第26話: 22歳、彼氏募集したい。
新しい手錠を仕入れた俺達は、再び魔法学校に戻ってきた。
「リュージどこに行ってたのよ!」
「ごめんごめん、装備屋さん行ってたんだ」
「あれほど冒険者カード欲しがってたくせに……。早く行くわよ」
「行こう! これで俺も冒険者の仲間入りだ」
俺たちは冒険者カード発行室の部屋に入った。
すると装置らしきものが設置してあることに気がつく。前世の記憶からあれが装置だということは違和感なく思えたが、この異世界の文明であれだけの装置を作ることは不可能であろう。それだけに逆の違和感を感じていた。
「マーガレットさん、リュージくん連れてきたわ」
奥の椅子から振り向き立ち上がった女性は、俺の決闘のときにレフリーをしてくれた女性であった。
肩に届かない程度のミデアムヘアーに、ガリ勉が付けていそうな丸メガネ。ちょっと大人な雰囲気がありながらもどことなくオタクっぽい感じの女性である。
あだ名をつけるとしたら、博士だな。
「初めまして、リュージです。先ほどはありがとうございます」
「いえいえ、いい試合見せていただきました」
「いや~、俺なんて大したこと――」
「――あぁ~いいわ~! 一人の女性を賭けた男の戦い! はやく! 誰かわたしも奪いに来てくれないかしら~」
おしとやかな大人の女性かと思いきや、豹変しました……。
そう言えば、あの熱いレフリーをしていたのもマーガレットさんであったことを思い出した。
この学校に居るということはミリアとはよく知る仲ということなのでしょうか? ミリアはあきれた顔をしています。
そんなミリアのツッコミが入る。
「ちょっとマーガレットさん! ちゃんとカードの発行してちょうだい!」
「は~い、理事長さん」
マーガレットさんは何かブツブツ言いながら装置の方へ向かい、キーボードらしきものを引き出してはカタカタと打ちながらブツブツ言っている。
「はい、準備が出来ました、装置に手を置いてください」
「え? どこに?」
マーガレットさんは俺の手を取り装置の方に引き寄せると思いきや、モミモミし始めた。
「手大きいわね。これであの男を倒したのね。若い男の手って、いいわね~」
「ちょっと! マーガレットさん!!」
「ちょっと触っただけじゃない、奪ったりしないから安心して」
「勘違いしないで、リュージとはただの友達よ」
彼氏役の演技だったからな、誤解もするだろう。
ところで俺は友達には昇格していたのね。
今まで奴隷か何かぐらいにしか思われてない気がしていたよ。
「へぇ~。それじゃわたしにもチャンスあるわけね!?」
そう言ったマーガレットさんは俺の手を引き寄せて誘惑してくる。
「ねぇ! 私の胸の鼓動聞こえる?」
「マ~~~ガレット、さん! お仕事、ちゃんとしてください」
「あらら怖い理事長だわね。幼い頃はかわいい女の子だったのにね~」
「もう~! いつの話ししてるんですか、」
ミリアの幼い頃……気になるじゃないか、聞いてみたい!
「はい、それじゃ発行致しますね」
ようやくカード発行をしてくれる気になったマーガレットさん。
呪文のようにブツブツと言いながらキーボードをカタカタと叩く。
「あぁ~、最近つまらないのよね……何か面白いこと起きないかしら」
そういうフラグみたいな事は言わないでください!
イヤな予感しかしない……。
「ハイ! エンターキー!」
『ブッブー』 装置からブザー音が鳴った。
「あれ、なぜかしら?」
明らかにそのブザー音は、発行できませんって言わんばかりだ。
マーガレットさんフラグ立てるからですよ! と言ってやりたい。
「故障ですか?」
「いいえ、故障してるようには思えません、今まで見たことの無いエラーが出ています。……少々お待ち下さい、調べてみます」
そう言ったマーガレットさんは端末画面に食いつくように覗き込みながらブツブツ言っている。
如何にもパソコン端末の様に見えるが、文字はわからない文字で書かれている。
「この装置はなんなんですか?」
「冒険者カードの発行装置です。古代文明の遺物ですね。遺跡から発掘されここに設置されました」
今の異世界文明でこれほどのものは作れないと思っていたが、古代文明の遺物ならばそういうのがあってもおかしくないかなと思えた。
「マーガレットさんはその文字読めるんですか?」
「全部とは言えませんが、ほぼわかります。この文字は古代文字で構成されていまして、解読は時間かかりましたがなんとか……。考古学が好きな私にとって魅力的な装置です!」
「へー、マーガレットさんって頭いいんですね」
「22歳、独身、彼氏募集中! ――です!」
いきなり猛烈アピールです。
返答に困ります……でも、頭のいい年上女性とか魅力的だな~。
「あなたの事がもっと知りたいっ!」
大人の女性って積極的ですわ。
「こんなエラーは始めて! あなたの秘密を教えてっ!」
ああ、騙されるところだった。
これは……、男より何よりパソコンが好きなタイプですね。これで「二次元しか愛せないの」とか言い出したら結構共感持てますな。
しかし、楽しそうにしているが俺の冒険者カードは大丈夫なんだろうか。
「マーガレットさん――?」
反応が無い……。
そしてキーボードを叩くカタカタ音とブツブツ歌う音は徐々に大きくなり、まるで曲がサビに入ったかのように盛り上がってくる。
「聞こえてますか~?」
「わ、わかりました! 既にアカウントが存在しているようです」
「え? どういうこと、俺は作った覚えはないが……」
「これじゃ発行はできませんね」
そんな……、俺は忘れているだけで既に前に作っていたというのか?
前世の記憶が蘇り混乱して忘れていたとか?
いやいや、そんなわけがない。
「こちらの端末ではこれ以上どうにもなりませんので、本部へ行ってみてください」
「本部ってダンジョンの事務所のことかしら?」
「はい、そちらへ行ってください」
何が起きているのか見当もつかないが、マーガレットさんは興味津々のようで何か言いたそうな顔をしている。
「リュージさん! ……おいくつなんです?」
「俺は15です」
「私は、22歳、独身! 彼氏募集中! ……で。ん~興味深いわ~。15歳なのよね……するとあれがこうなってこうなると……」
何なんでしょうこの考古学のオタク娘は、未知なる生物を発見しましたみたいな顔をしている。
まさか俺が転生された人間だと見抜いているのでは……!?
「いやそのー、俺にも色々事情があって……」
「いいんです、いいんです。 今度本当の事……教えて下さいね!」
やっと冒険者カードをゲットできるかと思いきや、とんだトラブルが待ち構えていた。この先どうなってしまうのだろう。
「心配ないです。リュージさん。いざとなったらハッキングして強制発行しちゃいますから!」
「えっ! そんなことが可能なんですか!?」
「やって欲しいですか? そのかわり、わかってますわよね? リュージさん」
「よくわかりませんが、やめときます……」
マーガレットさんの思考は読めないだけに怖いわ……。
「それじゃ、本部に連絡しておきますのでそちらに行ってください」
「じゃ、ミリア行こうか」
俺たちが部屋を後にすると、マーガレットさんは大声で俺たちを見送ってくれる。
「いってらっしゃい~。22歳、独身! 彼氏居ない歴22年よ~!」




