第20話: 魔力弾を撃ちたい。
装備屋で封印石入りの手錠を手に入れた俺達は魔法学校の訓練場に来ていた。
前世で警察官だったとかでは無いがナゼか手錠を見た時に、これだという感じがしてしまい迷わず選んでしまった。
そんな手錠をミリアはクルクル回して遊んでいる。
「それで、この手錠は何に使うの?」
「俺の魔力を調整するのさ」
魔力弾の生成には魔力を手に集中する必要がある。しかし魔力を手に集中すると出力が強すぎてコントロールできずに俺は暴発してしまう。そこで考えたのが封印石の手錠である。
封印石の手錠で抵抗をかけられれば、弱く安定した魔力を作ることが出来るのではないかと考えた。
今日はその実験を行うのがメインであるが、その前に『全身強化』の完成度を上げる練習を行うことにした。
「よしミリア模擬戦しよう」
「いいわよ」
ミリアは訓練場の棍棒を手にし、俺は素手で相手をする。決してハンデというわけではなく武器がうまく扱えないのが理由である。今はとにかく覚えたての全身強化の完成度を上げるのが優先である。
「ミリア手加減無しでいいぞ、こっちも本気で行く」
「しらないわよ」
俺はスムーズに全身強化状態に入る。
これまでの練習の成果により、余計なことを考えずとも自然な状態で入れるようになっている。力むこともなく余計な魔力を出しすぎていないのが実感できるぐらいである。
全身強化は己の体全体で魔力を放出する放電のようなものだ。細かいことを考えず魔力をダダ漏れさせるイメージなのでコントロールの苦手な俺にはピッタリの魔法である。
この魔法の欠点は魔力量の消費が激しいところであるが、幸い俺の魔力量が大量にあるからできるのであって、普通の人間には不向きな魔法であるだろう。
「昨日の全身強化魔法だわね」
「そうだ! 昨日は途中で失敗してしまったが、今日の俺は違うぜ」
全身強化は雑念を捨てて冷静になる事が重要である。
前回の失敗はミリアの鉄壁スカートに精神を乱されたのが原因であるが、今の俺はその呪いを克服しているのだ!
(メガネっ娘、メガネっ娘、メガネっ娘)
俺はマリアちゃんにメガネをかけてくれるようにお願いしてある!
メガネっ娘のマリアちゃんがそばに居るならば、俺に失敗の文字は無い!!
「そんな魔力の使い方してたら直ぐに魔力が無くなっちゃうわよ」
「ミリアお姉さま、リュージさんは信じられないぐらいの魔力量があるんです」
「あなたって変な人ね……、ニタニタして更に変なこと考えてるでしょ!」
「失礼な! 俺は普通さ!」
「それじゃ行くわよー!」
ミリアは一気に距離を詰め、上段の構えから棍棒を振り下ろす。
その攻撃を俺は軽く半身でかわした。
「今のよくかわしたわね」
「まあね、練習の成果さ」
最初はこれで魔力障壁を作り防御力をあげようと考えていたが、どうやら全身に伝わる魔力が俺の身体能力を向上させる効果もあることが分かってきた。
このぐらいの攻撃であれば軽くかわせるほど反応速度が上がっているのだ。
そして俺は思いついた!
これだけの反応速度があれば、真剣白刃取りも可能ではないかと!?
おっと! 正確には棍棒白刃取りと言ったところか……?
ミリアは上段の構えから棍棒を振り下ろしてくる。
「――棍棒白刃取り!!」
俺は見事に両手で挟み込むように茶色い棍棒を捉えた。
「何よそれ、技名でも言ったの? 白刃って何よ?」
確かに白刃ってなんだ??
「もう一回攻撃するね! 準備はいいかしら?」
何度やっても結果は同じさ!
今の俺の反応速度があればそんな攻撃はコマ送りのように見えるのだ。
「――真剣棍棒取り!!」
俺は見事に両手で挟み込むように茶色い棍棒を捉えた――と思ったらすり抜けて脳天を痛打してきた。
『ゴーン!』
「キャハハ、カッコつけて『しんけんに棍棒を取ります』って言われると笑っちゃうわ!」
おのれ~、俺の捕獲失敗より、技名の方が笑えると言いたいのだな!
そんなことよりナゼ棍棒がすり抜けたのだ?
目測は間違っていないはずだ!
振り下ろす速度から到達タイミングを測り正確に挟み込んだはずなのにナゼか棍棒はすり抜けていった。目測を誤ったわけではない。捉える寸前に棍棒が加速したんだ!
おのれ~、魔力を送り込み棍棒を加速させやがったな!!
ミリアの天才的なセンスならばそんな芸当を無意識にこなしていても不思議ではない。……あなどれん!
「私の勝ちみたいね!」
「まあ、今日はこのへんで勘弁してやる」
「たんこぶ作って、よくそんな事言えるわね」
◇
全身強化の訓練を終えた俺は、本題である『魔力弾』の実験に取り掛かった。
「マリアちゃん、魔力弾の訓練したいからもう一度見せてくれないか?」
「はい!」
マリアちゃんは魔力コントロールがとてもうまい。
手に魔力を集中させると同時に大気中の魔力が集中してくる。
次第に膨れ上がって来る魔力弾を制御し、頃合いをみて前へ飛ばす。
マリアちゃんの説明はとてもわかりやすく理解できるが、実際にやってみると俺には難しかった。
しかし、この問題を解決できるアイテムが封印石の手錠である。
「おし、手錠を試してみるか」
俺は右手だけに手錠をかけてぶらぶらさせる。
「ますます変なことし始めたのね、しかも片手だけ? まあ両手に回したらまるで犯罪人みたいだけど……、お似合いね」
「まあ、だまって見ててくれ、今からやってみせる」
俺は右手に魔力を集中しようとするも予想通り右手の魔封石の手錠が邪魔をし魔力が指先まで伝わらない。
「これは良いぞ、ここまでは狙い通りだ」
この手錠が俺の魔力を制限してくれているおかげで、魔力の大量流出を抑えてくれるはずだ。これなら力いっぱいやってもこの前みたいな大爆発は起きないだろう。
「うぉーーー」
手の先にエネルギーが集中し始め、貯まりだしたエネルギーは徐々に魔力弾を生成している。
「なんでなんで、それ魔封石の手錠のはずよね?」
「なるほど、リュージさん考えましたね!」
やべえ、どんどん大きくなってる。
というか、俺の目の前で魔力弾が暴れだしグラグラと動き回っている。
「マリアちゃん~、この後はどうしたらいいんだー!」
「リュージさん、押し出すんです! 手前を破裂させるように一気に!」
「いくぞ~押し出せ!――あれ?」
魔力弾は既に手元に無く、線香花火が落ちるかのように地面に落下していた。
『バーン』
落下した先には俺の右足……。
「イテェェェー!」
すると地面でハジけた魔力弾の爆風は、ミリアの鉄壁スカートを揺らしている。
『全身強化!』
おしい!! 身体強化で目の感度を上げてみたが見えなかった!
違う違う! こういう使い方をするために習得しているのではない!
使うべきタイミングは魔力弾が俺の足に落ちるときに防御として使うべきであった。まだまだ修行が足らんな……俺。
「おし、次こそは成功させる!」
「気をつけてよね!」
「ミリアそんなに離れなくたっていいだろう!」
俺は再び魔力弾を生成し始める。
今度はコントロールを失う前に、魔力弾を手前に押し出す!
『ヒュー、――ドン!』
「ねぇ、リュージくん! どこ狙ってるの?」
あれ? なんであんな方向へ飛んでいる……?
「あはは、初めてだったからさ、次は的に当ててやる」
その後、何度試そうが一向に的に当たる気配は無かった。
俺の『ノーコン』は筋金入りのようだ……。
「そこまで外せる人も見たことないわね! ある意味天才ね」
こんなはずじゃ……




