おぅ、してやんよ! 任せとけ!」
「期待しちゃうわよ♪」
ミリアの様子が変わった。
これは俺の知っているいつものミリアだ。
「なんなら魔王でも倒しに逝くか!?」
「いいわね! なんかやる気が出てきたわ」
「それじゃ、魔王討伐に向けて出発だーー!」
「でもね……魔王なんてこの世に居ないわよ」
「えっ~~~~~~」
「ウフフッ」
「メアリーも来てくれるか?」
「もちろんニャ!」
「しかし今までみたいにお給料は払えなくなるぞ」
「『ついていきますニャ!
お給料いらないニャ!
うちも働くニャ!
冒険者になるニャ!
今度は、ご主人様へ恩を返す番ニャ!』」
「メアリーは良い子ね~、私がぎゅってしてあげる」
「嬉しいにゃ」
「それじゃメアリー明日から特訓よ! この私が直々に教えちゃうんだから。これからは先生と呼んでね」
「はいニャ! ミリア先生!」
「うぅ~ん、いいわっ~、この感じ! 私って先生に向いていると思うの。学校の理事長やっていたからね。先生たちには止められたけど、わたしは絶対先生に向いていると思うわ♪」
わかる、わかるぞ、俺にはわかる!
――例えるならこうだ……。
【――敵がこうスッと来るわよね】
【――そこをグゥーッと構えて腰をガッとすのよ】
【――あとはバァッと言う感じでガーンと打ち込むの!】
【いわゆる……、ひとつの……、直感ってやつだわっ!!】
たぶんこんな感じの修行をするんだろ? な、ミリア先生よ!
「それじゃ、朝起きたら、スッと行って、グゥーッっとやって、バァッという感じに、ガーンとキメるわよ!」
「なるほどニャ! わかりやすいニャ! ミリア先生は天才ニャ!」
――はい! 天才が2人に増えましたね。




