第31話: 初夜をしたい。
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ミリアと一緒になって、初めての『初夜』を迎えた。
今まで体験したことのない快楽が俺を襲う。
そして同じ屋根の下で朝を迎える。
そう! 俺達は一つとなり、固く固く結ばれたのである。
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こうして聞けば幸せを感じるが、俺は結婚をしていない……ただの妄想だ。
であれば、さらに妄想を膨らませミリアと結婚していた事にしてみよう!
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ミリアと一緒になって、初めての『初夜』を迎えた。
今まで体験したことのない快楽が俺を襲う。
手錠で縛られ身動きの取れない俺は、長い夜を放置される。
そして同じ屋根の下で朝を迎える。
そう! 俺達は一つとなり、固く固く『ベッドと』結ばれたのである。
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◇
「うわぁ~~」
自分の寝言にびっくりしたのか、俺はスパッと目が覚めた。
こんな気分の良い清々しい朝を迎えたのはいつの日以来だろう。
なんかすごく気持ちのいい夢を見ていたような気がする……が、なんだっけ?
まあいいか! さてトイレ行こうかな。
――あれっ!? 動けない!
そうだ、俺は、固く固く『ベットと』結ばれているんだった。
ミリアはまだ寝ているようだし、これは困ったぞ。
◇
『ガチャ』 玄関の扉の開く音がする。
始めはミリアが外出しているのかと思ったがそうでは無かった。
みしらぬ少女がアジトに入ってきたのである。
身長は低く138cmぐらいでメイド姿にデッキブラシを持っている。
赤い靴を履き、スタスタスタと小走りで歩く姿がとても可愛らしい。
人間とは思えない軽やかさで、まるで小動物のようである。
カギを持っているということは、この部屋の掃除に来たのでしょうか?
いわゆるハウスキーピングってやつでしょうか?
しかし、近くまできても俺がベットに居ることは気づいてないようだ……。
声をかけてみよう!
「あの!?」
「ぎゃーーー」
ビックリする様子から、やはり俺が居ることに気づいていなかったようだ。
ものすごい勢いで猫ジャンプし、帽子がぶっ飛ぶぐらいびっくりしている。
飛び上がったことで帽子が外れると、その中から猫耳が現れた!
なかなか似合うコスプレである。
俺はその猫耳を見つめているとある違和感を感じた。
「いまぴくっとした、見た? 見たよね? 今絶対動いたよ!」
俺の目は大きく見開き猫耳を凝視した。
「キャー、だめにゃ」
少女は猫耳を手で隠し、隕石でも落ちてくるかのように俺に背を向けた。
そして素早く帽子を拾いあげると、両手で深々と被り直し猫耳を隠す。
さらに俺はもう一つの異変に気がつく。
それはスカートの中からしっぽがはみ出ていることだ。
「しっぽだ、しっぽが付いている!」
イヤ、これは付いているんじゃない。――生えているんだ!
その証拠にゆらゆらと動いているではないか!?
気のせいじゃない。猫耳もしっぽも本物である!
そうだここは異世界なんだ、そんなことがあってもおかしくない!
「どうしたのリュージ!?」
悲鳴に気がついたのか、ミリアが起きてきた。
「あら、あなた……猫耳族ね。――カワイイ!」
「だめにゃ」
ミリアは背後から少女を抱きしめる。
ミリアは猫耳族と言っている、そんな種族が居たのか。
それにしてもこの子、物凄く怯えているように見える。
「お部屋の掃除にきたにゃん、今までこの部屋は誰も居ないと聞いていたのに、びっくりしたにゃん」
「なるほど、わたしたちは昨日から住みだしたの」
「ということは、うちはお払い箱かにゃ、これでお仕事もおわりなのかにゃ」
「う~ん……。」
猫耳の少女は少女アニメのようなおっきな目をウルウルさせている。
「大丈夫よ! 変わらずお掃除来てちょうだい。お給料ならリュージが払ってくれるわよ。――ねっ?」
ミリアのお仕置きはまだ継続中なんでしょうか……。
鋭い眼力に俺は屈服して返事していた。
「はっ、はいっ!」
「いいのかにゃ。いいのかにゃ。やったにゃ~。でも、うちは猫耳族ですにゃ……」
「大丈夫よ、私は疎外したりしないわ。リュージだってそんなことはしないし、させないわ!」
あとから聞いた話では猫耳族を嫌う人間も多く、疎外を受けるのも少なくないらしい。よって人目の少ないところの仕事を好み、ひっそりと生活をしている。
もし人間に見られると危険を伴うため、人間相手に仕事をする時は正体を隠してやっている猫耳族は多いと言う。
だが俺には、猫耳族が可愛すぎるというのが、逆に危険を作っているのではないかという疑問を拭いきれない。
「お姉さま大好きニャー!」
「いえいえ、お名前は?」
「メアリーにゃ」
「よろしくねメアリー。私はミリア、そしてこっちの変態さんはリュージよ」
「変態ご主人様。うちを買って頂きありがとニャ、ご奉仕しちゃいますニャ」
その誤解を招くような発言は止めなさい!!
う~、そう言えばトイレ行きたかったんだ……。『モゾモゾ』
「待ってね、手錠外してあげるわ」
ミリアはカギを手に持ながら俺を跨ぎ、再びマウントポジションでぺたん座りをする。
「ところで変態ご主人様! ……」
「なに?」
メアリーは言葉途中で硬直している。
そして一瞬目線が手錠に行ったことを俺は見逃さなかった。
これは分るぞ! ナゼ俺が手錠で縛られているのか?
そう聞きたいのだろう?
「朝からお盛んだニャ!」
ちょっとメアリーちゃん!?
誤解してませんか!
変な妄想しちゃだめですよ!?
「君が考えてるような不純な事ではないんだぞ! 決して俺は一線を超えていない!」
俺は何を言っているのだ……。――てか一線って何のことだ?
ミリアのことか? それとも『ベットと』のことか?
「もぅ~、動かないでっ! リュージ!」
「――は、早くしてくれ! 漏れそうだ」
「キツイ、うまく入らないわ」
「穴が小さすぎるんだよ」
「ぁんっ! サキッポ入ったわ」
「――そのまま一気に奥へと挿し込むんだ!」
「えいっ!」 ――『ガチャ』
ようやく固く固く結ばれた手錠が外され、ベットとのお別れの時がやってきた。
こうして俺のベットとの長い夜は、一夜の思い出となったのである。
「子供は真似しちゃ行けないぜ!」
「わかったにゃ、変態ご主人様」




