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第23話: ハイタッチしたい。

 いよいよ一発試験の難関である実地試験が始まろうとしている。

 実地試験は試験官の裁量で決まるらしいが、不幸なことに試験官とは恋敵設定になってしまった。

 元々1回目は厳しいとされているのに、試験官が敵に回ってしまっては完全アウェイな戦いとなるのは明白である。

 

 

 試験会場に着いた俺は会場の観察を始めた。

 

「えーっと、(まと)が並んでるな。1,2,3……10個あるな」


 聞いていたよりも的が多いような……?

 あからさまな嫌がらせが始まっている気がするぞ。

 半分当てれば合格、なんて言うことは無いだろう。

 おそらく全部当てないと合格させないだろうな。

 そもそも全部当たっても不合格なんて言われるかもしれない。

 

 そうならないようにマリアちゃんにはなるべく多くの観客を連れてきてほしいと頼んだんだが……マリアちゃんはまだ来て居ないようだ。

 この短時間では厳しいか。


 そうこう考えているうちに試験の時間がきてしまった。

 そして試験官が試験内容の説明を始める。


「魔力弾を使い、制限時間内に決められた(まと)を射抜く。あそこの線から後ろで撃つこと。それと武器の使用は禁止だ。制限時間は1ぷっ――いや30秒だ」


 おいおい! 今1分って言いかけたよな……?

 なんて卑怯なやつだ。(まと)の数も明らかに増やしてるくせに。

 

 冷静に考えよう。30秒で10枚だから1枚あたり……。

 

 3秒じゃないか!! 

 

 詠唱時間も考えたら一発も外せないような難易度まで上げてきやがった!

 完全に落とす為の試験になってしまったな。

 

 と、ヤツは思っているだろうが、俺は必殺技を用意しているのだ!


「リュージさん頑張ってください~」


 マリアちゃんだ! 間に合ったのか!

 というか、なんだこの観客の数は!!

 この短時間でどうやってこんなに集めてきたんだ。

 いいぞ~! これだけの観客を味方にできたらサッカーでいうホームの戦いになるぞ。

 ホームというのは有利に働くものなのだ。


 でかしたぞ! マリアちゃん!


「試験官殿、これを制限時間で全部射抜けば合格で間違い無いですね?」

「ああ、全部射抜けたらな!」


 不敵な笑みを浮かべている。この数は無理だろうと言わんばかりだ。

 仮に全部射抜いても「不合格だ」なんて言い出したりしかねない。

 

 気がつくとミリアが試験会場に来ていた。

 そんなミリアが試験官のロジィに対して物申す。


「ちょっとロジィさん、おかしいわ、こんな試験無理よ」

「一発試験は厳しくやっているんだ、ミリアくんも分るだろ」


「それは分りますが、これはいくらなんでも厳しすぎるわ」

「まあ、ミリアくんの紹介だし試験は簡単にしてやってもいいんだがな……」


「え、本当に?」

「その代わりわかってるよね。ミリアくん!」


 小声で言っているが、こっちまで聞こえてますよ!


「ところでミリアくん、この後パーティー来てくれるのかな?」


 下心丸見えです……。

 仕方ない、そろそろ俺も反撃に移るか。


「あ~ちょっと待った! ミリアは俺と出かけるからパーティーは行けないよ」


 フフ、言ってやったぜ。一応彼氏役だしな、この位はしないと……。

 こういうことはしたくないけど仕方ない。いよいよ劇の始まりですな。

 

 すると、マリアちゃんが勢いよく飛び込んできた。

 目が輝いている……!

 絶対何か良からぬことを考えているに違いない。


「デートです、デート!」


「ちょっと、マリア!? 何言ってるの!」


 火に油を注いでますね……。もう知りません……。


「ミリア、試験はこのままで大丈夫だ。サクッと合格してデートに行くぞ!」


 マリアちゃんに乗っかってしまった。

 ということでハイオクガゾリンを更に混ぜてみました。って感じでしょうか。

 

 外野は大騒ぎです。

 ガヤガヤしていて何を言っているのかよくわかりません。


「キャーァ...」

「 なになに...」

「  これから駆け落ちってホント?...」


「こら、お前ら試験中だ、静かにしろ!」


 それにしても観客が多い、さっきより人が増えてないか……?

 まあ、これだけ居ればあこぎなことは出来ないだろう。マリアちゃんGJだ。

 てか、マリアちゃんなんて言ってこんなに集めて来たのでしょう?

 嫌な予感しかしない。



 こういうのは柄じゃないけど、派手に行きますか!

 

「さて、みなさん、ショーの始まりですー!」



『ワー』と観客の歓声が鳴り響く。



「お前ら試験を何だと思ってる、というか、お前その手錠はなんだ!」

「ん……見ての通り手錠ですが。武器じゃないから問題ないでしょ?」


「ふざけおって……」


 別に俺はふざけてなどいない。

 正直この封印石入りの手錠がないと魔力弾がうまく撃てないのだ。


 指定位置についた俺は、拳銃で狙うかのように右手を差し出し(まと)のほうに照準を定める。

 そして一旦深呼吸。


 はたから見れば狙っているように見えるだろうが、実はあまり狙っていない。

 なぜなら狙った場所に飛ぶことはまず無いのだ。それはもう自覚している。

 

 であれば!

 

 下手な鉄砲も数撃ちゃ……なんちゃら、ってやつだ。

 

 幸いなことにある程度(まと)が密集してくれているのは救いである。


 勝ったな、ガハハ。


「いつでもいいぜー」


「それじゃ、よーい……始め!」


 試験がスタートした。

 俺は魔力弾を飛ばし始める。


 一般的な魔力弾は詠唱して大気中のマナを集めてからその魔力弾を飛ばす。

 しかし、俺にはまだそのようなやり方はうまくできないのである。

 イヤ、もしかしたら不可能なのかもしれない。


 そんな俺がたどり着いた方法とは……!

 

 体内の魔力をそのまま放出する方法だ。

 魔力の消費が激しいというデメリットはあるがメリットもある。


 それは、連射速度だ!


 貯める、育てる、そんな必要はまったくない。

 体の魔力をそのまま放出するだけなのだから。


 連射速度は『1秒間に5連打』だっ!



「うぉーーーーーーーー」『ヒュン、ヒュン、ヒュン、ヒュン……』


 魔力弾は次々と(まと)の方に向かって飛んでゆく。

 しかし飛んでゆく方向は様々である。

 わざとではない……いわゆるノーコンなんだ。

 この欠点だけは今のところ治りそうにない……。


 無数の魔力弾は(まと)の方に飛んでゆき1枚、2枚と撃ち抜いてゆく。

 中には地面にタッチダウンしている弾もある。

 

 土煙(つちけむり)爆煙(ばくえん)(まと)がだんだん見えなくなってくる。


「どうなんだ、やったか?」


 どうなっているのか土煙(つちけむり)爆煙(ばくえん)で状況がわからない。

 俺は一旦魔力弾を止めて様子を見ようとする。

 

「おおおーーー」

「 すごいすごいーー」

「  なんだこれーーー」


 爆炎の音と歓声の声が混じり辺りは騒然としている。

 すると微かに(まと)が見えてきた。


「まだ1個残ってるぞー」


 観客が助けの声を発してくるが、言われなくても自分でも認識していた。

 

 あれ? ところでいま時間はどのぐらい経過したんだ?

 てか、何秒の持ち時間があるんだっけ?


 俺は焦った。

 常に冷静にと思っていたのに、さすがに本番となると焦るようだ。

 まだ慣れていないが、左手も使うしかない!


 俺は両手で(まと)のほうにめがけ、魔力弾を連打し始める。

 これで、単純計算すれば数は2倍になる。


 無我夢中だった。

 とにかく連打することだけを考えていた。


「わーーーー、当たったわーーー」


 周りの歓声でハッと我に返る。当たったのか!?

 時間が気になる俺は、周りに質問した。


「じ、時間は?」


「大丈夫だ、20秒も経っていないよ」

「 うん、そうよね――」

「  いいもの見せてもらったわー、全然余裕だったと思うよ」


 観客に助けられちまったな。


 ふぅ、焦ることなんて無かった……。

 なにテンパっているのだ俺は……まだまだ若いの~。


 俺は観客のほうに歩み寄りながら両手を上げて喜んた。


「よっしゃー」


 そんな喜んでる俺にマリアちゃんが駆けつけて来てくれた。

 高々と上げた俺の手にマリアちゃんはジャンプして手を合わせてくる。

 

 マリアちゃんと渾身のハイタッチをキメたのである。

 

 マリアちゃんはホント(かん)のいい子だ。

 俺がいま、ハイタッチしたい気分だったことに偽り無し!


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