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第22話: 試験受かりたい。

「筆記試験合格おめでとう」

「ありがとう、これもミリアとマリアちゃんのおかげだよ」


 筆記試験の方はなんの心配もしていなかった。

 それだけ勉強もしたしね。


 そして午後の実地試験開始にはまだ時間があるので、俺達は3人でお昼のランチを過ごしている。

 何事もなかったかのように俺はランチを過ごしているが、どうしてもミリアの様子が気になってしょうがなかった。

 

 それはニコラスさんの件である。

 ニコラスさんは「ミリアを貰ってくれ」とか言っていたが、ミリアは俺のことをどう思っているのだろうか?

 もしも……、なんてことがあったら……。『幸せに暮らしたとさ!』

 俺の冒険はここでハッピーエンドか!?

 

 いやいやいや、そもそも俺なんて相手にされるわけがない!

 それどころか、一緒にダンジョンに付いて来てくれるのだろうか?

 そもそも、実地試験を一発で合格できるのだろうか?

 

 なんかいろいろ自信なくなってきた……。

 

「お姉さま、試験終わったらリュージさんとダンジョンへ行きますよね?」

「そ~ね~、私も行こうかしら」


 マリアちゃんは清々しい顔して策士だの~。

 これで一つ心配は減ったが、まじで合格しなくちゃならなくなった。

 

 そんな事を考えていると、突然見知らぬ男がテーブルに近寄ってきた。


「ミリアくんここに居たのか。会いたかったよ」

「私は会いたくなかったわ」


 なんですか、この展開……。

 ミリアは険悪そうな顔をして、そっぽを向いている。


「つれないなー。ところで、リュージってのはお前か!?」

「そうよ、彼がリュージくん」


 来るや否やお前呼ばわりとは感じ悪い。

 俺の名前を知っているということは、試験の関係者とかだろうか?


「お前にミリアはふさわしくない。ミリアは渡さん!」


 えっ? 何か誤解してませんか?


「何言ってるのよ! もういいでしょ、あっち行って」

「試験終わったら屋敷でパーティーがあるんだ、ミリアくん来てくれよ」


「……」


 男は去っていき場は落ち着いた。……が、空気が重い。

 マリアちゃんはうつむいたままだし、ミリアは相当険悪だ。

 なにか言いづらそうにしているが、ミリアは喋りだした。


「今回の実地試験を担当するロジィさんよ」

「試験官だったのか、イヤな感じだったが挨拶ぐらいはしておくんだった」


「しなくていいわ! どうせ……ごめんねリュージ。今回の試験は諦めて……」

「どういうこと?」


 なにか事情がありそうだな……。

 沈黙していたマリアちゃんが口を開く。


「リュージさんがお姉さまの彼氏だって言っちゃった。……テヘ」

「マリア、なんてこと言ってくれたの!? 私の苦労が台無しになるわ」


 うわー、何が起きているのだ? 冷静になるんだ……俺!

 おおよその検討はついている。


 整理すると……


 あの男はミリアが好き。だけどミリアは嫌がる。

 俺とミリアは付き合っていることになっていて、あの男は俺を目の(かたき)にしてる。

 俺は、恋敵(こいがたき)ということか!


 そして、次の実地試験の試験官である。

 

 ……と言うことは。 

 これはひと悶着(ひともんちゃく)ありますな!


 なんて他人ごとみたいに言っているが、俺大変なことに……。


 ここまでの分析は的確で事態を把握したつもりでいたが、事の真相はもっと複雑であったことを思い知らされる。




「お姉さま、あの人と結婚しちゃだめです!」

「マリア、おだまりなさい」


 け、結婚?


「お金のためだけの結婚なんて間違ってます!」

「……」


 お、お金?

 マリアちゃんは泣きそうな顔で訴えている。


 ますます話が複雑に……。

 人との交流を避けてきたこの俺に、こんなテレビドラマみたいな修羅場は経験したことがない。前世を逆上ってもこんなことは無かった。


 今、最大級の修羅場が待ち受けているのではないのか!?


 昔の俺ならこんなときすぐに逃げることを考えていたが、目に涙を浮かべるマリアちゃんを見ているとなんとかしてやりたいという気持ちが沸き上がってくる。


「マリアちゃんは間違ってない。話はよくわかった」

「お姉さまを……助けてください」


 マリアちゃんは小さな体で勇気を振り絞って戦っている。

 そんな頑張りやさんのマリアちゃんを、俺は頭ポンポンして褒めてあげた。


「了解だ。ミリア俺に任せろ! 全部俺がなんとかする!」


 しまったー、勢いでビックマウスがでてしまった。

 ちょっと待て、俺ってこういうキャラじゃ無かったような……。


「無理よ、これしかないわ……。そうしないとリュージの実地試験も受からなくなっちゃう」


 俺の試験のほうを心配してくれているのか?


「裏取引なんて要らない! 俺は合格するよ。――ね、マリアちゃん!」

「ハイー! 楽勝決めちゃってください!」


 俺はマリアちゃんと息ピッタリの『ハイタッチ』を決めた!


「あなた達……その自信はどこから来るの? それに、いつからそんな仲良くなったの――もぉ!」


 ミリアのこわばった顔がほぐれてよかった。

 なんたってマリアちゃんとは血の(にじ)むような特訓をしたんだ。

 

 まじで血が滲んでたけどな!

 

 魔法に失敗しては血みどろになった俺を隙かさずヒーリングしてくれるマリアちゃん。そんな日々を繰り返していた。

 そりゃもう――息だってぴったりさ!



「あれ? ミリアの嫉妬かな?」

「そんなんじゃないわよっ!」


「試験終わったら、ダンジョンに行くよ! 準備してきなよ」

「本気なのね……」


「ハハハ、本気も本気、いってらっしゃい」


 と言いつつハードル上げちまった。

 これはマジに合格しないといけないな。


「マリアちゃん、作戦会議だ!」

「はい! 隊長(たいちょう)!」


 別に大した作戦とよべるものでは無いが、念のために保険はかけたいからな。


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