第36話: パーティーしたい。
「この部屋を使ってくれ」
なんなら「俺と一緒に寝ようか?」などと冗談言いたかったが、ベットまで連れ込んだら犯罪だからな。
さすがに俺だって、そんな変態行為はしない。
それに俺には俺様専用ベットという恋人がいる。
手錠で繋がれていなくとも、俺たちは繋がっているのだ。
「さて寝よう……」
メアリーを余っている部屋に案内し、俺たちは就寝についた。
そして『悲劇的』な朝を迎える……。
◇◇◇
朝目が覚めると俺はベットの感触を確かめる。
このベットは大きくて柔らかいとても好感触なベットで、一夜を共にするには最高のベットである。
なにより温かみを感じるベットだ。
そう、昨日よりも全然温かいのである!
……ナゼだ?
おれは異変に気がつき布団の中を覗く。
すると布団の中にはメアリーが、猫のように丸まり俺に寄り添っているではないか!?
「おはようぅ~、リュージ」
「おっ、おっ、おはよう...」
こんな早い時間に眠たそうな声でミリアが起きてきた。
俺の布団の中にはメアリーが……。
今この状況ってヨロシクない気がします……。
「リュージが手錠してないと思うと、ちょっとドキドキしちゃったわ。リュージは変態さんだから、夜這いとかされちゃうかも……なんて」
その言い方だと「夜這いしても良かったのよ」みたいな言い方だな。
しかし俺も命は欲しいからな、そんな無謀なことはしないさ!
「ごめんねリュージ。もう手錠なんかしないわ!」
「あ、ありがとう」
「あなたを信じてよかったわ!」
すると俺の布団の中のメアリーが目を覚ます。
――と同時に、元気よく布団を持ち上げ布団が吹っ飛んだのだ。
「むぎゃ~、気持ちよかったニャ~」
「ちょっとあんた! 見てないスキに幼女連れ込んでヨロシク決めてるってどういうことなの!?」
「ち、ち、違うんだミリア! 一線は超えていないっ!」
当然なんだろうが、俺は手錠で拘束された……。
◇
――その後は大変でした。
ミリアに経緯を話し、『どうしてこうなった』のかを必死に言い訳する。
ミリアは不機嫌そうだが、なんとか納得はしてくれたようだ。
ミリアが猫耳族に好意を持っている事は前日の行動で知っているので、メアリーが同居することには賛成してくれると思っていた。
――そして俺の危機は免れ、3人での同居生活がスタートしたのである。
◇
「それじゃ気を取り直して、狩り行きましょうか!」
第3ステージの敗北から一夜明け、俺とミリアは第2ステージで狩りを始めるのであった。決して第3ステージを諦めたわけではなく、第2ステージで日々の生活費を稼ぎつつ、第3ステージ攻略の為の修行をしているのだ。
それにメアリーの分も稼いで、お給料を支払わなければならない。
今俺達に出来る最善策はこれだと判断した。
俺たちはめいいっぱい第2ステージでお金を稼ぐのであった。
「今日もいっぱい稼いだね」
「そうね、第2ステージで狩りをしてれば生活は安定しそうね」
「あっ、そうだ、メアリーの歓迎会しようか?」
「いい考えだわね!」
「どんな風にしようか?」
「それじゃ美味しいものをいっぱい買っていって、アジトでパーティーしましょう!」
「パーティーいいね!」
「いっぱい買うわよ~」
「全部ケーキ買うつもりじゃないだろうな!」
「えっ~、じゃケーキは一人あたり2個でどうかな? ……どう? どう? リュージが残したら私が食べてあげるから大丈夫よ」
この底なしの別腹は、どこの異次元につながっているのでしょうか!
「わかった、わかった。それじゃ買い出しに行こう」
「わ~い!」
◇
買い出しを終えた俺達はアジトへ帰った。
玄関を開けるとメイド服でメアリーが出迎えてくれる!?
「おかえりなさいませご主人様、ミリア様。ご飯にするかニャ? お風呂にするかニャ? それともニャ……」
現実にこんな事があっていいのだろうか!
家に戻ると猫耳メイドが決まり文句で出迎えるのだ。
「今日もメアリーはカワイイわね。
メアリー、みてみてっ! ……じゃっじゃじゃーん!」
そういったミリアは買ってきた料理を見せびらかす。
「美味しそうだにゃ~」
「メアリーの歓迎パーティーやるわよ~!」
「にゃんと! にゃんと! いいのかにゃ!?」
「まだまだあるのよ! ほら、牛乳にカツオ、キャットフードにツナ缶、デザートもいっぱいあるわ!」
「大好物だにゃぁ」
大荷物の料理を抱えてミリアとメアリーは楽しそうにダイニングテーブルへと向かった。
テーブルについた2人は買ってきた料理を広げだす。
こんなに買ってきた覚えはないのだがいつの間に増えたのでしょう……。
ところで、キャットフードは人間が食べても平気なのだろうか?
ここは異世界なのだから前世の主観で物事を考えてはいけない!
ものすごく美味しのかもしれない!?
さらに二人は料理を並べ続ける。
唐揚げにポテトサラダ、そしてフライドポテト、次々と並べてゆく。
この辺の料理は俺でも無難に食べられそうである。
それにしてもこれだけ大量の料理、果たして食べ切れるのだろうか……。
トドメは、デザートとデザートとデザートを並べ、最後にデザートのケーキを設置した。
うぅ――勘弁してくれ! 見ているだけでお腹いっぱいです……。
「それじゃ! メアリーの歓迎パーティーを開催したいと思います!」
「乾杯~!」
◇
あれだけあった料理もあっという間になくなり、メアリーの歓迎パーティーが終わった。
俺はめちゃめちゃ食った。今までにこんなに食べたことはない。
俺のお腹に別腹なんてものは無いのだから最後にデザート食べるスペースなんて空いてない。
が、あいつらは平然とパクパク食っていた。――恐るべき別腹。
「うぅ~、苦しい」
俺は食べ過ぎで苦しく、ベットで横になっていた。
するとミリアが手錠を持ってやって来るのである!?
――こっ、これはっ!
「メアリーが居るからね、変なことしないように今日は結ばせてもらうわ」
「変態ご主人様。――とても嬉しそうな顔だニャ」
お腹いっぱいで幸せなのだ、決して結ばれることじゃない!
「メアリー! 危険だから近寄っちゃだめよ! 今日は私と一緒に寝ましょう」
「わ~い。お姉さまと一緒。嬉しいにゃ~」
ミリアとメアリーには友情が結ばれたようだ。
こうして幸せな夜が始まる。
ミリアはメアリーと。
俺はベットと。
固く固く結ばれたのである。




