第30話: 束縛されたい。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
お腹が空いたのでDモール内のおしゃれなレストランでミリアと食事をするところである。
想定していたダンジョンとはかけ離れていたが、初ダンジョンでの狩りを終えた俺はやっと冒険者らしい生活がスタートできた。
――今の俺は充実している!
「わたしはこれをください」
おっと、ミリアはもうメニューを決めているようだが、俺は優越感に浸っていてメニューを全然みてなかった。
俺はメニューを眺めて美味しそうなお肉を探す。
銅貨は沢山持ってきているので値段の問題はない。
今日は記念すべきダンジョン生活の初日なのだから、自分にご褒美で高いお肉を食ってやる!
「これだ! これだな! 美味しそう! これにします!」
ちょっと待て……メニューの下に何か注意書きが書いてある。
『注)お支払はカードのみとさせていただきます』
まずいぞ。
「すいません、現金での支払いは可能ですか?」
「お客さん、それは困ります」
カードというのはきっと冒険者カードの事であろう。
さっき稼いだゼルは800……。――全然足らない。
今日は我慢して安い物にするしか無い。
――ちょっとまてよ、俺はごちそうするんだった!
ミリアの分も入れたらどのみち足らなくなるではないか!
ミリアの性格からしてこうなることを分かっていて、俺をいじめているのではないか?
「どうしたの? リュージくん」
ミリアは俺を見つめてはモニタリング大成功!
と言わんばかりのニヤけ顔をしている。
「いやそのー」
ミリアは両手をテーブルに乗せ、前屈みで身を乗り出しながら問いただしてくる。
「――どうしたのかしら?」
言わずとも答えはわかっているはずだ!
あえて俺からの言葉を待っているのは明白である。
(『謀ったな~!』 ミリアー!)
俺は深々と頭を下げ、ミリアにお願いをする……。
「ミリア様、お金を貸してください、なんならこの銅貨を担保に……」
「イヤよ、重いし荷物になるじゃない。それはしまって! 今回は私が払うわ」
最初から払う気でいたんだろ……。この小悪魔め!
「それで、ご注文は?」
「変更無しでいいです」
「ミリアそれは高すぎるよ」
「いいのよ。今日はリュージのダンジョンデビューのお祝いよ」
俺は申し訳なさそうに「ありがとう」と答えた。
こうしてミリアに頭の上がらないダンジョン生活がスタートしたのである。
◇◇◇
「ごちそうさまでした!」
食事を終えた俺たちは一度アジトへ戻った。
「いいのよ。気にしないで」
「この御礼は倍にして返すよ」
普段意地悪ばかりしてくる小悪魔的ミリアであるが、俺の為に祝ってくれたり意外と気が利くいい子である。
ドヤ顔さえ無ければ俺惚れちゃうかもしれない!
「やったー。じゃぁさ、今日わたし泊まってもいい?」
「うんいいよ! ――えっ!」
なんだと! それは俺のアジトに二人っきり……。『ドキドキ』
「よかったー。家追い出されちゃったの」
「あっ!?」
俺はその一瞬ですべてを悟ったのである。
ニコラスさんがミリア追い出したのだろうということは理解できるが、そこまでするとは思っていなかった。
父であるニコラスさんの側にいると、ミリアは父の借金を返そうと無茶をする。そんなミリアをみかねての決断が「ミリアを貰ってくれ!」となったのであろう。
それにしても追い出しまでするとは……、ニコラスさんの本気度は半端ないっす。でも心配だから、俺に面倒を見てくれという事になった訳なんですね。
いきなり面倒を見てくれと言われても難しいですよ。
逆に俺を奴隷として面倒見てくれる事になるでしょう、きっと。
「――ちょっと! なんか怪しいのよね。そう言えばパパと何話してたの」
「だから、ミリアを頼むと……」
「頼むってどういうことなの?」
「ミリアの為を思ってのことだよ」
「うそよ! そんなはず無いわ、『お前は破門だ』って……捨てられたの」
「違うよ、ミリア。そんなんじゃないんだ……」
そうか、最近のミリアの情緒不安定は、親子関係が原因となっている事に間違いない。
「あなたはパパの犬になったのね、許さないわ!」
今のミリアは相当お怒りで、とても興奮している。
この状態では何を言っても聞いてくれそうにない。そんな気がした。
時間を置き、冷静になってからまた話したほうがいいだろう。
今日はもう寝よう……
「ミリア今日はもう寝ようよ。また明日にしよう」
俺はベットで横になり、ニコラスさんとの話を思い出していた。
待てよ、もしかしてこのアジト。ミリアを家なき子にしない為にニコラスさんが用意したのでは?
こうなることを想定していたならば辻褄が合う。
しかしだ、冒険者カードを凍結したりそんな事までは不可能であろう。
偶然の一致だろうな。
謎は深まるばかりだが、たぶん転生が関係しているのだろう。
「ねえリュージ!」
「なに?」
ミリアは戻ってくると、俺のベットに上がってきた。
俺は思わず『ゴックン』と生唾を飲んだ。
「じっとしててね♪」
そう言ったミリアは俺を跨ぐようにぺたん座りをしてマウントポジションを取るのであった。
「ちょ、ちょ、ちょおっと。ミリア何する気だ……」
(俺の妄想が……)
「いいから、じっとしてて」
『ガチャン、ガチャン』
ミリアは俺の手錠を持ち出してきては、俺の腕に手錠をかけてくる。
これは!! もしかしてあの伝説のプレイ……!?
『ガチャン、ガチャン』
もう一方の手錠はベットの方へ結びつけている!
これで俺はベットから逃げることは叶わないであろう。
ミリアがこんなに積極的だったとは……。
俺はベットに拘束されてしまいました。この後どうなるんでしょう?
「おやすみなさい」
「えっ?」
「――朝までそうしてるといいわ!」
「えっ?」
「お仕置きよっ!」
「えぇぇぇぇぇ~?」
そうか! お仕置きなんだ……放置プレイと言う名のお仕置きですね。
こうして俺の『ベットと』の長い夜が始まったのである……。




