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第24話: 決闘したい。

「インチキだ! お前は失格だ!」


 ハナから合格させる気はないであろうというのはわかっていた。


 試験官の用意した的は全部倒して本来であれば合格であろうが、案の定いちゃもんを付け合格阻止に試験官は動き出してしまった。


「おかしいだろう。全部できるわけない!」

「何がおかしいというのですか、実力ですよ」


「その手錠は何だ! それは手錠と見せかけて、実は武器なんじゃないのか?」

「さっきも言ったとおり、手錠ですよ。 なんなら確認してください」


「トリックだ、何か仕掛けがあるに違いない」

「タネも仕掛けもございません。どうぞご覧になって下さい」


 まあ、俺の魔力は普通ではないから、あの魔力弾の連打を見たならばそう思っても不思議ではない。


「これは、『魔封石』入りじゃないか!?」

「手錠なんだから当たり前じゃないですか」


 そんな俺は封印石のことをこの前まで知らなかったが、魔法があるこの世界なら封印石入りは標準だと思うのだが……。


「それはそうなんだが……イヤ、なおさらおかしい、なぜ魔力弾が打てる……」


 ですよね~、普通ならそういうことになるでしょう。

 あぁ~、これを説明するのはめんどくさいです。

 説明しても信じてもらえるわけないし、なおさら怪しくなってしまう。

 しかし、手錠無しで試験やり直しなんてことになったら、ピンチである。

 手錠が無いと魔力コントロールが効かなくなるからだ。

 さて、どうしたものか……。


「ロジィさん、もういいでしょ? その手錠は私も一緒に買いに行ったのよ。不正は無いわ」


 見かねたミリアが助けに入ってきてくれたが、そう簡単にはひいてくれないだろう。

 

「いやこの試験は魔力を確かめる為の試験なんだ。インチキするようなやつには合格を出すわけには行かない!」


「もうやめて、パーティーにはちゃんと行くから……合格でいいでしょ?」


 あららら、これはプランB確定フラグですね。

 マリアちゃんにもお父さんにも頼まれちまったからな。

 問題は食いつくかどうか……

 

「試験官殿、これは俺の魔力を確かめる試験ですよね?」

「そうだ」


「それじゃ話は早い。試験官直々にお手合わせしてくれればどうです?」

「お前ごときの相手などやっておれん」


 だめか。じゃこれなら。


「ミリアを()けてと言ったら?」


 どうだ? のるかそるか!?


「俺が負けたらミリアから手を引く、そして不合格でいい」


「……その言葉に二言(にごん)は無いな!」


「もちろんだ」


 釣れたぜ!


「よし、決闘だ! しかし、そ、その武器……いや手錠は無しだ! 試験同様に武器無しで決闘だ」


 相当手錠を疑っているな……。


 しかし武器ありじゃなくてよかった。

 武器無しのほうが俺にとっては好都合である。

 これで俺の優位に揺るぎなし!


 勝ったな、ガハハ!


「キャー」

「 決闘だーー」

「  ミリアお姉さまを()けた戦いです!」


 おいおい、マリアちゃん、あまり観客を煽らないでくれよ……。


【さー、この決闘は(わたくし)『マーガレット』が取り仕切らせていただきます】


 どこから現れたんだ……いきなりレフリーがついてしまった。


【いくよー、……レディー……ゴー】


 模擬戦が始まった。『負けられない戦いがそこにある』ってやつか。

 だが危険なギャンブルではない、全身強化を覚えた俺はそんじょそこらのヤツに負けるはずがないのである。


 俺は魔力放出を開始し、全身強化に入りだす。

 作戦としては全身強化を活かした格闘戦に持ち込みたいところである。

 しかし相手はどう出てくるか?

 

 魔力弾は今は使えないが、的抜きの時の魔力弾を見ているから警戒して相手も接近戦を仕掛けてくる可能性は高い。

 様子を伺うのにハッタリかましてみることにした。

 

 俺は魔力弾を打つ姿勢を取るかのように徐々に手を上げてゆく。


「させるかー」


 予想通りであった。相手は回り込みながら距離を詰めてきた。

 これで相手も遠距離戦を望まないことはわかった。

 すかさず俺も前に前進し距離をつめて拳が届く範囲まで間合いを詰める。


 しかし俺はうかつに攻撃はしなかった。

 なぜなら、この全身強化状態での実戦は始めてであり、どのくらいの防御力なのかを体感する必要があった。

 それに相手の攻撃力の確認をすることも、重要なファクターであると考えたからである。


 相手は迷わずパンチを繰り出してきた。

 俺は後ずさりしながら相手のパンチを受け止める。


 様子をうかがうとパンチは遅いし、威力も全然ない!

 魔力使って、これなのか?


 イヤ、魔力を使ってないように思える。

 魔力切れを気にしているのか? 様子を見ているのか?


 まあ、このぐらいなら魔力使われても心配ないかもしれないと思った俺は攻めまくってみることにした。


 攻撃に転じた俺は上部へ攻撃し始めたが、魔力を使って防御をしているのかうまく塞がれている。


 次にボディーブロー! ――しかし防御する様子が全くない!?

 ドスンと入り完全に決まった!


 手応えを感じたかのように思えたが、実は違っていた。

 つよがりなのか、平気な顔で何も無かったかのように反撃してくる。


「どうした、全然効いてないぞ」


 この挑発はつよがりではない!

 様子を見る限り本当に効いていないようだ。

 魔力で防御したようには思えない……、何が起きたんだ?


 まさか――これは『魔法防具』か!? ――やられた。


 魔法防具がこれほどの防御力があるとは思わなかった。

 魔法防具の効き目が薄い頭部を手でガードし、後は防具任せ……。

 

 これはなかなか手こずりそうだ。


「リュージ気をつけて、ロジィさんの魔法防具は全てAクラスの高級防具よ」


 そういうことか……これは参った。

 これだから上級貴族のボンボンってやつは……。

 と、愚痴っている場合じゃない。なんとかしないと。


 俺は何度かボディー攻撃を試したが、鋼鉄を殴っているように硬い。

 ダメージを与えることが全然できないでいる。

 

 この程度の全身強化ではダメということか?

 かと言ってこれ以上に強化しての長期戦だけは避けたい。

 本来であれば魔力量の多い俺は長期戦に向いているはずだが、今回に関しては早めの決着が望ましい。

 なぜなら、先ほど魔力弾連打でだいぶ消費しているからだ。


 あまり気は進まんが、あの手で行くか。


 俺は懲りずにボディー打ちを続けた。


「そんなパンチ! 全然効かないぞ!」


 ――『ズドン』


「う゛ぅ! ナニ――」


 ついに俺のパンチが相手のボディーを捉えた!

 簡単なことであった。あまりこういう事はやりたくは無かったが、服をめくり上げてのボディーブローを腹に打ち込んでやったのである。


 相手は四つん這いにうずくまり、相当痛そうにしている。

 腹に受けのダウンは相当キツイはずだ。


【ロジィ選手 ダウン! カウント……1……2】


「待て待て、違う違う! ダウンじゃない!」


 ダウンしたことを認めたく無いようだが、それは明らかにダウンだよ!

 でも簡単に立ち上がれたのは想定外であった。


「……汚いぞキサマ、卑怯なヤツだな!」


 試験を難しくするわ、高級防具のマネーパワーをするようなヤツがよくそんなこと言えたもんだ……。


 だがこれで相手は上部だけ守る作戦が取れなくなり、相当余裕がなくなってくるだろう。

 今度はボディーを意識させてからのフェイントで上部狙いだな、次こそはノックアウトしてやる。


「さあ、早く再開しようぜ試験官殿」


【それじゃー、試合再開!】


「待て待て、ちょっとタイム! タイム!」


【えっ?】


「着替え着替え、武器じゃないからいいんだ!」


【おーっと、ロジィ選手、重装備の鎧を装着(そうちゃく)しました】


「これならさっきの真似はできまい! 降参するなら今のうちだぞ」


 どこまで卑怯なんですか!

 

 しかしこれは面倒くさいことになってしまいました。

 さっきの作戦はもう無理だな。

 

 打撃系は諦めて柔術系で行くか。

 柔術の経験は無いがテレビとかではよく見てたからな!

 適当にぶん投げてやれば、ダメージを与えられるだろう。

 

【それじゃ改めて、ファイト!】


「もう胴体への攻撃は効かないぞ! さあどうするんだ」


 俺は打撃モーションからフェイントで懐に入り、胴体を抱え込んだ。

 潜り込んだ俺に対し、相手は上から両手を振り下ろし攻撃しようとしている。

 しかし、今の俺にはスローモーションに感じるぐらい、相手の動きが手に取るように分る。

 俺の全身強化で体は軽く感じるし、スピードパワー共に大幅にアップしている。


 懐に入った俺はサイドステップで攻撃をかわしながら背後に回り込む。

 背後を取った俺は、そのまま体を持ち上げて自ら後方に反り返るように倒れ込んで『バックドロップ』をかました。


 あれ? 柔術じゃなくて、これはプロレスの技だっけ!?

 まぁ、そんなことはどうでもいいや。

 いくら高級な防具だとしても、中の肉体はこの衝撃に耐えられまい。


 効き目は絶大のようでグダっとして仰向けに倒れている。

 ここぞとばかりに俺は『関節技』で決めに入ろうとした瞬間――!


【――ロジィ選手 再びダウン! カウント……1……2】


 しまった~! ダウンルールがあったんだ。

 これじゃトドメさせないじゃないか!

 下手に倒しまくっても、休憩されてしまうではないか……。

 

 3ダウンでノックアウトとかルールあるのかな?

 第一ラウンドとかないだろうし、無制限かもしれないな。

 まあ、KOしてしまえば問題ない。


【ロジィ選手、立ち上がるか~、お~立ち上がった! それじゃファイト!】


 俺は再び懐に潜り込むように低い体勢で正面から突っ込む。

 さすがに警戒されてしまい、相手は腰を引き低い体勢を取り出していた。


 言わゆる、へっぴり腰の体勢だ。

 これほど前かがみの姿勢を取られてしまったら懐に入り込むのは難しい。


 しかし、そのおかげで頭がつかみやすくなっている!

 俺は頭部狙いに変え、頭を掴み抱え込む。


 確かこんな絞め技があったな、フロントチョークとか言ったっけ?

 このまま締め落とすか! 参ったと言わせてしまおう。


 このような戦いになってしまっては重い防具はかえって邪魔であろう。


「どうです! 降参したほうがいいですよ?」


 降参する気が無いようだ。もっと強く締めるしか無いようだ。

 

 ――相手は追い込まれている。そんなときほど注意するべきだった。


 魔力が集中している気配を感じたと同時に相手の拳が飛んできた。

 この感じには見覚えがある、ミリアがだしたあの必殺技と同じ感じだ。


 ダメだ、間に合わない! 強烈な一撃を貰ってしまった……。


【おーっと、今度は、リュージ選手ダウンかー カウント……1……】


「どうだ! 見たか俺様の実力を! このひよっ子が!」


 ――俺は衝撃で数メートル飛ばされていた。


 『危なかった』 ……でも意識はある。

 

 この技を知っていなかったら危なかったかも知れない。

 打撃の瞬間、一瞬ではあるが衝撃に備えることができたのだ。

 これはミリアのおかげだな。


【これは決まったかーー……2……】


 俺はゆっくりと立ち上がり、服についたホコリを払う。


「効いてないね――、ちょっとびっくりしただけさ」


【お~っと、立ち上がった。どうやって防いだのでしょう】


 でも痛かったよ。さすがにね……


「なにー。なぜ立てるんだ。またインチキしてるだろう、その防具は何だ?」


「ん? これ? これは普段着という物だ。魔力の試験なのだから魔法防具なんかに頼らないのが本質なんじゃないですかね? 試験官殿」


 実は魔法防具は俺の全身強化の障害になりかねないからなんだけどね。


「魔力で防御したとでもいうのか?」


「全身強化魔法ってやつですよ……俺には桁外れの魔力があるのでね」


 信じてませんね……、まあ俺も魔力の事はよくわかっていないですが。


「そんなわけ、あるはずがない……」


「――そんなことより、さっさと始めようぜ! 試験官殿」


【それじゃ~、ファイト!】


 相手は相変わらず前傾姿勢で警戒している。

 今度は手で邪魔してきて、頭も掴ませてくれそうに無い。

 レスリングみたいになってきたな……。

 

 仕方なく俺は、正面から打撃を開始する。

 先程は効かなかった上部打撃であるが、今度は多少効いているようだ。

 それもそのはず、俺は勝負を決めるために全身強化をパワーアップさせていたのだ。


 相手の状態はどんどん起き上がり、懐が徐々に見えてくる。

 状態が起き上がったところを、俺は高速タックルで足を掴み取り、掴み取った足を力任せに振り回した。


「『ジャイアントスイング』だーー!」


 1回転、2回転とぐるぐる回し、一番スピードがのってきたところで壁に向かって投げつける!

 

【おーっと、リュージ選手の大技炸裂ー! これは決まったかー! 1、2、3、4、5、6、7、8、9、……10! リュージ選手、勝利ー!】


 観客からの歓声が沸き起こる。

 

 俺は勝利した!


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