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第28話: 今すぐヤリたい。

 ダンジョンの入り口を抜けて巨大な空間にたどり着くと、巨大ショッピングモールのような風景が現れる。自分が思っていた陰気臭いダンジョンイメージとは相当かけ離れ、立派な街並みのようにダンジョン内が整備されているのだ。


 俺は呆然(ぼうぜん)(なが)めているとガッシリとした警備員らしき男性が近寄ってきた。

 

「冒険者カードを拝見します」


 おそらくこのダンジョンの守衛(しゅえい)さんと言ったところだろうか。

 入るには入場券が必要で、それが冒険者カードということであろう。

 しかし俺はまだ冒険者カードを持っていない……。


「すいません、カードはまだ無いんです」

「観光ですか? 観光の方は観光ビザカードをあちらで取得してください」


 えっ? いま観光って言いましたよね!?


 冒険者カードが無くても入れるとか、一体俺は何のために冒険者カードを取ったんだ……。


 それよりなによりダッ!

 壮大な伏線をはって突入したにもかかわらず、そんな俺のイメージを完膚(かんぷ)なきまでに破壊しよって――。


「こちらはリュージくんです。マーガレットさんから連絡来てませんか?」

「失礼しました。リュージさんと、ミリアさんですね。話は聞いております。そちらの事務所へお入りください」


 俺たちは入り口にある事務所へ案内された。


「お待ちしておりました。マーガレットより話は聞いております。こちらの装置で調べますので、同じように手をかざしてください」


 魔法学校に置いてあったような装置より一回り大きい装置である。

 俺はその古代文明の遺物に同じように手をかざした。

 すると、事務所のお姉さんは難色(なんしょく)を示している。


「なにか? 問題でも?」

「リュージさん! あなたの冒険者カードは凍結されていますね」


 えっ? 凍結ってどういうこと……。


「何か悪い事しましたか?」


 悪いこと? なんだろう。

 道に落ちてた銅貨を届けず、それでジュースを買ったことか?

 それとも、ミリアのパンツ見えたのに見えてないと嘘ついたことか?

 

 ――イヤイヤ、冒険者カードとは何の関係もないじゃないか!


「おれは、何も……」

「う~ん、そうですね……特に前科とかも無いようですから、なにか(わけ)があって凍結したのでしょう。まあ、試験も受かってますから解除致しますね」


 すると装置からカードが発行された。

 カードと言っても厚みがあり、鉄で出来た薄い手帳のようだ。

 幾何学模様(きかがくもよう)で出来たその装飾(そうしょく)は、いかにも古代文明の遺物といったところか。


「おお、これが冒険者カードかー」

「大丈夫みたいですね、犯罪人以外で凍結されてる人を見たのは始めてです」


 そんなに俺がおかしいのか、微笑みながら笑われている。


「あっ! あと所持品がありますね。貸金庫へご案内します」


 作った覚えのない冒険者カードは既にあるし、預けた覚えのない所持品まであるし、これじゃ俺は相当怪しい人だよな。

 真面目に昔作って忘れているのかな?

 前世の記憶が蘇り記憶の混乱は多少あるがそれはありえない。


「あなたって、何者なの?」

「俺もわからなくなってきた……」


 当然であるが、ミリアに疑われてしまった。


「でも、別に驚かないわよ! あなたって最初から変な人だし」

「ひどいじゃないか」


「あなたと居ると飽きないわね♪」


 怪しくて嫌われるどころか喜んでいる。ミリアらしいと言えばらしい。

 

 この貸し金庫から出したケースの中身に一体何が入っているのだろうか、俺は怖くてしょうがないが、ミリアはワクワクした顔をしている。

 

 恐る恐るケースを開けてゆくとミリアは肩を寄せてきて覗き込む。


「わー、これアジトのカギじゃない!?」

「そうなのか」


「しかも、これプラチナルームの鍵だわよ! なんで? なんで? なんで?」

「はぁ? なんででしょうね……」


 全く見覚えがありません。

 ミリアの反応から明らかに高そうで俺が買えるはずもなく、何かよくないことが起きそうである。

 

「すいません、これは何かの間違いじゃないんですか?」

「いいえ、確かにリュージさんの貸金庫です。間違いありません。中のものはリュージさんの私物です」


「行きた~い。行きた~い!」

「まてまて、アジトなんてほっといてダンジョン行こうよ」


 あぁここはダンジョン内部か、もとい狩りに行きたいだ!

 モンスターを倒すために修行をしてきたのに、こんなミステリーな冒険は望んでない!

 危険だ、こんな危険なところ行きたくない。――絶対なんかの罠だ。


「見たい見たい、いいじゃない減るもんじゃないし」


 確かに減ることはないかもしれない。

 何かびっくりすることあっても、まさか命までは減らないことを祈る。


 う~ん、もうどうにでもなれ。貰えるものはなんでも貰ってやる!


「おう、行ってみるか!」


 本部を出た俺達はアジトへと向かった。


「何か隠してると思ったら、こういうことだったのね……」


 学校からここまで元気のない感じだったが、今のミリアはご機嫌そうだ。


「ごめん、騙すつもりなんて無いんだけど」

「いいの、こんなサプライズも嬉しいわ……私の為に……」


 えっー? 完全に誤解していますね。

 まあ、喜んでもらえているなら悪い気はしない。


「あ~、バレちゃったねー。ハハハ。ミリアを驚かせようと思ってね……」


 アジトの前に着いた俺は、カギを取り出し扉を開ける。

 どんなドッキリが待ち構えているのかと思い俺は中の様子を恐る恐る伺うが、ミリアは押しのけるように中へと入っていく。


「わっー、広いわ~。見て見て、こっちにも部屋があるわよ! わっー、こっちにも」

「ちょっとまてー、気をつけろ!」


 俺は中の安全を確認しようとしたのだが、お構いなしのミリアは子供のようにはしゃぎ回っている。

 どうやら深読みしすぎていたようで、中に危険は感じられない。

 中には綺麗な部屋が3つもあり、アジトというよりは高級ホテルの一室のようである。


 ミリアは走り回ってはベットにダイブしたり転がったりして楽しそうに遊んでいる。とても微笑ましい光景であるが、パンティーが見えそうで見えないのは残念である。

 

 ――俺はなにを期待しているのだ。


「ミリア走ったら危ないよ」

「キャー!」


 ――足をつまづき転びそうになるミリアは俺の方に突撃してくる!

 密室のホテルで二人っきり、そしてこのシチュエーションは!?


 ラッキースケベ到来か!?


 俺はミリアを助けようと受け止める。


「どさくさに紛れて変なところ触ったりしないでよね」

「そんな事しないよ!」


 ミリアは再びベットに飛び込み気持ちよさそうにくつろいでいると、突然振り向いて更にひどいセリフを言ってくる。


「もう! わたしに近寄らないでね!」


 自分から飛び込んできたくせに俺が悪いのか……。

 てか、「そんなまな板には興味が無いぜ!」とか言ってやりたい!

 が、そんなこと言ったら俺の命が減ってしまうかもしれない。

 間違っても禁句である。


「おお! このソファーすごいフカフカだぞ! 聞いてないね……?」


 高級ホテルの置いてありそうなこのソファーはとても豪華で、何よりベットは半端ない高級感が漂っている。そんなソファーに座り込み、俺は優越感に浸る。

 体を包み込むようなこのソファーの感触はとても最高である!


 これは冒険者カード以上にいいものが手に入ってしまった。

 しかし、こんなうまい話があっていいのでしょうか? ……まぁいっか。


 本当にいいアジトをゲット出来てしまった。もうここに住もうかな……。

 俺の懐は寂しいが、大金持ちになった気分である。





 かれこれ1時間ぐらい経っているだろうか?

 怪しいと思われたこのアジトだが、居心地が良すぎてのんびりしてしまった。

 ミリアはベットで(うずくま)り、微動(びどう)だにしない。

 

 寝ちゃったのか!?

 

 このままでは、狩りに行けずに終わってしまいそうだ……。

 そうだ! 俺は狩りに行きたかったんだ。

 どんなモンスターが待ち構えているのか楽しみでしょうがない。

 最初のモンスターはそんなに強く無いだろうけど、それでも興奮するぜ!


 ――今すぐヤリたい!


「――なんかこうムラムラしてきた」

「ど、どうしたの?」


 もう狩りに行きたい気持を抑えきれそうにない。


 狩猟本能が爆発寸前なんだ!!


 俺はミリアの居るベットに詰め寄った!


「――ミリア、俺はもう我慢出来ない! 準備はいいか?」

「ダメよ、ダメ……!」


 ミリア怯えた子鹿のように怖がっている。


 ――あれ泣いている? なにかがおかしいぞ?

 し、しまった。俺、やっちまったか?


「違うんだミリア、狩りだよ狩り、狩りに行きたいんだ!」


 すごい形相(ぎょうそう)でこちらに詰め寄ってくる。

 わかるぞ、俺にはわかる。この後どうなるかが――

 

『バチーン!』


 ですよねー。


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