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第29話: 第1ステージ。ダンジョン狩りしたい。

「よ~し! 狩りに行くぞ!!」

 

 狩りを行う時は万全の体制で突入したいものだが、俺は既に傷を負ってしまっている。別にモンスターにやられたわけじゃない。ミリアのビンタだ。

 

 まあその事はおいといて、ダンジョンについて分かってきたことがある。

 ここは既にダンジョン内部であってお店と狩場が混在している。混乱を避けるためにお店などの施設はDモール(ダンジョンモール)と呼び、狩場との区別をしているようだ。

 Dモールは一言で言えば複合商業施設と言ったところであるが、暮らしができるほど施設が整っている為ここから出ずに暮らす者も多いようである


 そして狩場へ行くのはDモール内の転送装置室から狩場へ転送されてそこで狩りを行うようである。

 この話を聞いた時は、泊まることもできるテーマパークで狩りのアトラクションを楽しんでくださいな的な、そんなイメージを感じた。

 命をかけた冒険とはとてもかけ離れている。

 

「お二人は狩りをご希望ですか?」

「はい」


「リュージ様とミリア様ですね。リュージ様はライフが減っているようですが? 大丈夫ですか?」


 ギクッ! ミリアのビンタでライフが減っているのか……。


「だ、大丈夫ですよ」


「一応システムに守られていますがそれでも命の危険はあります。気をつけてくださいね。それではボックス内にどうぞ」


 受付娘に案内され俺たちはボックスの中に入る。

 するとディスプレイらしき画面と、横にコインの投入口がある。

 受付娘から渡されたこのコインを投入口に入れることで装置が動き出す仕組みである。

 まるでゲーセンのプリクラ機のようです……。


「コイン投入!」


<<ようこそ。ステージを選択してください>>


「ミリアはやったことあるんだよね?」

「うん、第1ステージだけね。弱いけど意外と厄介な相手だったわ」


「第3ステージとかだと強いのかな、まあ最初は『1』からだね!」

「それじゃ試してみましょうか」 『ポチっと』


「ちょっとまて!! そこステージ3だろ! あぁぁぁぁ」


『ブッブー』 装置からブザーが鳴った。


<<第2ステージをお二人ともクリアしないと3は受けられません>>


 あぶねー、助かった。


「なん~だ、残念!」


 怖いもの知らずにも程がある。


「それじゃ第1ステージ選ぶよ」

「はーい」


<<第1ステージ了解しました。準備はよろしいでしょうか。開始します>>


 目の前が真っ暗となり、体が吸い込まれる感じがする。

 しばらくすると視界がひらけてきて洞窟の内部が現れる。

 洞窟なのに中は明るく、高速道路のトンネルぐらい広い。


 まるでゲームのようだが、ゲームの画面ではこんな臨場感を味わうことはできないであろう! まさに『本物のダンジョン』がここにある! だっ!


 しかし本当に転送されているのだろうか? 

 ヴァーチャル空間の一種や夢でも見させられているのではないかと、俺は微かに疑っている。

 

 こっそりミリアに()れ、感触を確かめてみる。――バレた。


「――キャー、何するのよ」


 ――『バチン』


「ですよねー」


 間違いない! 肉体が転送されている。

 なぜなら、俺のほっぺたの神経達が悲鳴を上げて()いているからだ。

 これで両方のほっぺが赤く染まってしまったぜ。


 ――俺のライフがさらに削られてしまった。


「ねぇ、リュージ、武器はどうしたの?」

「え? あ、武器はまだうまく使えなくてね。素手でいくぜ!」


「相変わらず変な人ね」

「まあ、俺にかかれば第1ステージなんて素手で十分さ、ところで第1ステージのモンスターはなんだっけ?」


「ダンシングバットよ、早速1匹来たわよ! まずはリュージのお手並み拝見してあげる」


 

 見た目や大きさもコウモリと同じようであるモンスターが、ダンジョン奥の方からこちらへ向かって飛んでくる。

 見た目は普通のコウモリであるが、踊るように空を舞う姿はコウモリとはかけ離れた運動性能を見せている。

 まさにダンシングバットといわんばかりだ。


 見た目から判断するに攻撃力は大したことはないだろう。

 全身強化していれば攻撃されてもさほど痛くなさそうである。


「いくぜー! 楽勝だぜ! 俺の華麗な姿を見せてやる」


 飛び回るコウモリに左ストレート!

 しかし寸前でひらりとかわされてしまった。

 

 続いて右フック! これもかわされた!

 

 ダンシングバットは踊るように上下左右と動き回っている。



 むむっ、飛んでいる物体にパンチを当てるのって難しいぞ。

 

「あれー? どうしたのかなーリュージくん。 楽勝なんでしょー」

「ちょっと待ってろよ、これから俺の本気を見せてやる」


 こんなはずじゃ……。

 飛び回れてパンチの射程にもなかなか入らないし殴ろうとしてもひらりとかわされてしまう。


 そうかグーじゃだめだ。パーで行こう!


 全身強化で威力はあがっているのだから張り手でもなんでも当たればなんとかなるはずだ。

 しかし問題は間合いだな。そうだジャンプだ!

 届かないのはジャンプすればいいじゃないか。

 今の俺なら1メートル位高く飛べるはずだ。

 

 俺はなりふり構わずはたき落とすかのように手を振り回し攻撃を仕掛(しか)ける。

 

 とにかく当てなければ話にならない。


 手を振り回していると、かすかにヒットした感触が伝わってきた。

 

「よし!」

 

 しかし当たりは浅くダンシングバットは飛行姿勢を一瞬崩すも直ぐに立て直し飛行している。あまりダメージは与えられていないようだ。


「ねぇ、いつまで遊んでるの? もう次が来ちゃったわよ」

「そっちはミリアに任せた」


 するとミリアはダンシングバットの方へ詰め寄り、得意のレイピア抜き取り敵に向かってかざした。


 こんな光景前にも見たことが有るような無いような……。


 踊るように回避行動を取りながら近づいてくるダンシングバットを、ミリアは細見で先端の鋭く(とが)ったレイピアをロックオンするかのように狙いを定めている。

 

 しばしの静寂からミリアが動き出した。


 それは一瞬だった!


 鋭い突きをダンシングバットへ向けて解き放ち、一撃でダンシングバットを仕留めた。


 俺の視線は鮮やかなミリアの姿に見惚れてしまっている。



 そしてミリアはゆっくりとこちらを振り向き――『ドヤ顔!』



 こんちくしょー。俺だってやってやる!


 その時であった! 突然の痛みが俺を襲っていた。


 ミリアに気を取られ俺の相手をしていたダンシングバットのことをすっかり忘れていたのだ。

 ダンシングバットは背後から襲いかかり、俺の後頭部に攻撃を仕掛けてきている。大した攻撃ではないがそれでも痛みは感じる。



 俺は蚊に刺されたかのように反射的に自分の後頭部を叩いた。

 すると見事にクリーンヒットしたらしく、ダンシングバットを倒していた。

 

 クラっと来るぐらいの衝撃で。……痛かった!

 

 ダンシングバットの攻撃より、俺の張り手のほうが痛かったのである。

 でも、倒せた!


「おっしゃー、見たか!」

「キャハハハ! 面白い~」


 笑うところじゃないんだが、ミリアは腹を抱えて笑っている。

 

 記念すべき初ダンジョンで1匹目を倒したというのに!

 そんなに笑うことないだろう!



 でもいいのだ、今のでいい作戦を思いついたのだ。


 俺は餌だ!


 己を囮にして攻撃を仕掛けてきたところを仕留めれば簡単じゃないか!


「おし、もっと奥行くぞ! これから本気みせてやるからな」

「ハイハイ。」


 少し奥へ進むと、すぐに次のダンシングバットが向かってきた。

 俺は壁に背を向け挑発する。

 なぜ壁を背にしたかというと、背後に回り込まれないようにするためだ。

 そうすれば、ダンシングバットは正面から攻撃を仕掛(しか)けてくるしかなくなる。

 さらにわざと攻撃を()びて、油断しているときに仕留(しと)めるのだ。


「えぃ!」 『バチン』

 

 さすがにこの距離なら外さない。

 攻撃を仕掛けてきたダンシングバットは、逃げる暇なく倒れてゆく。

 

 この作戦に気がついた俺は天才だ!


「おし、ミリアどっちが多く倒せるか勝負だ!」

「勝負、勝負って、あなたって人は……」


「さては俺の華麗な狩り技に怖気(おじけ)づいたな!?」

「何言ってるのよ、私はもう3匹倒してるのよ」


 えっ! いつのまに……。


 結果は言うまでもなく、俺の負けだった。

 

「次は負けないからな~! ところでどうやって戻るの?」

「話きいてなかったのね、冒険者カードにリターン宣言すれば戻れるわ」


 冒険者カードを開き『リターン』を宣言した。


 気がつくとボックス内に戻されていた。

 モニターには成果報告が表示され、倒したモンスターや報酬金額が表示されている。どうしてもゲームをやっているような感覚がぬぐえない。

 もうちょっと緊迫感があってもいいんじゃないかと思いつつも、それなりの満足感はあった。

 なぜなら狩りはヴァーチャルではない、己の肉体で狩りを行うのだからその点に関しては間違いなくリアルである。


<<お疲れさまでした。1600ゼル獲得しました>>


 ゼルは800ゼルずつ山分けとなり、冒険者カードに蓄積された。


「もしかして現金を持ち歩かなくてもいいってこと?」

「そうよ、この施設内なら全てカードで取引できるわ」


 これは便利だ! 恐るべき冒険者カード。


「そう言えば、お腹空いたね」『ぐううう...』


 自分の言葉に反応するかのように俺のお腹が鳴っていた。

 念願のダンジョン狩りでお腹空いているのも忘れるぐらい俺は夢中だった。


「食事行こうか?」

「いきましょ! 勝負は私が勝ったからリュージのおごり、だわよね?」


 くそー、くやしいが負けたのは事実だ。

 ここは男らしく俺が支払いキメてやるぜ!


「おし、いいぞ、俺が出す!」

「わーい、それじゃ早く行きましょ」


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